2020年11月7日土曜日

学術会議人事介入 任命拒否の「根拠」総崩れ(しんぶん赤旗)

  官房長官時代の菅氏は、官邸記者仲間では「鉄壁の菅」「安定の菅」といわれてそうですが、それは「批判は当たらない」「全く問題ない」などの門前払いを記者たちが甘受してきた結果であり、菅氏の弁舌の能力を評価したものではありませんでした。

 菅氏の答弁能力には早くから疑問符が付けられていました。本人も当然それを自覚しているので、予算委員会には官僚が事前に作成した想定問答集に水色の付箋ビッシリと貼ったものを手元に臨んだということですが、想定問答集には自ずから限度があります。

 議論の急所では、当人の能力で答弁するしかない場面が必ず生じますが、実際には碌に答弁も出来ずに実にお粗末なものでした。取り分け学術会議会員の任命拒否問題では、基本的事項について「イエスかノーか」(「A」か「非A」か)と迫られると答弁不能になるシーンが目立ちました。
 基本的に間違った任命拒否をしたのだから当然だともいえますが、そんなことも見通せなかったというのは政治家として「不明」のそしりを免れません。

 2日から6日までに4日間に渡り行われた衆・参両院の予算委員会の総括質問で暴露されたのは、二枚舌ゴマカシしどろもどろウソがウソを呼ぶ泥沼、弁明不能」、そして質問にまともに答えず、はぐらかすのが常套手段というのが菅首相だということでした。あれでは閣内でのリーダーシップなど望むべくもありません。

 共産党の志位委員長は4日の衆院予算委員会で、菅義偉首相による日本学術会議の会員任命拒否があらゆる点で違法・違憲であることを解き明かしたのに対して、菅首相はまともに答えられず、答弁書を棒読みしつづけるだけで、任命拒否の道理のなさが議論の余地なく明らかになり、菅首相が唱える「根拠」は総崩れになりました。無惨というしかありません。
 しんぶん赤旗の記事「学術会議人事介入 任命拒否の「根拠」総崩れ ~ 」と「~ 衆院予算委 志位委員長の質問」の二つの記事を紹介します。
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学術会議人事介入 任命拒否の「根拠」総崩れ
公務員の選定・罷免権は国民に 志位委員長が追及 衆院予算委
                        しんぶん赤旗 2020年11月5日
 日本共産党の志位和夫委員長は4日の衆院予算委員会で、菅義偉首相による日本学術会議の会員任命拒否があらゆる点で違法・違憲であることを解き明かしました。菅首相はまともに答えられず、答弁書を棒読みしつづけるだけ。任命拒否の道理のなさが議論の余地なく明らかになり、菅首相が唱える「根拠」は総崩れになりました。志位氏は「強権をもって異論を排斥する政治に未来はない」と厳しく批判しました。
 志位氏は、菅首相が任命拒否の理由について、「総合的、俯瞰(ふかん)的」「バランス」「多様性」などと説明したものの、50歳代前半の研究者、その大学からただ一人だけという研究者、女性研究者の任命を拒否するなど、言えば言うほど支離滅裂になっていることを指摘。法に規定されている会員の選考基準は「優れた研究又は業績」のある研究者の一点だけで「理由を明らかにしないままの任命拒否は、学術会議の独立性・自主性を根底から破壊する」とただしました。
 菅首相は「特定の大学に偏っている」などと再び支離滅裂な説明を繰り返しただけ。志位氏は「あまりに見苦しい態度だ」と厳しく批判しました。

 さらに、志位氏は、学術会議の政府からの独立性は、法の条文全体を通じて幾重にも保障され、1983年の法改定の際にも「形式的任命」「拒否しない」などと明確に答弁していることを指摘。国会審議でも、この法解釈を内閣法制局と「十分に詰めた」と答弁していることをあげ、「現在、この法解釈を維持しているのか」とただしました。
 菅首相は答弁に立てず、加藤勝信官房長官が代わって「推薦された方々をそのまま任命しなければならないということではないというのが、内閣法制局の確認をえた政府としての一貫した考えだ」などとはぐらかしました。志位氏は、法解釈を維持しているか答えないが、まぎれもない解釈変更だと指摘。国会で確定した法解釈に反する任命拒否は法律違反だと批判しました。
 さらに、志位氏が「内閣法制局の了解を得たのはいつか」と聞くと、井上信治科学技術担当相は「18年11月15日だ」と述べ、わずか2年前に決めたことが明らかになりました。志位氏は「2年前にこっそり決めて、国会で説明されたわけでもない。学術会議にも知らされなかった」「クーデター的な法解釈の改ざんというほかない」と批判しました。
 志位氏は、憲法15条1項を持ちだした菅首相の任命拒否合理化論も成り立たないことを指摘。憲法15条は公務員の選定・罷免権が主権者・国民にあることを規定したもので、その具体化は国民を代表する国会が法で定めることになっており、法に反した任命こそ憲法15条違反となることを解き明かし、「公務員の選定・罷免権をあたかも首相にあるかのごとく条項を読み替えるのは、首相が主権者である国民から公務員の選定・罷免権を簒奪(さんだつ=資格のない者が権限を奪い取ること)する暴挙だ」と批判しました。
 そのうえで、志位氏は、違法な任命拒否によって、学問の世界に萎縮や自主規制が広がるなど、憲法23条が保障した「学問の自由」が侵害される事態が具体的に進行していることを告発。戦前、学問の自由が剥奪され、科学者が戦争遂行のための軍事研究に総動員された歴史や、670もの幅広い団体が任命拒否の抗議声明を出していることをあげ、「日本国民全体にとっての大問題だ」とただしました。
 菅首相は「任命しなかったこととは関係ない」などと強弁。志位氏は、強権で異論を排斥する菅首相の政治手法を厳しく批判し、「違憲・違法の任命拒否は撤回すべきだ」と述べました。


学術会議介入 首相を追及 強権政治に未来はない 違憲・違法 はっきり
衆院予算委 志位委員長の質問
                        しんぶん赤旗 2020年11月5日
 「任命拒否は、日本学術会議法に照らして許されるのか」―。4日の衆院予算委員会で日本共産党の志位和夫委員長は、菅義偉首相が日本学術会議会員を任命拒否した問題を追及し、任命拒否の理由はなく、学術会議法にも憲法にも違反することを明らかにしました。任命拒否の根拠は総崩れとなりました。

志位「『多様性』言うが、結果はことごとく矛盾」
首相「全体見れば偏り」
志位「改善の努力 全くみない」
 志位氏はまず、なぜ6人の任命を拒否したのか追及し、正当な理由がないことを浮き彫りにしました。
 志位氏は、当初、学術会議の「総合的・俯瞰(ふかん)的活動を確保する観点」だと言うだけだった菅義偉首相に対し、「世論調査で国民の6~7割が『説明不足』と答えている。理由を示さず、政府が異論を排斥しているのではないかという点に、国民の不安と批判が高まっている」と指摘。「6人を任命すると、学術会議の総合的・俯瞰的活動に支障をきたすという認識なのか」とただしました。
 菅首相は正面から答えず、会員選考が「閉鎖的」で「既得権益」のようになっていると居直りました。
 志位氏は「新会員は、会員・新会員の推薦だけでなく、協力学術研究団体の情報提供をもとに選考されており、『閉鎖的』というのは事実に反する。『既得権益』というのも、給与ゼロで、研究・教育の時間を削って科学の成果を社会に還元しようと頑張っている科学者に対し、敬意を欠いた失礼な発言だ。何より任命拒否と別問題の論点のすり替えだ」と批判しました。
 さらに、菅首相が会員の出身大学や年齢、性別など学術会議の構成を問題視し始めたことについて、「なぜ50代前半の研究者、その大学から1人だけの研究者、比重の増加が求められている女性研究者の任命を拒否したのか。判断の結果がことごとく矛盾する」と強調。“バランス”や“多様性”が大事だとも言う首相に対し、「学術会議は、首相に言われるまでもなく、会員の推薦にあたり多様性に配慮している」と述べ、2005年と20年の会員構成の比較(表)を示しました。

 その上で、「15年のスパン(期間)で見れば『多様性』の点で明らかな改善の努力がはかられている。『総合的・俯瞰的』『多様性』は、どれも任命拒否の理由にはなりえない」と厳しく指摘。「そういう努力は承知している」としつつ、「全体から見たら偏っている」と強弁した菅首相に対し、「改善の努力を全くみない難癖だ」と批判しました。
 志位氏は、大西隆、広渡清吾の両学術会議元会長(ともに東京大学名誉教授)が、任命拒否の理由が分からないと「今後、どのように新会員を選ぶべきか分からなくなる」「政治的な理由で拒否されたのであれば、次の選考で法案に反対したかどうかの判断をするかもしれない」と指摘したことを紹介。「この批判にどうこたえるのか」と迫りました。
 菅首相は「個々人の任命理由は答えるべきでない」と述べるだけ。志位氏は「自ら引き起こした混乱への自覚も反省もない。理由を明らかにしないままの任命拒否は、学術会議の独立性、自主性を根底から破壊する」と批判しました。

志位「解釈改ざんは2年前」
担当相「解釈変更ではない」
志位「クーデター的改ざんだ」
 志位氏は、菅政権が日本学術会議法に関する1983年の政府解釈を「維持する」と明言しないもとで、「83年の国会審議で確定した法解釈に反する任命拒否は違法行為だ」と強調しました。
 志位氏は、吉田茂首相が49年に「高度の自主性が与えられている」としたのと同様に、菅首相が高度の自主性を認めるかを質問。菅首相は「発言は承知」と述べるだけでした。
 さらに志位氏は、83年の法改定で争点になった、学術会議の独立性や学問の自由が損なわれないかという質疑に対する政府の答弁を紹介しました。
 「政府が行うのは形式的任命にすぎません」(中曽根康弘首相)、「実質的に総理大臣の任命で会員の任命を左右するということは考えておりません」(手塚康夫政府委員)、「学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない」(丹羽兵助総務長官)と挙げ、「政府はこれを維持しているのか」とただしました。
 加藤勝信官房長官は、「考え方を確認している」と述べながら「推薦された方々をそのまま任命しなければならないということではないという点は、従前から一貫した考えだ。解釈変更ではない」などと強弁。志位氏は「聞いたのは法解釈を維持しているかどうかだ」と述べ、「維持すると言わないのであれば法治国家ではなくなる。法の安定性がなくなり、国会の質疑が意味をなさなくなる」と批判しました。
 さらに、同年の国会で政府が「(推薦のとおり)内閣総理大臣が形式的な発令行為を行う。内閣法制局における法律案の審査のときに十分に詰めた」としたことを挙げました。「解釈変更ではないというなら、この法解釈は変わっていないか」と問いつめました。
 加藤官房長官が同じ答弁を繰り返したのに対し、志位氏は「法制局が詰めた解釈を維持するのか答えない。まぎれもなく解釈変更だ。明らかに法律違反で重大だ」と強調しました。
                    
 志位氏はまた、政府が繰り返す「必ず推薦の通り任命しなければならないわけではない」という解釈について「内閣法制局の了解を得たのはいつか」と追及。井上信治科学技術担当相が「平成30年(2018年)11月15日」と述べたのに対し、「一貫した解釈と言うが2年前ではないか」と指摘しました。
 内閣府が内閣法制局に対して推薦通りに任命する義務があるかを相談した18年の「応接録」を示し、「『推薦の通りに任命すべき義務があるとまでは言えない』という理屈をつくったのはこの時ではないか」と追及。井上担当相が「改めて確認したもので、解釈変更を行ったものではない」と強弁したのに対し、志位氏は、「改めてというが、(解釈が)はっきりしないから相談したものだ。改めてではない」と反論。しかも、国会にも学術会議にも知らせず決めたものだと批判しました。
 その上で志位氏は、国会審議でも確定した法解釈を、国民にも学術会議にも隠れて覆したのが18年11月15日だと述べ、「国会答弁で示してきた法解釈を内閣の一存で勝手に変えるクーデター的な法解釈の改ざんだ。国会審議が意味をなさなくなる」と迫りました。
 また、菅首相が憲法15条1項を持ち出して、介入の正当化を図っていることについて、主権者である国民から公務員の選定・罷免権を奪う暴挙だと批判。「独裁政治に道を開く法解釈は断じて認められない」と述べ、「任命拒否が違憲・違法であることはもはや議論の余地はない」と訴えました。

志位「軍事研究への総動員くり返すな」
首相 任命拒否と「関係ない」
志位「歴史の反省ふまえたものだ」
 志位氏の代表質問(10月29日)に、任命拒否が憲法23条で保障された学問の自由の侵害になると「考えていない」と答弁した菅首相。志位氏は、現実に起きている実態や歴史を踏まえ、「学問の自由の侵害だ」と追及しました。
 志位氏は、任命拒否された教授だけでなく、指導を受けている学生にも誹謗(ひぼう)中傷が向けられ、学問の現場で萎縮や自主規制が起きており「現実に学問の自由が脅かされている」と指摘。誹謗中傷などが「あってはならない」という菅首相に、志位氏は「やってはならないことをやったからこういう事態が起きている」と批判しました。

 志位氏は、日本学術会議の前身として戦前設立された「学術研究会議」が、独立性を奪われ、同会議に「国民総武装兵器」などの特別委員会が設置(パネル上)されたと紹介。科学者が戦争遂行のための軍事研究に総動員された経緯を指摘し、「このような歴史は二度と繰り返してはならない」とただしました。
 「任命しなかったこととは関係がない」と居直る菅首相に対し、志位氏は、日本学術会議設立の際の決意表明(パネル下)を示し、「日本学術会議が政府から高度の独立性が保障されたのは戦前の学術研究会議が独立性を剥奪され、政府の御用機関とされた歴史の反省を踏まえたものだった」と指摘。任命拒否が「独立性の破壊という点で、過去の誤った道を繰り返すものではないか」と追及しました。
 「まったく(そう)考えていない」と開き直る菅首相。志位氏は、学術会議が3度にわたり軍事目的のための科学研究に反対する声明を発表したことにふれ、「科学の軍事利用への反省という原点に立った当然の声明だ」と語りました。

志位「670団体が抗議 学問・表現・言論・信教の自由侵害にも―と声」
首相「全く関係がない」
志位「撤回強く求める」
 志位氏は、首相による6人の任命拒否に対して、670もの学協会や大学・大学人をはじめ、消費者団体、演劇人、作家、ジャーナリストなど、幅広い団体が抗議声明を出していると指摘。映画人有志、生長の家、環境団体(日本自然保護協会、日本野鳥の会、世界自然保護基金ジャパン)の抗議声明を詳しく紹介し、「多くの方々が、学問の自由の侵害のみならず、表現の自由、言論の自由、信教の自由の侵害につながり、環境保護の運動にとっても重大問題だと声をあげている」と迫りました。
 菅首相は、任命拒否と表現の自由、学問の自由は「全く関係がない」と述べ、抗議の声に背を向けました。
 志位氏は、「最高権力者が『意に沿わないものは理由なく切る』と言い出したら、国中にその空気が広がる。それは着実に全体主義国家への階段を上っていく」とした山極寿一前京都大学総長(前学術会議会長)の発言を紹介。菅首相は、人事をテコに霞が関を恐怖支配のもとに置き、恫喝(どうかつ)と懐柔を織り交ぜ、メディア支配を強め、科学者までも支配下に置こうとしていると告発し「強権をもって異論を排斥する政治に決して未来はない」として、任命拒否の撤回を強く求めました。