2020年7月8日水曜日

コロナ利用の自分ファースト “女帝”圧勝の内幕と今後(日刊ゲンダイ)

 日刊ゲンダイが「 ~“女帝”圧勝の内幕と今後」と題した都知事選を総括する記事を出しました。当ブログでは首都ながらもローカル選挙ということで、これまで基本的に取り上げてきませんでしたが、ブログのアーカイブに載せて置く意味でここに紹介します。

 小池都知事は、3月24日に東京五輪が延期になったことを境に掌を返すかのように急激にコロナ対策に走り出し、それがそのまま結果的に知事再選の長丁場の選挙活動になりました。「結果的に」と言うよりは「意識的に」それを目指したというのが本当でしょう。
 日刊ゲンダイは、結果は「小池圧勝」だったが都民の消極的な選択でもあったとしています。
 小池都知事の1期目は「7つのゼロ(選挙公約実行度)」と総括されていますが、2期目も何の見せ場もありません。
 識者の一致した見方は、次期の総選挙を機にあわよくば再度国政に転身したいというのが本心だというものです。その実現性は不明ですが、都民にとってはいい面の皮です。
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コロナ利用の自分ファースト “女帝”圧勝の内幕と今後 <前>
 日刊ゲンダイ  2020/07/06
現職の強みのマヤカシで2期目突入の喜劇的結末
「都民の力強い支援に対し、大変うれしく感じると同時にこれから大切な2期目の重責を担っていく、その重さに大変責任を感じる」
 投票終了後、たった4秒で当選確実。コロナ禍の都知事選に圧勝した“女帝”は当確後の第一声まで「3密」回避にこだわった。
 5日、小池知事が選挙事務所への出入りを許したメディアは、都庁の記者クラブ加盟の数社のみで、その他は排除。同時に数人しか入れず、記者とカメラマンは入れ代わり立ち代わり。独善的な身勝手さは、彼女の正体を物語る
 今回の選挙を通じて小池がまざまざと見せつけたのは「自分ファースト」の本性。利用できるものは何でも利用するしたたかさと醜さだ。

 コロナ対策に本気になったのは五輪延期が決まってから。
 急に「ロックダウン」「オーバーシュート」と強烈な言葉を駆使した狙いは選挙前の露出度アップだ。自らの出演CMに都民の血税9億円を費やす電波利用。一時は彼女の顔を見ない日はなかったほどだ。その後も会見のたび、「感染爆発 重大局面」「STAY HOME」「ウィズコロナ」など緑を用いたパネルをかざし、自身のイメージカラーを有権者に刷り込み続けた
 再出馬表明に合わせて「東京アラート」も解除。都庁とレインボーブリッジを真っ赤に染めた効果や意味はなくても、とにかく目立てばいいのだろう。コロナの選挙利用との批判を恐れたのか、告示後はオンライン選挙と称して閉じこもり。最後のメッセージ動画も緑一色と、イメージ重視で中身スカスカの選挙戦だった。
「コロナ禍に乗じた“やってる感”の印象操作で、小池知事ひとりだけが選挙活動期間が長かった印象です。前回は崖から飛び降りる覚悟で自ら風を起こしましたが、今回は論戦を避け、風を抑えた。テレビ討論会を一度も行わなかったメディアの異常さも彼女に味方しました」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)
 現職の強みという名のイカサマ同然で手にした小池再選の喜劇的結末。結局、イメージや知名度だけがいつも勝敗を左右する。都知事選という政治ショーの限界を改めて露呈した。

得票率6割、360万票超え大勝利の“戦犯”
 小池は4年前の都知事選では291万票、得票率44・49%だった。今回は、前回から75万票近くを上乗せし、歴代2位の366万票を獲得。得票率も59・7%まで伸ばした。過去最多得票は2012年の猪瀬直樹氏の433万票。これには大きく及ばずだが、総選挙と同日で高投票率だったという特殊事情がある。得票率なら猪瀬は65・27%で、小池は記録に迫る大勝利だった。
 公約実現ゼロの小池が圧勝したのは、国政政党の与野党が共に、小池と本気で戦わなかったことが最大の原因だ。
「4年前のように小池氏VS自公、小池氏VS野党統一候補となれば、都知事選はもう少し盛り上がったでしょう。対立構図が生まれず、小池1強と多弱のような形になり、現状維持派が多数となった」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏)
 自民党は都議会では小池と対立してきたのに、党本部の二階幹事長の鶴の一声で独自候補の擁立を断念。事実上、小池支持の状態だった。実際、NHKの出口調査で、自民党支持者の7割が小池に投票していた。
 一方、野党は最終的には立憲民主・共産・社民の3党が宇都宮健児候補を支援したものの、同候補の出馬表明後に遅れて乗った形。国民民主党は自主投票で、立憲と国民の支持母体の連合東京は小池支持というねじれ状態。れいわ新選組代表の山本太郎候補も出馬し、野党は統一候補どころかバラバラ感を極めた。
「小池氏には、学歴詐称問題とコロナ感染拡大という2つの危機があり、マイナスの影響が出てもおかしくありませんでしたが、ギリギリ回避した。特にコロナは東京での新規感染者が100人を超えたのが投票日の3日前。あれが告示前なら厳しかったでしょう」(鈴木哲夫氏=前出)
 NHKの出口調査で小池都政を「評価しない」と答えながらも、小池に投票していた人が2割ほどいた。小池圧勝が、都民にとっていかに消極的な選択だったかということが分かるというものだ。

都民の自業自得だが、この都知事で、コロナ収束、経済回復は絶望
 都内で5日、新たに感染が確認されたのは111人で、4日連続で100人超え。そのうち、感染経路不明は53人に上り、ほぼ半数を占める。都の旧モニタリング指標にあてはめると、1週間平均の感染経路不明率は39・3%と高止まり。感染拡大は疑いようがないし、市中感染が広がっているとみた方がいい。
 都内の新規感染者が初めて3ケタに乗せたのは、緊急事態宣言発令3日前の4月4日。118人から一進一退しながら、休業要請が実施された宣言下の同17日に最多の206人を記録。2週間程度の潜伏期間を経てピークに達したことを考えれば、現状は相当深刻だ。まして小池は、感染抑止策を講じるよりも経済再開優先。ナントカのひとつ覚えで「夜街注意」を繰り返すだけ。「他県への移動遠慮」に言及したのは、感染が飛び火した近県が怒り狂っているからに過ぎない。

 経済評論家の斎藤満氏は言う。
「鳴り物入りで導入した『東京アラート』は、小池知事が再選出馬を表明する前日に解除。中途半端に経済再開に舵を切った揚げ句、感染が再拡大するとアラートを実質廃止し、数値基準ナシの新指標にすり替えた。新型コロナ対応で都の貯金にあたる財政調整基金を9割以上取り崩して台所事情が厳しくなると、何の知恵もなく無理やり経済を回そうとして感染を放置し、第2波を招きつつある責任は極めて重い」
 小池が好む国際的視点に立てば、感染抑止と経済活動がセットなのはハッキリしている。アジア開発銀行(ADB)は2020年の経済見通しで、死者ゼロのベトナム4・1%、死者7人の台湾0・8%のプラス成長を予測している。
「感染が全国に再拡大したことで、夏休み需要は吹き飛ぶでしょう。震源地の東京からの移動は歓迎されず、地方から東京に遊びに行こうという気にもならない。第1波に襲われた3~4月のように人の動きが止まり、経済活動ストップが再現されるのではないか。お上が『移動は自由』とハッパをかけても、不安を抱える国民は自粛し、巣ごもりに戻るでしょう。小池知事の失政が大きな経済損失を生み、都民や都内の事業者がそのツケを払わされるのは避けられません」(斎藤満氏=前出)
 都内の完全失業者は1~3月期が前年同期比10・4%増の21万3000人。足元ではさらに悪化している。都知事選に向けて小池が掲げた公約「東京大改革2・0」には、都民の生活支援プランが一切ない。潔いほどない。「自粛より自衛」で都民に責任を転嫁する小池の再選によって、弱者がますます切り捨てられる地獄絵図を見ることになる。


コロナ利用の自分ファースト “女帝”圧勝の内幕と今後 <後>
 日刊ゲンダイ 2020/07/06
山本太郎の次の戦略は打倒維新の大阪殴りこみ
 やはり野党候補は一本化すべきだった。どんな事情があったにせよ、宇都宮、山本両候補による反小池票の受け皿分断は、コロナ利用の“女帝”の圧勝を許す結果を招いただけでも罪深い。
 今回の分断を引きずり、国政レベルの共闘を巡っても、野党同士の主導権争いが勃発しそうな雲行きだ。しかし、早期の解散・総選挙が取りざたされる中、野党は内輪モメをしている場合ではない
「野党はひとかたまりにならなければ時の権力には立ち向かえず、大きな風も起こせない。そのことを痛感させられた都知事選でした。野党がバラバラでは次の総選挙も勝てないことが明瞭になった今、野党はその教訓を生かし、共闘に動くべきです」(五十嵐仁氏=前出)

 知事選後、立憲、国民は再び合流に向けて協議が加速しそう。そして、れいわの山本も共闘しなければ安倍自民を倒せないことは当然分かっている。れいわの選対幹部は「次の衆院選は山本が大阪に乗り込むことも考えられる」と打ち明けた。狙いは「打倒、日本維新の会」だ。
「野党共闘が順調に進んでも、自公の補完勢力である維新が関西圏で勢力を維持している限り、野党の政権交代は望めない。そこで山本が大阪に殴り込みをかけ、維新の牙城の切り崩しに動き、野党共闘を側面支援する。彼なら、そのくらいの覚悟は持っている」(前出のれいわの選対幹部)
 今回の都知事選で山本は約66万票を獲得。だが、昨年の参院選比例区でれいわは大阪で約12万票、兵庫は約8万票に過ぎなかった。れいわが「全国区」を目指す意味でも、山本が大阪に乗り込む意義はある。
 山本はもともと、兵庫県宝塚市出身。“政界のお騒がせ男”は、勝手知ったる「なにわ」でひと暴れするのか。

小池は4年間を全うできるのか 権力亡者に弄ばれる都政と都民
 圧勝再選した小池が午後9時すぎに中継で生出演したのがテレビ東京系の「池上彰の報道特番」だ。司会の池上彰氏から「4年間、当然任期を全うなさるおつもりなんでしょうね」と振られた小池は、こうはぐらかした。
「あのう、きょう(5日)都知事に改めて選んでいただいたばかりでございます。都知事としての仕事を重ねていきたいと考えています」
 池上が「4年間の任期を全うされると約束されますか?」と重ねても、「あのう、自分自身の健康をしっかり守っていきたいと考えています」とお茶を濁した。そう、女帝が都政にしっかりと向き合うなんて誰も思っちゃいないのだ。
 政治ジャーナリストの角谷浩一氏は言う。
「1期目の小池知事は何をやってきたか。対立する自民党を追い込み、都議会をコントロールするために、17年の都議選に向けて都民ファーストの会を立ち上げて圧勝。直後の衆院選で希望の党を立ち上げ、華々しく国政復帰を果たそうとした。あの時は失敗しましたが、小池知事はあきらめていない。遅くとも1年4カ月以内に実施される次の衆院選がターニングポイントになるでしょう」
 小池と近く、自民党推薦も検討していた二階の周辺は「小池さんが二階派に入れば一躍、首相候補になる」と言い、都議会関係者からも「五輪中止なら、小池さんは来年夏の都議選前に国政復帰する」との声が上がる。こんな仰天シナリオも飛び交っている
「小池さんと日本維新の会の関係は悪くない上、維新推薦で出馬した小野氏は考え方も似通っています。小池さんが小野氏を副知事に登用し、解散・総選挙のタイミングで知事のイスを譲る。東西知事ポスト独占を狙う維新に貸しをつくり、衆院選でタッグを組んで野党を蹴散らかす。そうして自民党の牙城を切り崩し、女性初の総理を狙うのではないか」(永田町関係者)
 権力亡者に弄ばれる都政と都民。後悔しても時すでに遅しだ。