今度の参院選では、安倍自民党は「改憲」の策謀を見事に隠し切っています。
報道各社が6月末に実施した調査では、改憲、加憲を目指す自民、公明、おおさか維新、日本のこころの4党で70議席台後半をうかがい、非改選を含めて改憲発議に必要な3分の2(162議席)を視野に入れているということです。
定数が1人増えて定員が3人となった兵庫選挙区でも、有権者の約4割が投票先を未定として流動的だが、この勢力が全議席を独占する可能性もあるということです(神戸新聞)。
それはそれとして高知新聞が100人の市民に対して行ったアンケートによると、改憲の発議を可能とする「3分の2」の意味について「全く知らない」人が83%に上りました。
「自民党の憲法改正草案を読んだことがある」は10%、「憲法改正に賛成」は35%、「反対」は51%でした。
(関係記事)
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【参院選 土佐から】改憲への「3分の2」 高知で83%意味知らず
高知新聞 2016年7月5日
■争点が見事に隠れる■
今選挙注目の「3分の2」とは? 今回の参議院選挙は、憲法改正に前向きな勢力が「3分の2」の議席を確保できるか否かが一大焦点となっている。結果いかんでは戦後政治、人々の暮らしの大きな転換となる。が、この「3分の2」の意味や存在、有権者はどの程度知っているのだろうか。高知新聞記者が2~4日に高知市内で100人に聞くと、全く知らない人は5分の4に当たる83人、知る人17人という結果が出た。
「3分の2」は憲法改正の是非を国民投票にかけるために必要な議席数。自民、公明両党を中心とした改憲派が3分の2以上を確保できれば、憲法改正に向けて改憲案の是非を国民に問うことができる。
では―。「今回の参院選は『3分の2』という数字が注目されています。さて何のことでしょうか?」
記者がこの質問を携えて街を歩いた。
返った答えのほとんどが「?」。「知らない」「さっぱり」「見当もつかない」の声が続いた。
「合区のこと?」(21歳男性)、「えっ憲法改正のことって? そんな大事なことは新聞が大見出しで書かなきゃだめでしょ。全然知らなかった」(74歳男性)の声も。
「3分の2」の争点や意味を、ほぼ分かっていたのは17人。
「議席数のことでしょ。与党が3分の2を取って憲法改正するように」(71歳男性)、「憲法を変える時の数というのは聞いたことがある」(19歳女性)、「記者さんが聞くってことは憲法改正の3分の2のことかな?」(42歳男性)。正解者は憲法や議席数といった言葉を具体的に使って回答した。
さらに―。質問を続けて2点。
「自民党の憲法改正草案を読んだことがありますか?」
読んだことがあると答えた人は10人。「家族は協力し合わねばならないとの条文があった気がする」(44歳女性)、「新聞で読んだ。すごい量が多くて、何となく読んだくらい」(56歳男性)。新聞や自民党が配布した冊子で読んだ人のほか、テレビニュースで概要を聞いた人も含めたが、内容を熟読した人はいなかった。
「憲法改正に賛成ですか、反対ですか?」
賛成35人、反対51人。どちらでもない、答えられない人が14人。「現状維持でいい」(28歳男性)、「時代に合わせ新しいものに変えるべきだ」(83歳男性)などと声は二分された。
記者8人が高知市の日曜市、ひろめ市場、帯屋町アーケード街、旧土佐山村・鏡村などで対面式で集めた。
政治や選挙へのあきらめを述べる声、徳島県と選挙区が統一される合区への憤りや反発の多さが依然として目立ったのが特徴だ。
関心の薄さを象徴するかのような争点、憲法。自民党は経済政策を争点の中心に置き、対抗する野党は憲法の争点化を試みている。
「見事に隠れている―」。各所を歩いた記者たちの感想だ。
国民投票へあと78議席?
憲法改正案を国民投票にかけるには、衆参両院で「3分の2」以上の賛成を得る必要がある。
衆院の定数は475。改憲に意欲的な自民党と、連立を組む公明党で既に「3分の2」の317議席を上回っている。
一方、参院(定数242)は3年ごとに半数を改選する。自民、公明両党が有する議席のうち76議席は非改選のため、今回の参院選であと86議席を取れば「3分の2」(162議席)に届く。
おおさか維新の会(非改選5議席)や日本のこころを大切にする党(非改選3議席)も改憲に前向きで、両党を改憲勢力に含めると、あと78議席で「3分の2」に到達する。
国民投票で有効投票総数の過半数の賛成があれば、改正案が承認される。
■高知市で100人調査■
Q1【「3分の2」という数字、さて何のことでしょう?】
「1票の格差」的なこと?(21歳女子大学生、帯屋町アーケード街で)
選挙に無関心な国民の割合?(38歳自営業男性、中央公園で)
合区に腹が立ち今回は興味がない。憲法のこと? えっ、そんなことが。全然知らなかった(香南市の74歳男性、ひろめ市場で)
憲法を変えようということだね。普段の生活と憲法が結びつく教育をしてこなかった長年の蓄積が、現在の無関心を作りだしている(80歳男性、高知市鏡地域の畑で)
憲法改正のやつ? 9条改正には国民の50%以上反対あるでしょう。それが唯一の救いだね(68歳男性、おびさんロードで)
Q2【自民党の日本国憲法改正草案を読んだことがありますか?】
テレビや新聞でちらっと。興味がないきすっと忘れる(仁淀川町の72歳女性、日曜市で)
ごめんなさい読んでないです。公務員ですけど(32歳女性、帯屋町で)
Q3【憲法改正に賛成ですか、反対ですか?】
いまが平和ながやき、わざわざ変えんでも。切り札を捨てる必要ないでしょ(土佐市の35歳会社員男性、わんぱーくこうちで)
必要に応じて変えるべきだ。周辺国に危ない状況がある。夫とは意見が分かれていますけど(医療事務の40歳女性、同)
興味ない。もう毎日のことでいっぱいいっぱい。憲法っていっても生活から遠い存在。それどころじゃないです(37歳女性、大橋通商店街で)
憲法議論高まらぬ熱 積極的な論争望む声も
神戸新聞 2016年7月5日
投開票日が10日に迫る参院選。報道各社が6月末に実施した序盤情勢調査では、与党の自民、公明が堅調に支持を集め、おおさか維新などを含めた「改憲・加憲勢力」が憲法改正の発議に必要な3分の2議席を視野に入れている。ただ、選挙戦での議論は低調なままだ。結果次第では憲法改正の動きが具体化する可能性もあり、有権者からは積極的な論争を望む声が上がる。
憲法改正をライフワークと位置づけ、「在任中に成し遂げる」と明言していた安倍晋三首相。だが公示後はトーンダウンし、改憲論議は選挙後に先送りする姿勢を見せている。
兵庫選挙区の自民現職も街頭演説で一度も改憲に触れていない。陣営幹部は「有権者の関心は経済政策。改憲というデリケートな問題に、あえて踏み込む必要はない」と打ち明ける。
連立政権を組む公明も、改憲に慎重な姿勢を見せ始めている。新たな理念や条文を加える「加憲」を主張してきたが、議論が成熟していないとして公約に盛り込まず、兵庫選挙区の新人も立場を明確にしていない。
これに対し、「3分の2阻止」を勝敗ラインに掲げる民進党などはいらだちを隠せない。民進現職は6月末、安保法制の反対運動を引っ張ってきたシールズ関西のメンバーらと街頭に立ち、「安倍首相は堂々と論戦に応じるべきだ」と訴えた。ただ、陣営の男性は「安保法制に比べ、反応が薄い」と危機感を募らせる。
報道各社が6月22、23日に実施した調査では、改憲、加憲を目指す自民、公明、おおさか維新、日本のこころの4党で70議席台後半をうかがい、非改選を含めて改憲発議に必要な3分の2(162議席)を視野に入れる。
定数が1増の兵庫選挙区(改選数3)でも、有権者の約4割が投票先を未定として流動的だが、この勢力が全議席を独占する可能性もある。
神戸市北区の会社員男性(43)は「英国のEU離脱問題など世界経済が流動化する中で、自民党の経済政策に期待する気持ちが強い。でも、憲法改正には反対」と悩む。
投票の啓発活動などに取り組む神戸大大学院生(25)は「改憲の是非は日本の将来を左右する重要な問題。論争を避けず、議論を深めて」と注文する。(木村信行、安藤文暁)