2016年7月13日水曜日

改憲現実味を懸念し9条守る大切さを訴えた 永六輔さん

 7日に83歳で亡くなった放送タレントの永六輔さんは平和と憲法9条を守る活動に力を入れていた人でした
  「国会前などで政治的な主張をする芸能人の先駆けだった」とも言われ、長年続けたラジオで、憲法全文を読んだ経験を二時間にわたって語ったこともあったということです
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永六輔さん、改憲現実味を懸念 9条守る大切さを訴え
東京新聞 2016年7月12日
 七日に八十三歳で亡くなった放送タレントの永六輔さんはラジオや音楽などに加え、平和と憲法九条を守る活動にも力を入れていた。十日投開票された参院選では改憲勢力が発議に必要な三分の二を超え、改憲が現実的な政治課題になりつつある。「一番大事なこの時期に…」。永さんを知る人たちからは悲しみとともに、日本の未来を危惧する声が上がった。
 
 「あの時の言葉が現実的な懸念になるなんて…」。永さんのパーキンソン病を最初に診断するなど、親交が深かった長野県茅野市の諏訪中央病院の名誉院長で作家の鎌田実さん(68)は、二〇〇六年発行の著書「この国が好き」で永さんと対談した。永さんは九条の大切さを訴え「子どもたちが戦争に巻き込まれる未来が訪れはしないだろうか」と不安を示したという。
 参院選の結果を受け、国会の改憲議論は加速するとみられる。鎌田さんは「永さんは病床から日本の行く末を心配していた。その信念を受け継いで、発信していかなければ」。
 
 一九九三年、国連平和維持活動(PKO)協力法が成立後初めての憲法記念日。永さんは名古屋市で、憲法を議論する集会の講師を務めた。主催団体の事務局長だった森英樹・名古屋大名誉教授(74)によると、ユーモアを交えて観客を引き付け「憲法の議論には、ごまかしは利かない」と強調した。森さんは「(選挙で問わずに)改憲に前向きな今の政権を笑い飛ばしてほしかったのに」と話す。
 
 「国会前などで政治的な主張をする芸能人の先駆けだった」と指摘する声もある。二〇〇〇年代初頭、音楽で憲法の大切さを訴える東京都内のイベントに飛び入り参加し、客席からステージへ上がって聴衆に語り掛けた。運営スタッフだった横尾孝夫さん(63)は「芸能関係者が政治的意見を言うと、仕事が減る風潮があったのに。分かりやすい、自分の言葉で語るから、九条の大切さがより伝わってきた」と振り返る。
 〇五年には富山県氷見市の護憲団体が開いた講座で、当時の小泉純一郎首相の靖国神社参拝に触れ「実際に戦争を知っている人が一人もいない内閣。戦争を起こした者の責任を分かっていない」と批判した。
 長年続けたラジオで、憲法全文を読んだ経験を二時間にわたって語ったことも。リスナーで相模原市の無職、由比昭男さん(83)は戦時中に岡山県に疎開した経験がある。だからこそ「憲法は守らないといかん。永さんの一貫した言葉が、今も心に残る」。