2020年11月13日金曜日

北海道で「感染爆発」?! なぜ / 政府は感染急拡大に真剣に対応せよ

  寒冷期に入った北海道では、急速に新型コロナ感染者数が増大し、1日当たりの感染者発生数は100人/日以上の段階を通り過ぎ、200人/日に近づき、12日にはついに236人/日に達しました。これは第1波ピークの約5倍、第2波ピークの約9倍です。しかもこの先どこまで増大するのか不明で、容易ならない事態です。

 本州以南はまだ本格的な寒期に入っていないので、北海道ほどではありませんが、もしも北海道並みの傾向を示すのであれば大変なことになります。
 全国、北海道、東京都、大阪府の1日当たり発生数の概要は下表のようです。
 東京都を除き既に第2波のピークを超えています。
                   新型コロナ感染者1日当たり発生数

 

区  

第1波 ピーク

第2波 ピーク

第3波 直近ピーク

 

全  

708(4/10)

1595 (8/7)

1643 (11/12)

 

  

45(4/5)

25  (8/8)

236 (11/12)

 

  

206(4/17)

472 (8/1)

393 (11/12)

 

  

92(4/9)

255 (8/7)

256 (11/11)

                   註 数字の単位は人/日(カッコ内は 時期で 月/日)

 また北海道の感染者発生状況の経過は下図のような具合です。
 詳細は東洋経済オンラインの図表https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/ をご参照ください。

                     北海道 新規感染者数発生状況図

     縦軸:人/日 (目盛最大 200人/日)  横軸:経過 (3月11日~11月11日)

 北海道新聞は記事のタイトルに「感染爆発」を付しました。まさにグラフを見るとそういう感じがします。
 記事から3人の学者との1問1答にもジャンプできるので興味のある方はご覧ください。
 しんぶん赤旗の主張を併せて紹介します。
            ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
道内「感染爆発」なぜ GoTo東京追加が拍車/ススキノで連鎖、市中へ
/ウイルス生存適した寒さ
                                                        北海道新聞 2020/11/11
 北海道はなぜ、新型コロナウイルスの感染者が連日100人以上増えるような状況になったのか。

 →<一問一答> 札幌医大・當瀬規嗣教授に聞く
 →<一問一答> 札幌医大・横田伸一教授に聞く
 →<一問一答> 道医療大・塚本容子教授に聞く

 「感染爆発」だと指摘する札幌医大の當瀬規嗣教授(細胞生理学)は、9月下旬の4連休に加え、政府が10月から観光支援事業「Go Toトラベル」の対象に東京発着の旅行を追加したことが「分岐点」になったとみる。
 「人が動けば感染する確率は、当然高まる。接待を伴う飲食店で感染が広がり、『エピセンター(震源地)化』していた札幌・ススキノに道外からの観光客が入り、感染拡大に拍車がかかった」
 感染対策と感染拡大は「シーソー」のようなものだという。対策が奏功して感染者が減れば人出が増え、再び感染拡大のリスクが高まる。「道内では9月ごろまではシーソーのバランスが取れていたが、10月からススキノなどで感染者が一気に増え、札幌市の対応能力が限界を迎えた。『Go To』による人の動きのインパクトが大きすぎて、(感染ルートを追跡する)疫学調査などが追いつかなくなった」と指摘する。
 こうした現状に対し、道と札幌市は7日から27日までの3週間、ススキノの接待を伴う飲食店などに午後10時以降の営業自粛を要請。鈴木直道知事は冬が本格的に到来する前のウイルスの封じ込めを狙う。
 ただ、當瀬教授はススキノ限定の対策は「非科学的」と批判する。既にススキノの範囲を超えて感染経路不明の市中感染が広がっている上、空気感染しない新型コロナウイルス対策で地域を限定することは意味がないとみるためだ。
 それなら今、どんな対策が必要なのか。當瀬教授はススキノの接待を伴う飲食店などに営業自粛を求めるとともに、道民にも2週間の外出自粛を要請することが必要だと提唱。「現状を考えれば『Go To』の停止も検討すべきだ」とも主張する。

 札幌医大の横田伸一教授(微生物学)も「結果論で言えば、ススキノでクラスターが多発していた時に拡大を抑えられれば良かったが、そのタイミングを捉えることは本当に難しい。今はススキノ対策だけでは対処しきれなくなっている」と指摘する。その上で、クラスターがススキノだけでなく、各種企業や学校、病院、高齢者施設にも広がっている現状を危惧する。
 ただ、横田教授は「外出自粛などは経済的影響が大きい。継続的に実施できる対策を考える必要がある」と指摘。人の行動を抑制しすぎれば反動が出かねないとし、「感染対策が不十分な人たちに照準を合わせ、きちんと対策してもらうよう地道に取り組むことが一番重要だ」と話す。

 一方、北海道医療大の塚本容子教授(感染管理学)は、最近の道内の感染者急増の理由は人の移動の増加ではなく、寒さと換気不足の影響が大きいと分析する。「8月のお盆時期にも人の移動は活発化したが、感染者数は大きく増えなかった。気温が下がってウイルスが生存しやすくなり、飛沫(ひまつ)が飛びやすい状況になったことが関係している」
 ススキノの接待を伴う飲食店でのクラスターの多発が、全道的な感染者急増の要因になったとの見方についても「ススキノから感染が広がったのではなく、若者全般に感染が広がっており、たまたまススキノで多くの感染者が確認されただけでは」と指摘。体力のある若い世代は感染しても無症状のケースが多いため、夏場から無症状者から無症状者へと感染が広がり、気温が下がって症状が出る人が増えてきた可能性があるとみる。

 道や札幌市の感染対策の遅れを指摘する声も強いが、塚本教授は「感染者を増やしたのは道や市ではなく、私たち自身。私たちがマスクを着用し、換気を欠かさないなどの対策を徹底すれば、感染者は必ず減る」と訴えている。(岩崎あんり)


主張 政府のコロナ対策 感染急拡大に真剣に対応せよ
                      しんぶん赤旗 2020年11月12日
 菅義偉首相が、新型コロナウイルス感染防止と経済活動での追加対策を盛り込んだ2020年度第3次補正予算案の編成を閣議で指示しました。コロナ感染者数は全国的に顕著に増加しており、事実上の「第3波」が始まったといえる状況です。しかし、菅政権が進めようとする追加策からは、国民の命と健康、暮らしを守り抜く方策がみえず、事態の深刻さに見合ったものとはいえません。感染の急拡大に対応するために従来のやり方を転換し、3次補正を待たずに、検査と医療の抜本的拡充、営業と雇用を支える制度を強化することが急務です。

3次補正を待つのでなく
 政府のコロナ感染症対策分科会が9日、いま適切な感染防止策を取らなければ「急速な感染拡大に至る可能性が高い」と警告したように、感染の広がりに対する緊急対応が焦眉の課題です。
 PCR検査体制の大幅な拡充による無症状者の把握・保護を含めた積極的検査への戦略的転換が強く求められています。自治体の独自の検査を「全額国庫負担」で支える仕組みも必要です。
 コロナ対応と患者減少で赤字を抱え疲弊している医療機関の危機を救うために国による減収補てんに踏み切ることも急がれます。感染者の発見・保護・追跡には保健所の体制強化が不可欠です。

 しかし、菅政権は、検査・医療・保健所体制の強化について新たに踏み込む方向を示しません。3次補正では、「コロナの感染拡大防止」を柱の一つにしていますが、検査体制の転換も医療機関への減収補てんも後ろ向きです。
 だいたい来年1月の通常国会に提出する予定の3次補正まで待っていられる感染状況ではありません。真剣にコロナ防止策を講じるというなら、基本的な姿勢を改めるべきです。
 暮らしの面でも、菅政権は国民の苦しみと向き合おうとしていません。いま国民が直面しているのは、事業と雇用の深刻な危機です。これから年末にかけて倒産・廃業・失業の急増が懸念され、「このままでは年が越せない」「事業を続けられない」という悲鳴が各地で上がっています。
 中小企業向けの持続化給付金を複数回支給することや、家賃支援給付金と休業支援金の拡充こそが切実な要求なのに、政府は正面から受け止めようとしていません。それどころか雇用調整助成金制度の特例措置の縮小などを検討しています。逆行は許されません。雇調金特例の延長・拡充を政府が表明することが求められます。
 20年度2次補正予算で10兆円も計上した予備費のうち、いまも7・3兆円の使途は決まっていません。政府は、検査・医療や暮らしの緊急対策を求める国民の声を受け止め、予備費をどう活用するのかを議論できるよう、速やかに国会に示すべきです。

直面する危機の打開こそ
 菅政権の追加対策で目立つのは、「コロナ後」に軸足を移した経済成長であり、デジタル化の推進などを柱にしています。しかし、いま最も急がれるのはコロナ感染拡大を抑止することであり、雇用や事業の危機を経済恐慌にしないための対策です。政府の支えを求める人たちに必要な支援が直ちに行き届く対策を行う政治への切り替えがいよいよ重要です。