五十嵐仁・法大大原社会問題研究所名誉教授が、参院選における安倍首相の選挙戦術を、「隠す、逃げる、けなす」という卑劣なものであると特徴づけました。
まず「隠す」は、改憲、原発再稼働、沖縄辺野古での新基地建設などの問題を隠しているというもので、どれほど重要であっても、有権者に評判が悪く選挙に不利になる問題については触れず、その意図を隠したままで選挙を闘い、終わったら「信任を得た」と言ってやりたい放題に暴走するという作戦を、今回も繰り返そうとしているとしています。
次に、「逃げる」は、各党を代表する党首による討論を避ける=逃げるというもので、これは選挙で掲げている公約や政策について説明ができずに、他党からの追及に打ち勝つ自信がないということの証明にすぎないとしています。
さらに、「けなす」は、積極的に打ち出すべき政策や公約が貧弱だからで、主張すべき政策がないから他党の批判に時間を割くしかないとしています。
そして安倍首相がアベノミクスは道なかばというのは、「道なかば、逆から読めば、ばかな道」と解釈できるとしています。
いずれも実に明快な説明です。
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「隠す、逃げる、けなす」安倍首相の卑劣な選挙戦術
五十嵐仁の転成仁語 2016年7月3日
参院選の公示期間もあと1週間となりました。次の日曜日が投票日です。
日本の命運をかけた激しい選挙戦がたたかわれていますが、次第に安倍首相の選挙戦術が明らかになってきました。それは、「隠す、逃げる、けなす」という政権政党らしからぬ卑劣なものです。
まず、「隠す」という点です。選挙は公約や政策を明らかにして有権者の信を問うものですが、この基本が守られていません。
重要な政策課題であるにもかかわらず、隠されているテーマがあります。それは改憲、原発再稼働、沖縄辺野古での新基地建設などの問題です。
どれほど重要であっても、有権者に評判が悪く、選挙に不利になる問題については触れず、その意図を隠したままアベノミクスを前面に出して選挙を闘い、終わったら「信任を得た」と言ってやりたい放題に暴走する。特定秘密保護法の制定や集団的自衛権の行使容認を実行してきたこのようなやり方を、安倍首相は今回も繰り返そうとしています。
次に、「逃げる」という点です。選挙は各政党の公約や政策の違いを明らかにして支持を競い合うものですから、各党を代表する党首による討論は大きな意味を持っていますが、安倍首相はこのような場から逃げています。
党首討論は選挙公示前に集中され、公示後に開かれたのは24日に放映されたTBSの番組が最後です。安倍首相は期日前投票が始まっていることや選挙での遊説日程が立て込んでいることを理由に出席を拒んでいるからです。
期日前投票は今回から始まったわけではなく、他の党首と同様に遊説の日程を調整することは可能なはずです。討論から逃げるということは、選挙で掲げている公約や政策について説得できず、他党からの追及を恐れており、それに打ち勝つ自信がないということの証明にすぎません。
さらに、「けなす」という点です。安倍首相はとりわけ「民共批判」に力を入れており、選挙演説では他党批判が顕著な特徴となっています。
他党を「けなす」のはネガティブ(否定的な)キャンペーンにほかなりませんが、それはポジティブ(積極的な)キャンペーンによって打ち出すべき政策や公約が貧弱だからです。限られた演説時間に訴えるべき政策が沢山あれば他党の悪口を言っている余裕はありませんが、そのような政策がないから他党の批判に時間を割くことができるのです。
しかも、32の1人区すべてで野党共闘が実現して大激戦となっています。「民共批判」によって選挙での共闘にクサビを打ち込もうとしているのは、そうせざるを得ないほど大きな脅威となっているということの証明でもあります。
このような「隠す、逃げる、けなす」という卑劣な戦術によって有権者を騙すのではななく、正々堂々と戦っていただきたいものです。それが国政に責任を持つ政党としてのあり方であり、政権党にふさわしい選挙の戦い方というものでしょう。
テレビを見ていたら安倍首相が登場するCMが流れていました。アベノミクスの成果を誇るように、次々と経済指標の数字が示されています。
どれも、安倍さんにとって都合の良い数字を並べたものにすぎません。このCMにも「隠す、逃げる、けなす」という卑劣な選挙戦術が反映されています。
前面に打ち出されているアベノミクスにしても、3年経ったのにまだ「道なかば」だそうです。国民を馬鹿にするのもいい加減にしてもらいたい。
もう結論は、はっきりしているじゃありませんか。「道なかば、逆から読めば、ばかな道」なのだから。