2016年7月20日水曜日

沖縄への政府の暴虐 その責任は本土の選挙民の側にある

 先日の参院選では、沖縄現職島尻安伊子沖縄担当大臣が、辺野古基地移設反対を打ち出した伊波洋一氏に10万票も差をつけられて “惨敗” ました。
 それなのに安倍首相は沖縄の民意を無視して次回の人事刷新までは民間大臣として島尻氏を続投させることにしました。
 それだけではありません。参院選の投開票の翌日11日から、東村高江の米軍北部訓練場でヘリパッド(ヘリコプター着陸帯)建設工事のための機材搬入を開始、反対住民を強制的に排除しはじめました。たった160人程度の小さな集落に対して、政府は500人規模の機動隊を投入することを以前から決定していましたこれは住民に対して威圧を加える以外の何ものでもありません。
 
 また13日には、米空軍嘉手納基地F15戦闘機が、沖縄市上空で熱源体の照明弾「フレア」を3発、発射する事件がありました照明弾の発射など全く必要のないことで、幸いに熱源による被害は出ていませんが、誤射ということで簡単に済ませられない問題です。沖縄住民への威圧、いじめではないのでしょうか。
 この照明弾発射問題を報じたのは地元紙だけで、読売、朝日、毎日、産経の4大紙は扱っていません。
 
 沖縄の人たちは14年の知事選、今年6月の県議選、そして今回の参院選と、再三にわたって米軍基地反対の民意を示していますそれに対して、一連の選挙で自民党を圧勝させ、今回の参院選では遂に与党に3分の2という圧倒的多数を与党に与えることにしたのは、常に「本土」の人たちでした。
 その結果はどうでしょうか。政府は見せしめのようにヘリパッド建設工事を強行しようと大量の機動隊を送り込み、米軍と一体となって県民を威圧しています。
 
 沖縄が抱える現実は国全体の問題なのに、メディア姿勢が象徴しているように、いつまでたっても基地問題は「本土」の人たちにとっては “他人事” になっています
 「今回の選挙で沖縄を圧迫する自民党政権を圧勝させた人たちは、これから高江で起きることについて目をそらしてはならない。自分の一票が支える権力がどこかで暴走していないか監視する義務があるはずだ
 LITERAはそう述べています。
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参院選敗北で安倍政権の沖縄いじめが激化、
米空軍機が沖縄市上空で照明弾発射の暴挙! 
しかし本土マスコミは一切報道せず
LITERA 2016年7月18日
 先日の参院選において大きなトピックとなったのは、沖縄と福島で現職大臣が落選したことだろう。とくに島尻安伊子氏は、この参院選を見越して安倍首相が県選出で沖縄担当相に抜擢。しかし蓋を開けてみれば、辺野古基地移設反対を打ち出した伊波洋一氏に10万票も差をつけられて“惨敗”したのだ。
 2014年の沖縄県知事選につづいて、沖縄県民が再びはっきりと“民意”を国に叩きつけたわけだが、対して安倍首相は島尻氏を民間人として大臣を続投させる方針を固めた。沖縄は島尻氏に「NO」を突きつけたのに、である。
 
 だが、安倍政権は、沖縄に選挙結果の意趣返しをするかのように、さらにとんでもない行動に出ている。
 なんと参院選の投開票の翌日11日から、沖縄県東村高江の米軍北部訓練場でヘリパッド(ヘリコプター着陸帯)建設工事のための機材搬入を開始、反対住民を強制的に排除しはじめたのだ。
 
 しかも、住民の数がたったの約160人という小さな集落に対し、政府は500人規模の機動隊を投入することを決定。きょうから順次配備していく予定だという。政府は昨年11月にも辺野古新基地建設の抗議運動が行われているキャンプ・シュワブのゲート前に100人規模の機動隊を投入したが、今回はその5倍。この安倍政権の行動はあきらかに、選挙で再び示された沖縄の意志に対して脅しをかけるやり方だ。
 
 まったく、ここまで露骨に牙をむくことができるものかと驚くが、『標的の村』『戦場ぬ止み』といったドキュメンタリー作品で沖縄の現実を伝えつづけているジャーナリストで映画監督の三上智恵氏は、今回の参院選から一夜明けてのヘリパッド建設工事強行について、「わずか9時間の歓喜」と表現している。
 
〈国は用意周到に、参院選あけの11日早朝に向けて高江の工事再開の準備を進めていたのだ〉
 〈本当に現行計画通りにヘリパッドができてしまったら、「負担増」どころではない。高江は人が住める村ではなくなってしまう。あなたの家から400メートルの地点に、突然オスプレイ用のヘリパッドを造りますと言われたらどうするか、想像してみて欲しい〉(マガジン9「三上智恵の沖縄撮影日記〈辺野古・高江〉」第55回/ http://www.magazine9.jp/article/mikami/29325/ 
 
『標的の村』に詳しいが、この高江では、ヘリパッド建設工事に反対するため座り込み抗議を行った住民たちを防衛省沖縄防衛局が「通行妨害」で訴えるというスラップ訴訟も起こっている。しかも、その訴えられた住民のなかには、7歳の女の子も含まれていた。信じがたい暴挙である。
 何度も繰り返される沖縄への暴力──。しかし、沖縄では最近もうひとつ、見過ごせない事件が起こっている。それは今月13日、米空軍嘉手納基地に所属するF15戦闘機が、沖縄市上空で熱源体の照明弾「フレア」を3発、発射していたのだ。
 幸いなことに被害は報告されていないようだが、これをたんなる「誤射」と片づけるわけにはいかない。こうした頻発するミスこそが、重大事故を引き起こす可能性を証明しているからだ。2004年には沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落するという大事故が起き、日米地位協定の壁に阻まれていまだ事故原因の全容解明さえなされていないが、沖縄ではつねに、このような理不尽な事故への不安と隣り合わせのなかでの生活を余儀なくされているのである。
 しかも、である。このフレア発射問題を報じたのは地元紙だけで、読売、朝日、毎日、産経の4大紙は扱っていない。沖縄が抱える現実は国全体の問題なのに、メディアがこうした姿勢でいるために、いつまでたっても基地問題は“他人事”になってしまうのだ。
 
 米軍属による残忍な殺人事件や米兵の飲酒運転事故などが立て続けに起こったが、基地がある街の苦悩や不条理をわたしたちはもっと知らなくてはいけない。頭上を戦闘機や危険なオスプレイが飛び交い、サッカー場をはじめとする基地跡地からは高濃度のダイオキシンが検出されるなど土壌汚染が広がっている。その米軍が放置した環境汚染の調査のためにかかった約9億8000万円は日本が税金で賄っているのである。その一方で防衛省は、米軍基地などの騒音対策であるエアコン補助費を、県内の幼稚園や小中学校など計108施設で廃止する方針だ。
 
 だが、そうした現実をもっとも無視しているのは安倍首相だ。沖縄の怒りによって誕生した翁長雄志知事の面会要請を再三拒否し、翁長知事の辺野古埋め立て承認取り消し処分に対して代執行訴訟まで起こした。裁判所の和解勧告によって協議のための作業部会が14日も開かれたが、ここでも話し合いや説明を求める沖縄側に対して国は“工事再開”の一点張りで、政府側は沖縄県への新たな訴訟提起さえ匂わせている。安倍首相は5月25日の日米首脳会談後に開かれた記者会見で「沖縄のみなさんの気持ちに真に寄り添う」などと言ったが、一体、どこに寄り添う気持ちがあるというのだろうか。
 
 何度も言うが、沖縄は14年の知事選、今年6月の県議選、そして今回の参院選と、再三にわたって民意を示している。しかし、民主的なかたちで沖縄が声をあげているのに、見せしめのようにヘリパッド建設工事を強行しようと大量の機動隊を送り込み、県民に寄り添うどころか足蹴にしているのである。到底、民主主義国家のやり方ではない異常さだ。
 
 最後に、前述した三上氏の言葉を、もう一度引用したい。
 
 今回の選挙で沖縄を圧迫する自民党政権を圧勝させた人たちは、これから高江で起きることについて目をそらしてはならない。自分の一票が支える権力がどこかで暴走していないか監視する義務があるはずだ (水井多賀子)