2か月前程から『バイキング』(フジ)に常時顔を出すようになった平井文夫解説委員に、“フジのスシロー”(スシロー=田崎史郎氏)という絶妙な異名が付いたのは極めて当然の成り行きでした。
安倍首相がメディアを掣肘しようとする思いは強烈で、彼ほど頻繁にメディアのトップと会食と重ねている首脳はいません。それによってメディアを抑え込むことはできたのですが、安倍政権の失政や違法を含む不祥事の数々は枚挙に暇がないので、ワイドショーなどで取り上げられるたびに「カラスをサギ」と言いくるめる弁解をしないことには政権が持ちません。
その点で、連日「羽鳥モーニングショー」や「ひるおび」などに登場して、安部政権をカバーしてくれるスシロー氏の存在は、政権にとっては欠かせないものです(その後モーニングショーには、出演の効果が見られないという理由からか出なくなりました)。
ひと頃は(田崎史郎氏に加え)元TBS記者の山口敬之氏がTVにコメンテータとして登場し、連日政権擁護の発言を展開しましたが、その後伊藤詩織さんへの準強姦疑惑が持ち上がりTVに登場しなくなりました。かくしてスシロー氏の孤軍奮闘状態が続いていました。
そこにフジの幹部社員である平井文夫氏がその役を買って出たのですから、官邸としては願ったり叶ったりです。
本来であれば「一見批判者風を装っていながら肝心なところで擁護する」というのが上手いテクニックなのでしょうが、安倍首相に関しては余りにも擁護すべきことだらけなのでそんな悠長な手段は取ってはおれずに、最初から全力で擁護の論陣を張るしかありません。
LITERAがその有様を報じました。
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坂上忍と“フジのスシロー”平井文夫解説委員がバトル!
平井のGo To批判封じ込め発言に坂上が「政府の一員のよう」
LITERA 2020.07.21
20日の『バイキング』(フジ)で、フジテレビ・平井文夫上席解説委員と坂上忍がバトルを繰り広げ、坂上の口から思わず「政府の一員のよう」という本音が飛び出した。
平井文夫解説委員といえば、“フジのスシロー”の異名をとる典型的な安倍応援団ジャーナリスト。この間も、黒川弘務・東京高検検事長の賭け麻雀問題では「点ピンはセーフ」、河井克行前・法相の逮捕では「じつは、安倍さんって河井(克行)さんのこと、そんなに好きじゃない」などと、本家・田崎史郎氏も真っ青な露骨かつアクロバティックな政権擁護を口にし、顰蹙を買ってきた。
その平井氏がこのところ、必死になって擁護してきたのがGo Toキャンペーン。東京除外で実施がまだ決まっていなかった先週の『バイキング』でも、こんなめちゃくちゃな論理で、Go To批判を封じ込めにかかった。
「旅行に行くのくらいね、自分で決めなよと思うんですよ」
「みんなでやめようとかね。なんとなくいま同調圧力で、Go Toキャンペーンを悪みたいなことにできますよね。やめろみたいな。それはちょっと、はあ?って思いますよね」
「全員一緒に行ってもいいのか悪いのか決めてくれってほうがおかしい。それは民主主義じゃないですから」
「自分の責任で、行く人、呼ぶ人、やればいいんで、それ行かない人が余計な口出さないでくれって僕は言いたい」
国民が批判しているのは、こんなタイミングで、感染拡大を助長するような政策に巨額の税金をつぎ込むことなのに、「旅行に行くの1人で決められない」とか「自分の責任で」とか、何を話をすり替えているのか。
しかも、平井氏は司会の坂上忍や『バイキング』の他の出演者が総じてGo Toに批判的な姿勢を示すと、メディア、さらには同番組のGo To反対に何か裏でもあるかのような、陰謀論まで口にしていた。
「今日の話聞いてると、今日朝からずっとテレビ見てたんですけど、みんな反対じゃないですか」
「僕は逆になんでみんな同じことしか言わないのかなって、すごい不思議なんです」
平井氏はまず、こう皮肉ったのだが、これに対して坂上が「同じことしか言わないんじゃないですよ。たぶんたまたまこれに関してはそういう気持ちになったっていうだけだと思います」と返すと、平井氏はニヤニヤしながら「毎回?」と思わせぶりな疑問を投げかけたのだ。
フジテレビのなかでは政権批判色が強い『バイキング』に対して、ネトウヨが「坂上が裏で番組を支配して言論をコントロールしている」と攻撃しているのをよく見るが、まさか、番組を放送している局の解説委員である平井氏がネトウヨバリの陰謀論を口にするとは……。
平井文夫の「Go To批判は同調圧力」に坂上忍が「言論封殺」「政府の一員のよう」
もっともこのときは、坂上も相手が局の解説委員ということで遠慮したのか、ムッとしながらも「いやだって、口裏を別に合わせているわけじゃない」「(平井さんと)合わせましょうか、たまに」といなすにとどめていた。
だが、東京を除外しての実施が決まると、坂上はきのう20日の放送で、あらためてGo To強行やキャンセル料補償問題をを批判した上、平井氏と真っ向からバトルを繰り広げたのだ。
まず、「平井さんは東京除外っていうのはどうなんですか? 納得はしてるんですか?」と水を向ける坂上。平井氏が「してませんよ」「してませんけど。まぁ、みんながそう言うんならしょうがないかな。でも、だからまあ、今年の夏休みにどこも行けないかな」と答えると、坂上は「最終的に“僕が行けない”ってなっちゃう?」とつっこむ。
すると、平井氏は語気を強め、例の「Go To批判は同調圧力」というトンデモ主張をまたまた繰り返した。
「それは僕が民主主義のことを言ってるんです。民主主義は移動は自由なんです。人に強制されないんです。坂上さんが僕の移動を強制できないんです」
「だけど今、日本は、事実上そういう同調圧力があるのが僕は一番気持ち悪い」
ところが、20日の放送では、坂上がこれに猛然と反論した。
「これね、平井さん同調圧力っていうのは、僕はちょっと言いすぎだと思うんですよ。逆に言ったら平井さんのほうが、その言い方をされちゃうと、なんか言論封殺じゃないけど、そういう言い方するから、何もできなくなっちゃってんだよ、っていう、なんかまるで政府の一員の方のような意見に聞こえちゃって、逆に僕、恐怖感じちゃうんですよ」
ふだんは、圧力で政権批判を封じ込めながら、政策批判が盛り上がると「同調圧力」「メディアの仕掛け」などとすり替える安倍応援団の手口を見事に喝破して見せたのだ。
しかも、注目すべきは坂上が「政府の一員の方のような意見」といったことだ。これはまさに、坂上の本音が出たものではないか。
「政権の代弁者」として『バイキング』に送り込まれた平井文夫に坂上の本音が
平井氏は2カ月ほど前から急に『バイキング』に連日出演するようになったのだが、これは番組の政権批判色を抑えるためにフジの上層部が“安倍政権の代弁者”として番組に送り込んだもの、といわれているからだ。
「『モーニングショー』が田崎史郎氏を出演させてきたように、ワイドショーはどこも政権に忖度して“政権の代弁者”の安倍応援団コメンテーターを準レギュラー的に出演させている。ただ、『バイキング』は情報バラエティということで、そういう人物を出演させていなかった。しかし、コロナ以降、『バイキング』は坂上の意向でコロナの補償問題や黒川人事問題、河井前法相夫妻の買収問題などを連日取り上げ、かなり厳しく政権批判をするようになった。それで、上層部が、平井氏を起用するよう現場に命じたらしい。その前に、官邸から政治部経由で上層部にクレームが届いていたんじゃないかという噂もある。まあ、上層部としては本当は『バイキング』に政治テーマ自体扱わせたくないんだろうが、あの番組はMCである坂上忍の意向が強く、政権批判を扱うなと言うのは難しい。それで苦肉の策として、平井さんを投入したんだろう」(フジテレビ関係者)
しかも、『バイキング』の政権批判抑え込みは、平井解説委員の起用だけではないようだ。本サイトの取材ではまだ確認が取れていないが、『女性セブン』(小学館、7月40日・8月6日号)によると、秋にスタッフを総入れ替えすることで、政権批判色を抑えようとしているという。
いずれにしても、坂上の今回の「政府の一員の方のような意見」はそういった『バイキング』包囲網への皮肉、という意味合いがあったと考えるべきだろう。
ミソジニーやパワハラ肯定、芸能スキャンダルでの芸能プロ忖度など、批判すべき点が多々ある坂上だが、政権批判については、他のワイドショーよりもはるかに骨のあるところを見せているのは事実。この部分だけは、坂上の抵抗をぜひ支持したい。(本田コッペ)