ハワイで開かれていたTPP交渉閣僚会合は、目標とした大筋合意に至らず閉幕しました。
知的財産分野や乳製品の関税協議で、ニュージーランドと日米などとの対立が解けなかったからといわれていますが、参加12か国は早ければ8月末にも再度、閣僚会合を開き大筋合意を目指すということです。
日本政府は同行している農業団体の手前もあり酪農製品の関税を譲りませんでしたが、基本的にはアメリカの意向に沿ってTPP協定の成立を目指しています。
この問題で植草一秀氏は、2日、「悪魔のTPPを完全に葬り去るまで手を抜かない」とするブログを発表しました。
植草氏は、この1月に設立総会を開いた「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」の呼びかけ人も務めており、これまでTPPについて実に73本ものブログ記事を出しています。
アメリカが必死になっているTPPは日本を標的にしたものであるということは、当初から言われていました(中野剛志「TPP亡国論」など)。いうまでもなく関税の問題に単純化できるような問題ではありません。それを知ってか知らずか、アメリカの尻馬に乗っている安倍政権の姿は本当に理解に苦しみます。
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悪魔のTPPを完全に葬り去るまで手を抜かない
植草一秀の「知られざる真実」 2015年8月 2日
ハワイマウイ島のラハイナで開かれていたTPP交渉閣僚会合で、大筋合意が成立しなかった。TPP交渉が合意に達することができず漂流することは望ましいことであるが、8月末に再度閣僚会合を開こうとする動きがあるため、油断はできない。
日本はTPPに参加するべきでない。その理由は、TPPが主権者の利益拡大を追求するものではなく、グローバルな強欲巨大資本の利益拡大を追求するものであるからだ。そして、TPPの目的であるグル―バルな強欲巨大資本の利益追求は、いま世界に広がっている「格差」の問題をさらに拡大させるものなのである。
安倍政権はアベノミクスの三本の矢ひとつに成長戦略をあげる。この成長戦略こそ、強欲巨大資本の利益追求を目的とするものである。
成長と言っても、それは、強欲巨大資本の成長のことであって、人々の暮らしの成長ではない。
米国を本拠地とするグローバル強欲巨大資本は、日本市場をターゲットにしている。
TPP交渉参加国は12ヵ国だが、最大のターゲットは日本市場である。
TPP交渉を始めたのは、シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリの4ヵ国である。2006年に包括的経済連携協定が発効した。
これに米国が後から参画したのだが、その狙いは日本である。日本をTPPに引き込み、日本市場を収奪すること。これがTPPの狙いなのである。
もうひとつ、中長期の米国の狙いはアジア市場だ。アジアが21世紀の成長の軸になる。そのアジア市場が中国に占有される。これに対抗するために、中国の入らないTPPに米国が参画し、アジア市場の覇権を中国と争おうとしているのだ。
米国が狙いをつけている産業分野が農業、医療、保険の三分野である。
米国は日本の市場からの収奪を狙っている。
そして、TPPのもうひとつの核心は、日本の諸制度、諸規制を、完全に米国化することだ。そのための秘密兵器がISD条項である。
ISD条項を活用して、米国は日本の完全米国化を狙っている。
日本農業は完全に外資が支配する産業に転落する。食糧の自給体制は崩壊し、食の安心、安全も崩壊する。
医療の各種規制は撤廃され、日本の医療は貧困な公的保険医療と法外に価格の高い民間保険医療の二本立てに移行する。医療において、決定的な格差社会が出現することになる。
そして、TPPが目的とする制度変更の核心には、各種労働法制の改変が含まれる。
資本が目的とするのは、労働コストの限りない削減である。これは、裏を返すと、労働者の処遇と権利が限りなく剥奪されることである。
だから、日本の消費者、労働者、生活者、主権者、国民がTPPに賛成するのは大いなる誤りなのである。
(以下は有料ブログのため非公開)