2020年7月3日金曜日

03- 「コロナと共存」「7割経済」は死刑宣告(日刊ゲンダイ)

 政府も都も新型コロナ感染者の徹底検査をせずに、「コロナと共存しながら7割回転の経済で」という姿勢を見せていますが、そんなことで日本が立ちゆく筈がありません。経済的弱者は生きていけません。
 経済評論家の斎藤満氏は感染を放置する国ほど感染者が増え経済が悪化する」と述べています。検査の徹底で感染者を洗い出して感染拡大を防止するしか、経済を回しながらコロナの感染を抑え込む方法はないということです。それをせずにただ「休業・自粛」要請を繰り返すのでは、日本は破滅に向かうだけです。
 日刊ゲンダイの「冗談じゃない!  死刑宣告」を紹介します。
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冗談じゃない!「コロナと共存」「7割経済」は死刑宣告
 日刊ゲンダイ 2020/07/01
(記事サイト阿修羅より転載)
 新型コロナウイルスの感染が各地で拡大している。国内の30日の新規感染者は138人で、5月25日の緊急事態宣言解除後、最多を更新。1日当たりの感染者数は3日連続で100人を超えた。
 クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗員乗客を含めた累計感染者は1万9426人に上り、死者は987人となった。新規感染者の広がり方からいって、陽性者が急増している東京都が震源地化している可能性が濃厚だ。小池都知事が5月末に「ウィズコロナ宣言」した都内では30日、54人の感染が判明。そのうち28人の感染経路が不明だ。新型コロナとともにあるのは疑いようがなく、感染者が50人を上回るのは5日連続だ。独自の警戒情報「東京アラート」の発動中(先月2~11日)よりも状況は悪化している。隣接する神奈川では横浜市の28人を含む31人、埼玉10人、千葉7人の感染も判明。ほかに北海道13人、大阪5人などが確認された。
 小池は東京アラートを解除するまで、休業を再要請する目安を①新規感染者50人以上(週平均)②感染経路不明割合50%以上(週平均)③感染者増加比率2倍以上(週単位)――としていた。30日の発表分で再要請目安の「50人以上」が2日連続、「50%以上」は3日連続。それなのに都はなぜ動かないのか。
 都民の戸惑いの声が高まる中、コロナ担当の西村経済再生相との会談後の30日午後8時に臨時会見を開いた小池は、東京アラートの実質廃止を発表。数値基準ナシの新指標7項目を公表し、こう言った。
「どの数字まで行けばスイッチをオンにするということではなく、全体像をつかまないといけない」
 現実に即してルールを適用するのではなく、唐突なルール変更。今後の判断は医療体制を重視するなどともっともらしいことを言っていたが、圧勝再選を狙う都知事選(5日投開票)は終盤だ。票減らしに直結するコロナ対応の失敗を糊塗する意図はミエミエだが、同じく無策な政府と一体となり、いよいよ打つ手なしで国民騙しに突っ走ろうというのか。

ワクチン喧伝で五輪→V字回復の理想
 側近の河井前法相夫妻による選挙買収事件なども直撃し、内閣支持率が下落傾向の安倍首相は国会を閉じて以降はコロナ対応で存在感ゼロ。菅官房長官は30日も「感染拡大防止と社会・経済活動の両立に取り組んでいきたい」とお決まり回答で、足元の感染拡大には目もくれない。第2波への備えを万全にしなければならない時期に専門家会議は空中分解し、経済再開を急ぎ、感染者急増でも「ウィズコロナ」と嘯く政権や都知事の対応は一言、現実から目を背ける神頼みなのだ。
 政治評論家の本澤二郎氏は言う。
「日本ほどちゃらんぽらんなコロナ対策を続けている国は、世界を見渡してもそうないでしょう。安倍首相と小池知事に共通するのは、政治的思惑含みでしか新型コロナを見ていない国民全員のPCR検査実施は陽性者急増につながって医療体制が崩壊するからとヤル気なし。一方で、ワクチン開発を盛んに喧伝し、来年前半にも接種が始まるかのように伝えられていますが、1年後の東京五輪を確実に開催して経済はV字回復するとの幻想を振りまくためです。安全性と有効性の確認が欠かせないワクチン開発は年単位の時間を要しますし、容易な作業ではない。SARS(重症急性呼吸器症候群)もMERS(中東呼吸器症候群)もワクチン開発に至っていません」
 ノーベル医学・生理学賞受賞者の京都大の本庶佑特別教授は報道番組で「日本政府は大したことはやっていないが、幸運なことに感染爆発は起こらなかった。これは世界の共通認識」と喝破していた。そんな幸運はいつまでも続くはずがない。

プラス成長のベトナムと台湾は徹底抑止
 政府や都知事の旗振りに乗せられて、世の中は「コロナと共存」「7割経済」を大マジメに考え始めている。しかし、こんなのはゴマカシの末にひねり出された惹句だ。弱者には死刑宣告になりかねない。
 経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「ハッキリしているのは、感染を放置する国ほど感染者が増え、経済が悪化しているという事実です。IMF(国際通貨基金)が2020年の経済見通しをマイナス8・0%と予測している米国では、フロリダ州やテキサス州で経済活動を再制限する事態になり、感染拡大に歯止めがかからないブラジルはマイナス9・1%メキシコはマイナス10・5%との予測です。日本はマイナス5・8%の見通し。かたや、抑止に成功している国・地域はプラス成長を続けている。ADB(アジア開発銀行)はベトナム4・1%、台湾0・8%と予想しています。そもそも、『7割経済』という発想は元の生活に戻ることが前提ですが、まずあり得ない。経済活動が7割に縮小される状態がズルズル続けば、持ちこたえられない企業が続出し、失業者があふれかえることになる。政府の財政状態を考えれば、補償にも限界があります」
 東京商工リサーチによると、コロナ関連倒産は294件(30日午後5時現在)に増加。経済指標は加速度的な景気悪化の実態をまざまざと映し出している。5月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整済み)は前月比8・4%減の79・1で、低下は4カ月連続。現行基準で比較可能な13年1月以降の最低を更新した。全15業種が低下し、コロナ禍で国内外の需要が蒸発してサプライチェーンも混乱した自動車工業の落ち込みが目立ち、生産用機械工業や鉄鋼・非鉄金属工業も減少した。

7都道府県でついに求人1倍割れ
 雇用環境の急激な悪化は目を覆いたくなるほどだ。緊急事態宣言発令の影響がモロに出ている。5月の完全失業率(季節調整値)は2・9%で、前月より0・3ポイント上昇完全失業者数は前年同期比33万人増の198万人に膨らんだ。一方、5月の有効求人倍率(季節調整値)は1・20倍で、前月から0・12ポイント低下。5カ月連続の減少で、下げ幅は46年4カ月ぶりの大きさ。7道県ではついに1倍を割り込み、ワースト順から沖縄0・78倍、青森と滋賀0・93倍、長崎0・94倍、神奈川と高知0・95倍、北海道0・96倍――という惨状だ。生活保護受給者も急増しているという。
 安倍政権のコロナ対策はずさんな作戦で多数の犠牲者を出したインパール作戦さながら、玉砕不可避のバンザイ突撃のごとく奈落の底に突き進む経済シュリンク収縮に、庶民はどう備えるべきなのか。
「コロナ禍で移動や外出の自粛が強いられ、生活様式は一変した。現状の社会・経済システムを維持しようとすれば、企業、雇用、国や地方自治体の財政、いずれももちません。介護、病院、建設、運輸などの人手不足分野に労働力を移行させる。さらに発想を転換し、コロナ禍に耐え得るニュービジネスを生み出す。本来は政府が大きな絵を描くべきですが、利権ありきで国民生活を守る方向への創造性発揮は期待できない。民間主導で動き始めるしかないでしょう」(斎藤満氏=前出)

 国民の生命と暮らしを軽んじる政治を許せば、端から干上がっていく。首都のトップを決める都知事選の投開票は4日後。まずは東京から、デタラメを正していこう。