民進党の岡田代表が記者会見で、安倍首相が現行憲法を「押しつけ憲法」とみなす立場を撤回し、立憲主義を順守するならば、改憲の論議に応じる可能性に言及したことに北海道新聞が苦言を呈しました。
自民党の土俵に安易に乗ってしまうのではなく、「まず改憲ありき」の流れに歯止めをかけるのが責務ではないかというわけです。
同紙の社説を紹介します。
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民進党と改憲論 歯止め役の責務 自覚を
北海道新聞 2016年7月26日
「改憲勢力」が衆参両院の3分の2を占め、改憲論議が現実味を増す中、民進党が揺れている。
岡田克也代表は記者会見で、安倍晋三首相が現行憲法を「押しつけ憲法」とみなす立場を撤回し、立憲主義を順守するならば、論議に応じる可能性に言及した。
現政権下では改憲に応じないとしてきた立場を修正した形だ。
衆参の憲法審査会の再開が見込まれる中、議論自体を拒むのは得策ではないとの判断だろう。
しかし民進党は参院選で「改憲勢力3分の2阻止」を掲げた。与党側の環境づくりに安易に乗っては支持者の理解は得られまい。
求められるのは現行憲法の再評価という原点に立ち返る議論だ。「まず改憲ありき」の流れに歯止めをかけるのが責務ではないか。
民進党は以前から基本政策を巡る路線対立を抱え、内紛を繰り返してきた。憲法を巡っては、護憲に近い立場の旧社会党系から、党綱領に改憲を明記していた維新の党出身者までが所属する。
選挙公約で「憲法の平和主義を守る」とする一方、「未来志向の憲法を国民とともに構想する」と含みを持たせたのもそのためだ。
だが憲法審査会が動きだせば、党の立場の明確化が迫られる。
あらためて確認したいのは、与党側が参院選で改憲の争点化を避けた以上、改憲が国民の信認を得たとは言えないという点だ。
にもかかわらず自民党は憲法審査会で改憲項目の絞り込みを狙う構えだ。性急な感は否めない。
民進党に投じられた票には、数の力による改憲発議を食い止める役割への期待も込められているだろう。その点を受け止めた上で、議論の集約を急がねばならない。
党内には選挙結果について、2013年の前回の2倍近い議席を確保したとして、党勢退潮に区切りがついたとの安堵(あんど)も広がる。
特に共産党などと候補を統一した「1人区」で、32議席中11議席を野党側が得たことが大きい。
その共産党は改憲反対を明確にしている。民進党がもし改憲路線へと進むならば、今後の野党協力の構築は難しさを増す。
共闘のきっかけをつくった各地の「市民連合」も、憲法を軽んじる現政権を批判する立場だ。民進党が改憲論議で政権側に取り込まれれば、支持を失いかねない。
9月に控える党代表選では、改憲が大きな争点となるだろう。党内の分断を避けつつ、支持者の期待にどう応えるのか。正面からの論戦が求められよう。