2020年11月3日火曜日

菅政権に大打撃「都構想」否決は自公維“蜜月”崩壊の序章(日刊ゲンダイ)

  菅首相は官房長官になる以前から松井一郎氏ときわめて親しく、維新の会と“蜜月”の関係にありました。その加えて公明党との窓口役も務めていました。

 11月1日の大阪市住民投票で「大阪都構想」に対する2度目の「ノー」突き付けられました。これによって都構想が『一丁目一番地』だと強調していた「維新が勢いを失うのは明らかで、「維新」には、頼りにしていた公明党支持者からの圧倒的な支持も得られなかったという不満も残りました。
 そもそも大阪府の自民党の意向と正面から対立する「都構想」を、菅氏が裏から支えていたことは当然大阪府の自民党にとって面白くないことでした。
 勢いのある維新と気脈を通じていることと公明党から信頼されていることが力の源泉のひとつだった菅首相にとって、こうして自公維にひび割れを生じさせ、維新の勢いを喪失させることになったのは大打撃でした。

 かつて維新の会が登場したときには、メディアは一斉に「第3勢力」と囃し立てましたが、所詮は自民党の補完勢力に過ぎなかったので当時の勢いは急速になくなりました。それがコロナ禍でにわかにメディが吉村大阪府知事をもて囃すようになったのをチャンスとばかりに住民投票に打って出たのでしたが、何もメリットのない「都構想」が潰されたことは大阪市民に取って幸いなことでした。その後の経過で吉村知事へのコロナ禍取り組みに対する国民の評価も大いに低まりました。
 大阪住民の幸せがわが身の不幸ということでは、「存在の不健全さ」を証明する以外のものではありません。
 日刊ゲンダイが「菅政権に大打撃!『都構想』否決は自公維“蜜月”崩壊の序章」とする記事を出しました。
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菅政権に大打撃!「都構想」否決は自公維“蜜月”崩壊の序章
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 大阪市民が2度目の「ノー」を突き付けた。大阪維新の会がゴリ押ししてきた「大阪都構想」の賛否を問う住民投票は1日、反対多数で決着。これで維新が勢いを失うのは間違いない。維新と“蜜月”だった菅政権も大打撃だ。
 大阪維新の会代表の松井一郎大阪市長は、大勢判明後の会見で「(市民が)悩みに悩むような問題を提起できたことは政治家冥利に尽きる」などと敗戦の弁を垂れた。己の進退を懸けた住民投票は、なりふり構わぬ総力戦だった。
 投票日前日の31日、大阪市内を訪れた日刊ゲンダイ記者が目の当たりにしたのは、反対派の説明を「デマ」とコキ下ろす維新陣営の街宣車だ。アメリカ村の三角公園前での「まちかど説明会」でも、吉村洋文府知事と松井市長は「反対派がガンガン、デマを広げている」と強調。公園内に集まった約500人の聴衆の最前列では、「吉村ファン」とおぼしき女性支持者らが何度も手を振っていた。
 フタを開けてみれば、コロナ禍で上がった「吉村人気」もむなしく、市民から再び「ノー」を突き付けられた。維新は次期衆院選に全国で70人程度の候補者を擁立するシナリオを描いていたが、完全に出はなをくじかれた格好だ。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう言う。
「維新が『大阪都構想』以外に全国政党として何をやっているのか、有権者には見えづらい。『一丁目一番地』が再び否定され、これから別の看板政策を打ち出していかないと、国政での存在感はどんどん薄くなるでしょう。求心力の低下は避けられません
 その上、敗北を受け、松井市長は任期満了となる2023年4月での市長退任と政界引退を表明。党の顔を失う事態に、存続を危ぶむ声すら出ている始末だ。

補完勢力が弱体化
 ダメージは維新にとどまらない。前回反対から賛成へと回った公明は、支持者を賛成と反対に二分してしまった。しかも、この先、自民党府連からは「裏切り者」、維新からは公明票が動かなかったことを理由に「戦犯」「運動不足」と批判されてもおかしくない。自民、公明、維新の三者が、三つ巴の“ケンカ”を始める可能性がある。国政で公明と維新の協力をアテにしている菅政権にとって大打撃だろう。勢いのある維新と気脈を通じていることが、菅首相の力の源泉のひとつだからだ。

「菅政権では自民、公明、維新の『トライアングル』が、政権運営における安定のカギを握っています。ところが、都構想が否決されたことで、維新が、大阪の公明現職の4選挙区に、対立候補を立てないとも限りません。加えて、都構想反対派の自民党府連が勢いをつけ、大阪で維新とますます対立する可能性もあります。菅政権は国政レベルで維新の協力を期待していたはずです。政権基盤にひずみが生じかねません」(鈴木哲夫氏)
 政権の補完勢力である維新の弱体化は、菅首相の「トライアングル」崩壊の序章かもしれない。