2020年11月22日日曜日

「Go To見直し」を3連休まで引っ張った菅政権(LITERA)

 21日の新型コロナの新規感染者数(全国)は2596人/日で、直近の5日間は連日過去最大を更新し続け(第2波の最大は8月7日の1595人/日)、累計は13万人を突破しました。そのうち東京都も、21日は539人/日と過去最大(第2波の最大は8月1日の472人/日)で、累計は3万7317人に達しました。

 政府は21日夕方、ようやく感染拡大地域を目的地とする「Go Toトラベル」の新規予約一時停止Go Toイート」の運用見直しを発表しまし3連休の初日に入ってからにしたのは、秋の大移動に支障がないようにしたものと見られます。
 今後、措置が必要な地域やその開始時期、予約された旅行のキャンセル料の扱いなどについて検討を急ぐと共に、国民には3密の回避やマスク着用などの基本的な感染対策の徹底を更に強く呼びかけるということです。何とも悠長な話です。

 菅政権はこれまでことあるごとに「『Go Toトラベル』が感染拡大の主要な要因であるとのエビデンス(証拠)は現在のところ存在しない」という論法を用いてきました。それをここにきてを引っ込めたのは元々が無理な主張だったからで、社会的事象の因果関係はそれなりにキチンと(社会実験などを含めて)対応しないことには得られません。
 それを見越した上でそんな主張をするのはフェアではなく、逆に推進する側が「Go Toトラベルが感染拡大の要因でない」エビデンスを挙げるのが筋であると自覚すべきです。この3連休の大移動は社会実験に相当するとも見做せます。その意味でも2~3週間後の感染拡大がどうなっているかが注目されます。

 感染拡大防止と経済活動の両立の必要性は言うまでもないことで、それを実現することこそが政府の力量といえます。
 第1波から第2波を経ていま第3波を迎えていますが、安倍・菅政権は、台湾や韓国・中国のような対策を何もやって来ませんでした。やったのはそれとは真逆のGo To』をフライングで進めたというのが実態です。
 政治評論家の野上忠興氏は、「国民の命と健康と財産を守ることが政治の要諦。ところが株価維持に何兆円も投入しながら、コロナ対策では予備費があるのに使わない。両立できないのにGo Toを中途半端に引っ張り続けるのは、1年以内に行われる総選挙に向けて、自民党の支持基盤を意識しているから菅首相も自身の権力維持しか頭にない」(要旨・日刊ゲンダイ)と述べています。
 LITERAの記事を紹介します。
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菅首相が「Go To見直し」を3連休まで引っ張ったのはキャンセル料を補填しないためか! キャンセルで損する制度が感染を拡大させる
                             LITERA 2020.11.21
 あまりにも遅すぎるとしか言いようがない。本日夕方におこなわれた政府の新型コロナ対策本部で、菅義偉首相が感染拡大地域を目的地とする「Go Toトラベル」の新規予約を一時停止、「Go Toイート」の運用見直しを発表した件だ。
 しかも、肝心の「感染拡大地域」がどこなのか、一時停止はいつからおこなうのかといった具体的な説明はまったくおこなわれずじまい。その上、今回の発表は感染拡大地域を「目的地」とするのを一時停止の対象としているが、これでは東京都といった感染拡大地域を「出発地」する「Go To」はOKとなってしまうではないか。
 さらに、政府は相変わらず「Go Toトラベル』が感染拡大の主要な要因であるとのエビデンスは現在のところ存在しない」などと言い張っているが、「Go To」由来の感染者かどうか実態を把握できるような体制はまったく取られておらず、政府はハナから「エビデンス」を得ようとなどしていない。しかも、厚労省の新型コロナ対策アドバイザリーボードによる「一般的には人々の移動が感染拡大に影響すると考えられている」という評価は、尾身茂・分科会会長も昨日の会見で認めた「事実」だ。
 ようするに、菅首相は「エビデンスは存在しない」と言い訳できる設計にした上で、新規感染者数が過去最多を更新しつづけているなかでも平然と「人々の移動」を促してきたのだ。
 そして、もうすでに3連休がはじまってしまってからの「新規予約の一時停止」である。
 あらためて指摘するまでもなく「第1波」の感染拡大では、専門家は3月20〜22日の3連休が「都市部から地方への人の移動」を引き起こし「全国に感染を拡大させた」と指摘した。この「第3波」の到来で最大に警戒すべきなのが「11月の3連休」であることは当然の話だったのだ。
 にもかかわらず、「Go To」の見直しを野党から要求されても菅首相はこれを無視。北海道の感染拡大を受けても「Go Toトラベル」からの北海道除外をおこなわず、11月5日の時点ですでに道内の感染経路不明者は6割以上にものぼりクラスター対策が追いつかない状況に陥っていたにもかかわらず、菅首相は10日、「いままでよりも踏み込んだクラスター対応を実施する」などと言って北海道の「Go To」継続を表明した。
 もし、この時点で感染拡大地域での「Go To」停止を表明していれば、3連休の人の動きがもっと抑制的なものになっていたのは間違いない(それでも遅いことは遅いが)。しかし、菅首相のやったことは逆。11月の3連休が危険だとわかっていながらブレーキをかけることを怠り、Go To」継続の表明で国民が危機感を持てないような空気をつくり出してしまった

キャンセルすると逆に損になるGo Toの仕組み、いまさらキャンセルできない3連休の初日まで見直しを引っ張った菅首相
 実際、3連休の初日となったきょう、各地の高速道路や新幹線、羽田空港は行楽地へ向かう人々でごった返した。これこそ、菅政権の「Go To」強行と見直しの遅れが国民から危機感を奪った結果だ。
 いや、それどころか、菅政権のやり方をみていると、むしろ意図的にこういう状態をつくり出そうとしたのかもしれない。
 多くの国民が「Go To」を使おうとしていたのはこの3連休であり、もし3連休前に「Go To」見直しを打ち出せば、東京除外のときのようにキャンセル料を補填する必要が出てくる。そこで、3連休の初日まで見直しの表明を引っ張り、その内容も3連休の旅行にはまったく影響しない「新規予約の一時停止」というかたちにしたのではないか。
 つまり、キャンセル料を補填したくないから、「Go To」見直しを遅らせ、その内容を曖昧にしたというわけだ。
 しかし、キャンセル料が補填されないなら、専門家がいくら警告しても多くの人は旅行を行くのを止めることはない。なぜなら、「Go Toトラベル」を予約した人が旅行を直前にキャンセルした場合、キャンセル料は予約者にかかる上、Go To割引分が適用されない“通常料金”(割引前の旅行代金)でのキャンセルとなる。つまり「お得」なつもりがキャンセルすると「損」をしてしまう設計になっているからだ。

 しかも、菅政権はいまだキャンセル料の取り扱いについて何もはっきりした方針を打ち出していないため、今後も「Go To」で予約済みの国民の多くは「キャンセルしたら逆に損になるかも」「それならば利用しよう」と旅行を強行するだろう。そうなれば、仮に後で補填することになったとしても、キャンセル件数は少なくなっているため、政府のキャンセル料補填金額は小さくなる。
 菅首相がここまで「Go To」見直しを打ち出さなかった理由については、来日していた国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長に“東京オリンピック開催への悪印象を残しかねないため”だと報じられていた。それもあっただろうが、こうしてみると「Go To」キャンセル料補填をケチることがいちばんの目的だった可能性が高い。
 しかし、そのキャンセル料をケチったことが、何を引き起こすのか、菅首相はわかっているのか。多くの専門家が指摘しているように、この連休の人出によって感染拡大は危機的状況になるのは確実なのだ。まさに菅首相が国民の健康や生命などどうでもいいと考えている証拠だろう。

それでも会見を開かない菅首相の姿勢に御用新聞の産経新聞までが批判
 だが、さらに絶句させられたのは、菅首相が本日、記者会見をおこなうこともなく、ぶら下がり取材で済ませたことだろう。
 新規感染者数が過去最多を更新しつづけても、2000人の大台を超えても、菅首相はいまだに一度も新型コロナ対応にかんする記者会見をおこなっていない。これには政権擁護の御用メディアである産経新聞でさえ、「首相、感染拡大でも記者会見開かず」と批判的な記事を掲載したほどだ。
 しかし、それでも菅首相はきょうも会見をおこなわなかった。そればかりか、本日おこなったぶら下がり取材で「国民のみなさんにさらにお願いをさせていただきたい」と言って打ち出したのは、相変わらず「会食の際のマスク着用」「手洗い」「3密回避」だった。
 その上、記者から「タイミングは遅くはなかったですか?」「『Go To』の一時停止はいつからどこで始まるんですか?」という質問が飛んだのに、それを無視して立ち去ったのだ。
 コロナ対応でアベノマスクを打ち出し、その「無為無策」っぷりを露呈させた安倍晋三・前首相の会見は、「空前絶後」「一気呵成」「不屈の覚悟」「日本全体が一丸」だの威勢ばかりがいいだけの空疎な言葉が並ぶという、とても褒められたものではなかった。しかし、その安倍首相を継承した菅首相は、会見自体をおこなわないというありえない手に出た。しかも、菅首相は「Go To」推奨という感染拡大防止の逆をゆく「恣意的な判断」を強行し、いまなお「自助」を国民に押し付けている。3連休のあと、一体この国の状況はどんな事態に陥るのか。ただただ恐怖しかないだろう。 (編集部)