2016年7月24日日曜日

24- 2016年度JCJ賞の発表について

  年間の優れたジャーナリズム活動・作品に対して日本ジャーナリスト会議が贈る、2016年度の「JCJ賞」(第59回)が発表されました。
 JCJ大賞には、毎日新聞社の「憲法骨抜きを許した内閣法制局の対応をスクープ」が選ばれました。
 JCB賞には、松本創氏の『誰が「橋下徹」をつくったか-大阪都構想とメディアの迷走』140B ほかが選ばれました。 
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2016年度JCJ賞の発表について
2016年7月19日
 日本ジャーナリスト会議(JCJ)
 事務局長 橋詰雅博
 JCJ賞推薦委員会 大場幸夫
  日本ジャーナリスト会議(JCJ)は、1958年以来、年間の優れたジャーナリズム活動・作品を選定して、「JCJ賞」を贈り、顕彰してきました。今年で59回になります。7月16日の選考会議で、別掲の7点を、受賞作と決定しました。なおJCJ賞の贈賞式を下記の通り開催いたしますので、ご参加のくださいますよう、お願い申し上げます。
 
贈賞式:8月13日(土)13:00~ 日本プレスセンター・ホール(東京・内幸町)
 
<2016年度 JCJ大賞、JCJ賞、JCJ特別賞>
 
◇JCJ大賞
 憲法骨抜きを許した内閣法制局の対応をスクープ 毎日新聞社
  多くの国民の反対の声を踏みにじって、安倍政権が強行した「安全保障関連法制」。同政権による意思決定や法律制定の諸過程は、憲法や法制度で定められた手続きをも全く無視したものだった。内閣法制局が重大な憲法解釈を許し、経緯公文書も残していない事実を情報公開制度を駆使しながら徹底検証した。戦後70年の節目に国の形を変えようという問題について、具体的な矛盾を指摘し、国民に広く提起した警世の報道である。
 
◇JCJ賞
 「時代の正体」神奈川新聞社
  「偏っていますが、何か?」これが、このシリーズを偏向だと非難する声に応えた編集部の宣言だった。中央紙・地方紙という枠を飛び越え、「報道の中立」という一見正しく聞こえる規範を外し、両論併記をせず、事実を基に社としての判断を提示する。沖縄に飛んで米軍ダイオキシン汚染を軸に地位協定の悪に迫り、教科書問題で日本会議の暗躍を抉り、ヘイトデモの非人道性を訴える。中央紙とは違う視角から切り捌き、時代に通底するものを探って光を当てる。閉塞の時代にあって前に進む清新の気と、視点を低く人間の生きる営みに焦点を当てて報道する揺るぎない姿勢にジャーナリズムの可能性を見いだせ、高く評価する。
 
◇JCJ賞
 「反核・写真運動」監修 編者:小松健一 新藤健一
 『決定版 広島原爆写真集』『決定版 長崎原爆写真集』 勉誠出版
  「反核・写真運動」が監修者であること。百数十点の初公開写真を含む828点の原爆写真。時系列での写真掲載、キャプションに英語も入れたこと。撮影者、撮影時刻、場所の確定を図ったこと。対談、解説の充実。原爆を撮った総勢27人のいわば原爆写真作品集となっていること。まさに決定版と言うにふさわしい写真集が原爆投下70年という節目に上梓された。広島・長崎を未来に伝えていく決意と努力の大きな成果だ。
 
◇JCJ賞
 松本創『誰が「橋下徹」をつくったか-大阪都構想とメディアの迷走』140B
  テレビでタレント弁護士としてデビュー、ポピュリズムを自家薬籠のものとして、数々の暴言をふるってきた橋下徹。彼は大衆的人気を背景に大阪府知事、さらに大阪市長に躍り出て、時代の寵児のごとくにふるまってきた。著者は、関西のメディアの現場を取材し、政治家の資質を「面白い」かどうかという感覚でとらえ、橋下の恫喝に萎縮してしまうメディアの実態を明らかにし、橋下は小泉純一郎のポピュリズム的手法をより先鋭化させて大阪に持ち込んだ、とする。「その土壌は分厚い層となってこの社会を覆ったままだ」という著者が訴えるジャーナリズムの批判精神の取り戻しは、JCJの使命と一致するものである。
 
◇JCJ賞
 「映像’15 なぜペンをとるのか~沖縄の新聞記者たち~」 毎日放送
  2015年6月、自民党議員の懇談会で、沖縄の新聞2紙に「廃刊」の脅しをかける異常な攻撃が加えられた。政権批判を偏向と決めつける論調が強まる中、取材班は「琉球新報」記者に45日関密着した。そこで見つめたものは、安倍政権の欺瞞と沖縄の記者たちの原点だった。言論・表現の自由という最も大切な基本的権利が、現政権によって脅かされている。基地問題に揺れる沖縄の新聞記者の活動を通じて、メディアの役割と使命を考える材料をタイムリーに提供した作品である。
 
◇JCJ賞
 報道ステーション「憲法改正の行方……『緊急事態条項』独ワイマール憲法が生んだ独裁の教訓」 テレビ朝日
  夏の参院選で自民党が圧勝し、衆参で2/3を占めれば、「憲法改正」が現実味を帯びる。最初に来るのは「緊急事態条項」だ。古館伊知郎がドイツ・ワイマールに飛び、80年前にヒトラーがワイマール憲法48条の「国家緊急権」を悪用し、合法的に独裁体制を確立する過程を取材した。番組は、自民党改憲草案の「緊急事態条項」の危険性に警鐘を鳴らす。優れた調査報道の力を発揮した。
 
◇JCJ特別賞
 嬉野京子さんの50年間の沖縄取材活動
  沖縄に寄り添い、支えられながら50年間取材し続けてきた女性写真家・ジャーナリスト嬉野京子さん。彼女は1965年の祖国復帰行進、「海上大会」に参加、取材を始めた。当時、入域許可証が必要だった米軍占領下の沖縄は、カメラの所持だけで運動弾圧の口実になった。撮影は沖縄の闘いの力で守られた。宜野座村での米軍車両に轢き殺された6歳の女の子の写真は日本本土に、世界に沖縄を知らしめた。1968年に写真集『沖縄100万の叫び』を上梓。その後今日のオール沖縄に結実していった沖縄の心を取材してきた50年間を『戦場が見える島・沖縄』で語っている。嬉野京子さんの写真を知ることは沖縄を知ることに繋がる。