「東洋経済オンライン」は、インターネット上に「新型コロナウイルス国内感染の状況」(⇒ https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/ )を掲示し、「全国の状況」及び「各都道府県の状況」を毎日更新しています。
上段に「全国の状況」が掲示されるので、下にスクロールすると「各都道府県の状況」が掲示されます。タイトルの右下で「都道府県」を選択することができます。
全て棒グラフで表示されるので、カーソルを当てると詳細数字が表示されます。「新規」と「累積」を選択すれば、それぞれが表示されます。
また月日を表示する横軸の下のブロックを左に動かすと、2/17まで遡ることが出来ます。
連日データを更新するので大変な労力が掛かっています。
その担当者の荻原 和樹氏が、「『コロナはただの風邪』と言う人が知らない事実、『検査増加で陽性者が増えた』はデータの誤読」とする記事を出しました。
世上で流布されている説について具体的に検証しています。
以下に紹介します。
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「コロナはただの風邪」と言う人が知らない事実
「検査増加で陽性者が増えた」はデータの誤読
荻原 和樹 東洋経済オンライン 2020/07/14
新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下「新型コロナ」)の「第2波」と呼ぶべき感染の再拡大が足元で続いている。東京都では7月12日の新規感染者(陽性者)が206名に上り、4日連続で200人を超える水準が続いている。
一方で、TwitterなどのSNS上では新型コロナの危険性を軽視する風潮が一部に見られる。個人批判が目的ではないので個別に挙げることは避けるが、「コロナはただの風邪」あるいは「コロナは茶番」といったフレーズを多用し、新型コロナへの注意を呼びかける専門家、著名人、あるいはマスメディアを批判することが多いようだ。
彼らの論拠には「陽性者数が増えているのは単に検査数が増えているから」「重症者や死亡者は増えていない」「罹患しても若者の死亡率は低い」などがある。しかし、いずれの説も新型コロナに関するデータの特性や注意事項を把握しているとは言い難い。ひとつずつ検証していこう。
陽性者が増えたのは検査が増えたから?
まず「東京都で検査数が激増し、それに伴って陽性者数が増えただけであり、実質的な陽性者数は増えていない」という説。この説はデータの基準変更に気づかず読み違えたものが広まったと思われる。
まず、「検査数が激増した」という解釈は正確ではない。たしかに6月18日から東京都の公表する検査人数は数字上で増えた。しかし、これは今まで公表範囲に含めていなかった医療機関による保険適用での検査実績を含めるようになったためだ。東京都は検査人数の詳しい内訳を公表していないため、基準変更の前後で増減を比較することはできない。
その後、東京都は過去データを修正し、5月7日まで遡って保険適用分を集計範囲に含めた(正確には、さらに7月に入ってからPCR検査だけでなく抗原検査も「検査人数」に含めるようになった。ただし抗原検査は絶対数が少ないため、検査人数の全体的な傾向にはあまり影響しない)。データ修正後の検査人数を見ると、5月から7月にかけて徐々に増加傾向が見られるものの、ここ最近の陽性者数増加がすべて説明できるほどの違いではない。
実際、陽性判明数を検査人数で割って算出される陽性率は、陽性者数の増加に伴って上昇傾向にある。もし陽性者数の増加が検査人数の増加によるものなら、陽性率は変わらないはずだ。
なお東洋経済オンラインのデータダッシュボード「新型コロナウイルス 国内感染の状況」でも、東京都の基準変更に応じて、グラフ下部の注記に急増の理由を追加し、棒グラフの色も変えて継続性がないことを示しているが、注記を消してあたかも検査人数が急増したかのように見せるスクリーンショットが一部で拡散されている。SNS上でグラフの画像が共有されることは少なくないが、必ず出典のウェブサイトや文献を確認し、注釈やデータの更新がないか確認するようにしたい。
「重症・死亡が増えていないから大したことない」?
次に、「重症者や死亡者は増えておらず、新型コロナにかかっても大したことがない」という説を検証する。
まず事実を整理すると、たしかに「第2波」と呼ばれる6月下旬以降、重症者や死亡者が顕著に増えている傾向は見出せない。これは全国およびいずれの都道府県でも同様だ。
ちなみに、6月19日にはデータ上で17名の死亡者がカウントされているが、ここには埼玉県においてPCR検査陽性者だが新型コロナ以外の疾病により死亡した患者13名が一括計上された分が含まれる。したがって実質的には同日の死亡者は4名となり、1日の死亡者が10名を超えたのは5月29日が最後だ。少なくとも足元の重症者数や死亡者数が再び増加傾向に入っているとは考えられない。
しかし、重症者や死亡者は陽性者数よりも遅れて発生する。「第1波」のデータを見ると、日別の新規陽性者のピークが4月中旬だったのに対して、重症者は4月末まで増加傾向が続いた。死亡者の新規発生ピークも5月初頭だ。「第2波」も同様に、陽性者数の増加が重症者数や死亡者数に波及するまで2週間前後かかる可能性は十分にある。
同様に、厚生労働省や地方自治体が発表する新規患者の軽症・重症分布を見て「重症者がいないから大したことがない」とする向きもあるが、入院時点では軽症扱いでも、その後に病状が悪化して重症となる可能性はある。患者の発生と重症者の発生が同時でないことには注意が必要だ。
新型コロナは若年層には無害?
最後に、「新型コロナにかかっても、若年層はほとんど重症化・死亡しないから平気」という説について。これは「なぜ高齢者を守るために若者である自分たちが自粛を強いられなければならないのか」といった、インターネット上で見られる高齢者バッシングに伴って主張されることが多いようだ。
たしかに、新型コロナによって重症化・死亡する若年層は多くない。厚生労働省の集計による年齢層別の状況を見ると、死亡者の95%、重症者の84%を60代以上が占めている。
しかし、重症や死亡のリスクが低いことは「かかっても問題ない」とは異なる。若年層の死亡もゼロではなく、20代でも1名、30代では4名の死亡者が出ている。
そもそも厚生労働省の定義では、重症とはICU(集中治療室)への入室や人工呼吸器の装着を指す。何らかの処置を行わないと死に至る危険性が高い状態という意味であり、一般に想像されるイメージとは異なることに注意が必要だ。
また、重症でなくとも後遺症が残る懸念もある。イタリアやオランダでは、軽症であっても肺にダメージが残る可能性があるとの報告もなされている。厚生労働省も、新型コロナウイルスから回復した患者を対象に後遺症の実態調査に乗り出すことを7月10日に発表した。
加えて、新型コロナは医療従事者への感染リスクを含め、受け入れる病院のリソースに大きな負担をかける。新型コロナだけでなく、平時であれば適切に対処できたであろう怪我や病気への対応に影響を与えるおそれもある。
新型コロナは、たしかに不治の病でも致死率が著しく高い病気でもないかもしれない。しかしそれは「かかっても平気」というわけではなく、ましてや「コロナはただの風邪」などと見くびるべきではない。