2020年11月18日水曜日

18- 種苗法改正案 衆院農水委で賛成多数で可決

 売国の法案というべき種苗法の改正案が、17日の衆議院農林水産委員会で賛成多数で可決されました近く衆議院本会議で可決され、参議院に送られる見通しということです。

 NHKは、「新しい品種として国に登録された果物などの種や苗木を海外へ無断で持ち出すことを規制する種苗法の改正案としていますがそれが主要な目的ではないことはこれまで関係者が警告してきた通りです。
 可決するに当たり、「農家に対して種や苗木が適正価格で安定的に供給されるよう施策を講じるなどとする付帯決議が付されました元々付帯決議には殆ど強制力はないので、それで事態が解決することはありません。それよりも与党議員たちは、そうした将来の価格高騰の惧れを知りながら通したわけで、一層犯罪的な行為ということができます。

 北海道農民連は前日の16日、札幌駅前で種苗法改定反対の緊急宣伝を行いました。しんぶん赤旗が報じました。
 東京新聞は「種苗法改正 不安の種を取り除け」とする社説を出しました。
 3つの記事を紹介します。
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種苗法改正案 衆院農水委で賛成多数で可決
                     NHK NEWS WEB 2020年11月17日
新しい品種として国に登録された果物などの種や苗木を海外へ無断で持ち出すことを規制する種苗法の改正案が、17日の衆議院農林水産委員会で賛成多数で可決されました。合わせて、農家に対して種や苗木が適正価格で安定的に供給されるよう施策を講じるなどとする付帯決議も可決されました。

種苗法の改正案は、新しい品種として国に登録された果物などの種や苗木が海外に流出するのを防ぐため、開発者が栽培地域を限定できるようにするほか、農家が種や苗を増やす際に開発者の許諾が必要になることなどが盛り込まれています。
17日の衆議院農林水産委員会では、一部の規定の施行期日を改める修正を行ったうえで、改正案の採決が行われ、賛成多数で可決されました。
合わせて付帯決議も可決され、改正によって、農家が新しい品種を利用しにくくならないように種や苗木が適正価格で安定的に供給されるような施策を講じることや、農家に対して制度見直しの内容について丁寧に説明することなどが盛り込まれました。
種苗法の改正案は、近く衆議院本会議で可決され、参議院に送られる見通しです。


営農・食文化 失う恐れ 種苗法改定案反対を訴え 北海道農民連
                       しんぶん赤旗 2020年11月17日
 農家の自家増殖を一律禁止する種苗法改定案を与党が17日の衆院農水委員会で採決しようとしているなか、北海道農民連は16日、札幌駅前で種苗法改定反対緊急宣伝をしました。改定案をめぐっては、農家の営みや食文化が失われかねないと反発の声が広がっています。

 「種苗法は日本の種を守っている法律」と富沢修一書記長。改定が食の安心安全を求める消費者の願いに反し、グローバル企業による種の独占に道を開き、安心安全、大切な食料を明け渡す危険性を指摘し、「一緒に反対の声を上げよう」と呼びかけました。
 当別町の農家、岸本辰彦副委員長は「企業による種の独占、農家の負担が増せば離農が増える。農家を守ることは地域を守ることになる」と強調。「農家も消費者も安心して暮らせるためにも反対を」と訴えました。

 駆け付けた日本共産党の畠山和也前衆院議員は、北海道の4割の自治体が慎重審議や反対意見書を可決しており、国の責任を「自家増殖禁止で農家に押し付けるのは筋違い」と批判。道の小麦や大豆の8~9割は「登録品種」で大きく悪影響を受けると警告し、「命の源の種を守っていこう」と力を込めました。
 若い男性3人組が手を伸ばしてビラを受け取り、「学術会議も種苗法も大事。頑張って」と激励しました。


社説 種苗法改正 不安の種を取り除け
                         東京新聞 2020年11月17日
 品種登録された農作物の“種取り”を禁ずる種苗法改正案が、衆院委員会で早々と採決される見通しだ。審議入りから一週間足らず。農家や消費者を置き去りにしたままの強行は許されない。
 現行の種苗法などでは、登録品種であっても、国内に限り稲などの種を自家採取したり、芋などの苗を自家増殖させて増やしていくことが認められている。ところが審議中の改正案では一律禁止され、違反すれば、個人には十年以下の懲役、または一千万円以下の罰金、農業生産法人には三億円以下の罰金が科されることになる。
 目的は開発者(育成者権者)の保護である。農林水産省の研究機関が開発した高級ブドウ、シャインマスカットが中国や韓国に流出し、安い値段で流通していることが契機になった。
 自家採取、自家増殖が禁止になれば、農家は毎年、大量の種や苗を買うか、開発者に許諾料を支払わなければならなくなる
 「登録品種は農産物全体の一割程度。都道府県の農業試験場など公的機関で作出された安価な種子などが多く、農家の経済的負担は限定的だ」という見方もある。
 しかし、農林水産省が五年前、全国の農業経営体を対象に実施した「自家増殖に関するアンケート」によると、登録品種の自家増殖をしていると答えた農家は52%に上る。また、北海道や青森県で作付けされる米の七割以上を登録品種が占めるという。
 農業競争力強化支援法は、民間の参入意欲を高めるためとして、自治体が持つ種苗生産のノウハウを民間に開放するよう求めており、それに基づいて、都道府県に米などの優良品種の開発を義務付けた主要農作物種子法を廃止した。公共の安価な種子がいつまでも手に入るという保証はない。
 現行の種苗法は既に、収穫物を許可なく海外に持ち出すことを禁じているが、法改正によって出元が特定しやすくなり、国外への流出防止効果は高まるだろう。ただ仮に、今より持ち出しにくくなるにしても、国内農業に与える影響を考えれば、妥当な方策か。意見が分かれるところだ。
 種子の購入量が増えることで、海外の種子メジャーによる市場支配が進み、農家が痛手を受けるのではという不安の声も多くある。
 農家を守るという法改正が、多くの農家にとって不安の種になっているという現状を直視して、さらに議論を尽くしてほしい