200年前の11月28日、科学的社会主義の創始者の一人であるフリードリヒ・エングルスが生れました。28日は、生誕200年記念日です。
しんぶん赤旗の「文化の話題」のコーナーに、牧野広義名誉教授の寄稿文、「エンゲルス生誕200年にあたって 科学的社会主義を創始 マルクス支え 理論的貢献」が載りました。
以下に紹介します。
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【文化の話題】
エンゲルス生誕200年にあたって
科学的社会主義を創始 マルクス支え理論的貢献
しんぶん赤旗 2020年11月27日
牧野 広義 まきの・ひろよし
1948年生まれ。阪南大学名誉教授。『マルクスの哲学思想』「ヘーゲルの
論理学と矛盾・主体・自由』など多数
今年は、科学的社会主義の創始者の一人であるフリードリヒ・エングルス(1820年~1895年)の生誕20O年です。11月28日が彼の誕生日です。2018年のマルクス生誕200年に続いて、科学的社会主義の創始者たちの思想を学ぶよい機会です。
第一バイオリンと第二のハーモニー
エングルスは、マルクスを「第一バイオリン」にたとえ、自分を「第ニバイオリン」にたとえました。マルクスは科学的社会主義を創造する中心となった「第一バイオリン」です。マルクスの文章は厳密ですが、しかし難解です。それに比べて、エングルスの文章は平明です。エングルスはマルクスの思想形成に影響を与え、共同で思想を発展させ、経済的援助も行いました。この「第ニバイオリン」があってこそ「第一バイオリン」も本領を発揮できました。両者のハーモニーによって科学的社会主義が創造され普及したのです。
エングルスはドイツの資本家の息子として生まれながら、父親の工場があったドイツやイギリスの労働者の状態に強い関心をもちました。彼は、マルクスに先行して古典派経済学の批判的研究も行いました。
彼の『イギリスにおける労働者階級の状態』(1845年)もマルクスに大きな影響を与えました。エングルスはこの本で、労働者階級の状態がすべての社会運動の出発点であるととらえて、当時のイギリスの労働者の悲惨な状態を告発するとともに、労働者の抵抗とたたかいを論じました。
マルクスとエングルスとは、相互の思想の一致を確認したのちに、歴史の発展を労働の発展からとらえ、階級闘争によって社会が発展するという理論(史的唯物論)の研究を行いました。そしてこの理論をもとにして『共産党宣言』(1848年)を作成しました。これは科学的社会主義の代表的な古典の一つです。「万国の労働者、団結せよ」という呼ぴかけは今も世界中で生きています。
1848年~49年の革命運動とそれへの弾圧ののちベマルクスはドイツからイギリスのロンドンに亡命し、エングルスは同マンチェスターで父親の工場の経営を行いました。マルクスは貧困と病気に悩まされながち『資本論 ― 経済学批判』の研究を続けました。この研究が可能になったのは、エングルスが19年にわたってマルクスに送金を続け、物心両面の献身的援助を行ったからです。
資本主義の変革へ「多数者革命」理論
エングルスは1869年に49歳で経営者の仕事を終え、理論研究を再開し、労喬運動の指導などを行いました。そして1883年にマルクスが死去したのちは、マルクスが残した『資本論』第2部、第3部の草稿を解読し編集して、出版にこぎつけました。マルクスの膨大な仕事はこうして日の目を見たのです。
エングルスは、マルクスが「科学的社会主義の入門書」として推薦する本を出版しました。それは『空想から科学への社会主義の発展』(1880年)です。彼は、マルクスによる「史的唯物論」と「剰余価値」(資本による労働の搾取のしくみ)の発見によって、「社会主義は科学になった」と述べました。また、科学的な「ものの見方・考え方」である唯物論と弁証法(現存するものを生成・発展・消滅においてとらえる方法)を『フォイエルバッパ論』(1886年)でわかりやすく論じました。
エングルスは知識欲が旺盛な人でした。彼は当時、論争の的であったダーウィンの進化論を支持して「労働が人間を創造した」と主張しました。しかし文明の発展のなかで、人間は自然を支配し森林破壊なども行いました。これに対してエングルスは「自然は人間に復讐する」と言いました。これは現代の環境破壊への警告にもなっています。
そしてエングルスの革命論があります。彼はマルクスとともに資本主義の変革のために多数の労働者がみずから革命の意義を理解し、みずから実践に立ち上がるという「多数者革命」の理論を提唱しました。以上のようなエングルスの思想を大いに学びたいものです。