2020年7月4日土曜日

日本不買運動から1年 韓国のリアル (文春オンライン)

 官邸の安倍ー今井ラインが突如韓国への輸出規制強化を始めてから7月1日で1年となりました。
 韓国ではこの間、対象となった半導体材料3品目の国内調達を急ぐなど「脱日本依存」が加速しました。半導体の洗浄に使う「フッ化水素」の対日依存度は以前の42%から95%に低下しました。
「日本の措置は結果的に半導体材料の国産化が進むなど韓国にとっては良い機会にもなった」 これは韓国大統領府員の言です。
 6月には、新型コロナウイルス対応に追われて休戦状態だった韓国によるWTO提訴手続き再開されました。韓国はWTOの次期事務局長選に出馬表明しています。

 日本製品の不買運動も依然強固でいまも不変、と言うよりももはや韓国民の生活様式になっていて、これまで営々と築かれてきた「優秀な日本製品」のウリは無に帰しつつあります。
 健闘していた自動車も、日産自動車が韓国から撤退し他社も苦戦しています。同じく奮闘していた化粧品も、コロナがひと段落しても売り上げが前のように戻らないということです。衣料品のユニクロやGUも同じくで、いまや韓国で健闘しているメーカーは「任天堂」「ABCマート」「デサント」、「無印良品」などに絞られているということです。

 中国人に次いで多かった韓国人の訪日観光客も、コロナが落ち着いたとしても多分戻らないでしょう。「韓国いじめ」で安倍官邸が画策した愚策は、韓国にではなく日本に致命的な打撃を与えました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
GUは全店舗撤退、ABCマートや「あつ森」の任天堂は善戦……
日本不買運動から1年、韓国のリアル 
菅野 朋子 文春オンライン 2020/07/03
 金曜日の夕方、クラフトビール=地ビールを出す店の前に空席待ちの列が。
「最近は会食でもクラフトビールがあるところばかり行きたがる」
 50代と覚しき夫婦がそんな話をしながら、そばを通り過ぎていく。
 韓国では最近、クラフトビールが爆発的なブーム。昨年7月まで日本産ビールが占めていたシェアを、クラフトビールが奪っているという。

不買運動は「輸出管理」をきっかけに始まった
 昨年7月1日、韓国に対する日本の「輸出管理」をきっかけに始まった日本製品不買運動から1年。あれから何が変わって、何が変わらなかったのか。
「ビールはマイナス88%、車も半分に……ボイコットジャパン1年め、現在進行形」(中央日報、6月27日)、「ファッション、ビール、ノージャパンはブーメラン。好調だった車もふらふら」(京郷新聞、6月30日)
 メディアは保守、進歩系問わず、1年間の不買運動の結果、韓国における日本製品のシェアが激減したと報じた。
 韓国で日本産ビールの人気は絶大だった。不買運動前までの10年間ほどはアサヒ、キリン、サッポロは輸入ビールの販売量で常に10位圏内を走っていた。ところが、日本産ビールはいまや大手スーパーでも棚の隅に追いやられ、姿を消したものも。韓国の関税庁によると、輸入額は昨年対比で87.8%(4月基準)減少したと報告された。経済誌の記者は言う。
「日本はほかでもない、半導体の部品の輸出規制という、韓国にとっては経済の根幹にも関わる急所を突きました。これは外交と経済を同じ次元にするのかと一般の人からも怒りを買った。当時は、半ば本気で韓国経済が落ち込んでしまうのではないかとみな憂慮していましたから。
 消費財の不買運動なんて正直、ナンセンス。それでも、これだけ広まったのは、不買を通り越して、ふだん使っていた製品にも代わりのものがあることにみな気づいてしまったからですよ」

「GU」は全店舗撤退が決定
 もちろん、クラフトビールの人気にもカラクリがあり、酒税法の改正により、価格が大幅に下がったこともある(1缶250円~300円)。
 不買運動の矛先となったのは、いずれも韓国で人気があったもので、「ユニクロ」も然り。そのユニクロは昨年末までに186店舗中12店舗が店を畳み、売り上げも前年比マイナス約30%となった。また、姉妹ブランドの「GU」は韓国に進出してわずか2年足らずで全4店舗撤退が決定している。
 健闘していた自動車も、日産自動車が韓国から撤退し、他社も苦戦が続いている状況だ。化粧品も奮闘していたが、「コロナがひと段落したらお客さんも戻ってくると思ったら、不買運動の影響がまだ残っているのか、それとも他社製品のほうがよくなったのか、売り上げが前のように戻らない」と販売員はこぼしていた。

「日本産うんぬんはもう関係なくなっている」
 一方で、善戦しているところもある。「任天堂」は「あつまれ どうぶつの森」が韓国でもヒットしていて、販売店前には長い行列までできた。「ABCマート」や「デサント」、「無印良品」などは不買運動開始直後こそ打撃があったと報じられたが、現在は安定していて業績も好調だと伝えられた。前出記者は言う。
「不買運動に直接関わっている人はともかく、ほとんどの人にとってはモノがよければ日本産うんぬんはもう関係なくなっている。トヨタのレクサスなどはやはり欲しい、購入したいという人は周りにもいますし、個人的にはサッポロのヱビスビールは飲み続けたいですし」
 かつて日本製品は質が高いと韓国でも持て囃された。ところが、奇しくも「輸出管理」をきっかけに消費者の目が他製品に移ってしまったことも、日本製品不調の背景になっているようだ。
 肝心の輸出が管理された3品目はどうだろう。「フッ化水素」には大きな変化が見られて、韓国内での国産化が進められ、輸入先として日本は全体の4割ほどを占めていたのが、現在は95%へと激減している。代わりに取引が増えているのは、中国と台湾だ。「フォトレジスト」と「フッ化ポリイミド」は、あまり変化はなく、「フッ化ポリイミド」にいたっては若干だが日本からの輸入が増えてもいる。

韓国のG7参加に反対「日本が主導権を失う憂慮があるのでは」
「韓日関係が過去の垂直的な関係ではなく、水平的な関係に変り、日本がアジアにおける主導権を失うかもしれない。そういう憂慮が根底にあるのでしょう」(聯合ニュース、7月1日)
 こう話したのは、金尚祚青瓦台政策室長だ。世界貿易機関(WTO)の事務総長に韓国が立候補したことを日本が反対しているように見えることについてどう思うか、と聞かれた質問に答えたもの。
 トランプ米大統領がG7へ韓国やロシアなどを招待したが、韓国の参加について日本が反対しているという報道が流れると、青瓦台は、「恥知らずの極みで非常識」(ニュース1、6月29日)と強く反発し、「日本の態度は自ら掲げた『アジア代表の走者』という主張に傷をつけるだけだ」(東亜日報、6月29日)と報じたところもあった。

「反日を乗り越えて、撃ち勝とう」
 進歩派の人々の中には最近、「『克美用美』(米国については、克服して利用しよう)、『用中知中』(中国はよく知って利用しよう)、『反日撃日』(日本には反日を乗り越えて、撃ち勝とう)」と話す人が出ていると中道系紙記者は言う。
「日本の最近の行動は、以前の日本では見られなかったものです。それはコロナウイルス対策の初動に失敗して世界から失笑を浴びたこととも無関係ではないでしょう。相当、余裕がなくなっていると感じています」
 日韓間で次に懸念されるのは徴用工問題で賠償を求められていた日本企業の資産の現金化が現実となった時だ。
 そうなった時、日本はまた、日韓ともに損害を被る、さらなる「輸出管理」を行うのか。
 韓国は、コロナウイルス対策では世界から認められたという自負を、そして米国からG7へ招待を受けたという自信を持っている。
 今までの韓国とは異なることを日本は見極めなければならない。(菅野 朋子)