2020年11月2日月曜日

「大阪都構想」再び否決 松井大阪市長 任期全うし政界引退へ

  大阪市を廃止して4つの特別区に再編する大阪都構想の是非を問う住民投票が1日行われ、約1万7千票の僅差で否決されました。維新の会側の虚偽に満ちたメリットだけを強調する大宣伝にもかかわらず、大阪市民がそれを否決し、取り返しのつかない事態になるのを回避できたのは喜ばしいことです。

 10年がかりで目指した大阪都構想」が2回とも否決されたのを受けて、日本維新の会と大阪維新の会の代表を務める松井市長は、2年半残る任期を全うして、政界を引退する意向を表明しました。また大阪維新の会の代表代行を務める大阪府の吉村知事は「1丁目1番地の都構想が否決された。重く受け止め、僕自身が都構想に再挑戦することはない」と述べるにとどめ、次期も知事を目指すかは任期が終わる23年4月の時点で考えたいとしました。
 NHKと毎日新聞の記事を紹介します。
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「大阪都構想」再び否決 松井大阪市長 任期全うし政界引退へ
                      NHK NEWS WEB 2020年11月2日
大阪市を廃止して4つの特別区に再編するいわゆる「大阪都構想」は、1日の住民投票で、5年前に続いて再び否決されました。日本維新の会と大阪維新の会の代表を務める松井市長は、「けじめをつけなければならない」と述べ、2年半残る任期を全うして、政界を引退する意向を表明しました。
「大阪都構想」の賛否を問う住民投票の結果です。
   ▽「反対」69万2996票。
   ▽「賛成」67万5829票。
反対多数で「都構想」は否決されました。

今回の住民投票では、大阪市の有権者、220万人余りを対象に、5年後、令和7年の1月1日に政令指定都市の大阪市を廃止して4つの特別区に再編することの賛否が問われました。
賛成派の大阪維新の会と公明党は、「大阪市を廃止して、府と市の二重行政を解消し、大阪全体の成長につなげるべきだ」と訴えました。
一方、反対派の自民党や共産党などは、「大阪市をなくせば、大阪の都市力や、住民サービスの低下につながる」と主張し、激しい論戦が繰り広げられました。
その結果、「都構想」への賛同は、大阪維新の会の支持層以外には大きく広がらず、5年前に続いて再び否決され、今後も、大阪市が存続することになりました。
「都構想」を推進してきた日本維新の会と大阪維新の会の代表を務める松井市長は記者会見し、「大阪維新の会の先頭で旗を振ってきた。僕自身、政治家としてけじめはつけなければならない」と述べ、令和5年4月までの任期を全うしたうえで、次の市長選挙には立候補せず、政界を引退する意向を表明しました。
また、大阪維新の会の代表代行を務める大阪府の吉村知事は「1丁目1番地の都構想が否決された。重く受け止め、僕自身が都構想に再挑戦することはない」と述べました。
維新の会にとっては、看板政策とも言える「大阪都構想」が2度にわたって否決された上、結党当時から、中心メンバーとして党を率いてきた松井氏が政界引退の意向を表明したことで、ダメージは避けられない情勢です。


大阪都構想反対多数
「生活守る現状維持選んだ」「自治のあり方は議論継続を」
                          毎日新聞 2020年11月1日
市民は住民サービス保障に疑念  新川達郎・同志社大大学院教授(地方自治)の話
 大阪維新の会が都構想を提唱して以降、大阪府市は連携して政策を推進してきた。だが、この関係を恒久的に制度化しようとした際、介護保険や上下水道、消防など、住民に身近なサービスが特別区移行後も保障されるのかと疑念が膨らんだのではないか。その上で政令市の大阪市が持っていた権限と財源を捨ててまでのメリットは無いと判断したのだろう。一方、都市部でも少子高齢化に伴う財源不足は深刻化する。都構想が否決されたから現状維持でよいとは思わず、自治のあり方は議論し続けねばならない。

利害得失が見えず踏みとどまった 金井利之・東大大学院教授(行政学)の話
  大阪府市が対立する「府市合わせ」を強調し改革効果をうたった大阪維新の会に住民は一定の評価をしつつ、「大阪都構想」での利害得失が見えず、生活を守る現状維持を選んだ。例えればリフォーム業者のうまい改築話に乗りかかったが、最後で実印を押すのを踏みとどまった。ただ、維新は知事と市長のポストを握っており、実質的に「大阪都政」が続く。今後も市域の福祉財源や用地などを活用し、万博やカジノなどの開発政策にまい進する。生活に余裕が無く市外へ転出もできぬ市民への施策が犠牲にならないか懸念する。

メリット一色の情報が不安を招いた ノンフィクションライターの松本創さんの話 
 メリット一色で公正さを欠いた大阪維新の会の情報発信に、住民はかえって不安を抱いた。大阪市という基礎自治体が四つの特別区に解体されるとなると、住民は自らの生活に影響が及ぶ。維新がいくら「改革」「成長」と訴えても、デメリットを冷静に考えられたのだろう。これで都構想は2回にわたり「NO」を突きつけられた。維新人気は続くだろうが、対立をあおり分断された大阪の10年を修復していくことが必要だ。中小企業支援や商店街振興など、生活に近い政治を地道に行い成果を築くべきだ。

近隣府県と連携し西日本の拠点に 堂本暁子・前千葉県知事の話
 今回の住民投票は、生活の基盤となる将来の行政制度を住民自らで選択するという重要な機会だった。人口減少の時代を迎えて自治体はどこも厳しさを増しており、時代を先取りした効率的な行政運営が求められる。特別区ではなくとも、現在の24行政区の機能を充実させて住民のニーズをくみ取りやすくするのも手だろう。都構想は否決されたが、東京一極集中是正のために地方分権の議論は今後も必要だ。兵庫や京都など近隣府県との連携も模索し、大阪は西日本の拠点となる都市づくりを進めてほしい