今度の参院選で自民党などの改憲4党は、改憲発議に必要な三分の二以上の議席を確保しました。
大勢が決した10日夜の発言では、安倍首相は任期中の改憲論議を急ぎたいとする姿勢が目立ちましたが、他の3党は決してそうした考えではなくて、4党の主張の違いが浮き彫りになりました。
公明党の山口代表は、加憲の項目に関してまだ「党内合意が確立していない」と強調し、改憲勢力で3分の2以上の議席を確保しても「政治的に意味がない」、「改憲がにわかに進むとは思わない」と述べました。
おおさか維新の会の松井表も、自民党が挙げる緊急事態条項には「反対だ。法律でできる」と否定しました。実に貴重な反対論です。
日本のこころを大切にする党の中山(恭子)代表は「即改憲はまずない」、憲法の在り方そのものを議論していくべきだとの考えを示しました。
東京新聞と日経新聞の記事を紹介します。
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改憲4党 主張に違い
東京新聞 2016年7月11日
参院選で自民党などの改憲四党は、無所属議員らを加えた「改憲勢力」で改憲発議に必要な三分の二以上の議席を確保した。だが四党首の十日夜の発言では、改憲論議を急ぎたい安倍晋三首相(自民党総裁)の姿勢が目立ち、四党の主張の違いが浮き彫りになった。
首相は「自民党は改憲しようという党。その前提で票をいただいている」と強調した。改憲論議は参院選の結果を受け「いよいよ(衆参の)憲法審査会に議論の場が移って、どの条文をどのように変えるか集約されるんだろう」と指摘。「在任中」の改憲実現を目指すと選挙前には公言していただけに、秋から改憲は具体論の段階に移るとの認識を示した。
首相は「国会が発議する観点から議論してほしい」と、国会発議を念頭にした論議を期待した。
公明党は加憲を唱える立場だが、山口那津男代表は新たに加える項目に関し「党内合意が確立していない」と強調した。憲法審査会での議論は否定しなかったが、改憲勢力で三分の二以上の議席を確保しても「政治的に意味がない」とも。先走る首相の姿勢にくぎを刺すように「改憲がにわかに進むとは思わない」と述べた。
おおさか維新の会の松井一郎代表も、憲法審査会での議論は前向きな考えを示した。だが、改憲の検討対象として自民党が挙げる大災害時の対応などに関する緊急事態条項は「反対だ。法律でできる」と否定。教育無償化や統治機構改革などを主張し、改憲の中身は首相と食い違った。
日本のこころを大切にする党の中山恭子代表は「即改憲はまずない。本来の憲法はどうあるべきかの議論が始まるなら結構なことだ」と、憲法の在り方そのものを議論していくべきだとの考えを示した。 (金杉貴雄)
首相「憲法改正、自民党案をベースに」
日経新聞 2016年7月11日
安倍晋三首相(自民党総裁)は11日、参院選を受けて党本部で記者会見し、憲法改正について「わが党の案をベースにして、どう3分の2を構築していくかが、政治の技術だ」と述べ、野党時代につくった自民党草案をもとに議論を主導する考えを表明した。
改憲論議にあたっては衆参両院の憲法調査会で議論を進めるべきだとの認識を強調した。野党第1党の民進党の姿勢に関し「安倍政権の間は憲法改正をしないと岡田克也代表は言っているが建設的な対応とはいえない。好き、嫌いではなく子どもたちのために真剣に議論していくべきだ」と話した。
参院選の結果については「アベノミクスを一層加速せよという力強い信任をいただいた」と力説。英国の欧州連合(EU)離脱や新興国経済の陰りが出てきていることに触れたうえで、12日に石原伸晃経済財政・再生相に経済対策の準備に入るよう指示する考えを示した。「景気を下支えする総合的かつ大胆な経済対策を実施する」と語った。
8月にも実施する内閣改造・党役員人事に関連し、谷垣禎一幹事長や菅義偉官房長官の処遇を問われると「極めて有能な方々だが、今の段階では白紙だ」と述べるにとどめた。