2020年11月18日水曜日

東京新聞のシリーズ【新型コロナ再拡大】(1)~(3)

 米Googleによる数理モデルとA Iを使った今後28日間(11月15日〜12月12日)の予測によると、この間の日本の新規陽性者数は全国で5万3321人、新規死亡者数は512人にのぼるとのことです。国内の直近28日の陽性者数は2万6094人、死亡者数は229人なので、その倍近くになるいう試算です

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は9日夜、緊急提言をし、感染防止策の確実な実践など5つのアクションを提示しました。
 提言は、冬場に向かうことの危険性には言及しましたがPCR検査の拡充やGo To」キャンペーンへの言及はありませんでした。
 一方、青森県弘前市では、接待を伴う飲食店で複数の従業員が体調不良を訴え、保健所に何度か相談したにもかかわらず、軽症だからとしてPCR検査を行わなかった結果、180人以上のクラスターを発生させました。保健所のこの姿勢は糾弾に値し、厚労省や自治体が保健所をどのように指導しているのかが問われます。厚労省はクラスター対策を強調しますがいつも「後追い」の調査だけです。

 いずれにしてもまだまだ新型コロナ第3波の到来への体制は出来ていません。
 東京新聞が「新型コロナ再拡大」シリーズを始めました。

 註)
   アクション1 今までよりも踏み込んだクラスター対応
   アクション2 対話のある情報発信
   アクション3 店舗や職場などでの感染防止策の確実な実践
   アクション4 国際的な人の往来の再開に伴う取り組みの強化
   アクション5 感染対策検証のための遺伝子解析の推進
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<新型コロナ再拡大(1)>
「まるで第2波時の歌舞伎町」 夜の街のクラスターが家庭へ
                         東京新聞 2020年11月13日
 全国で新型コロナ感染者が急拡大している。医師や首長らは「第3波」到来を指摘している。現状を分析し、感染予防対策を追う。

◆10月は札幌市のクラスター半数がススキノ
 「(札幌の)ススキノでクラスターが多発し、若者の感染が広がり、家庭などに広がっている。東京の『第2波』のイメージ。新宿・歌舞伎町から広がったのと同じような雰囲気はあると思う」
 12日の新規感染者が過去最多の236人だった北海道の対策担当者はそう説明した。道内で11日までに発生したクラスターは100件で、札幌市が66件を占める。市内では10月に発生した21件のうち10件は接待を伴う飲食店でススキノが目立つ。
 11月に入ってからは、クラスターは市内全域で散発するようになった。11日までに発生した20件のうち接待を伴う飲食店は4件だけで、ほかは企業や学校、福祉施設などだった

◆医療機関でも…
 医療機関も3カ所で発生し、診療に影響が出る。看護師ら14人が感染した国立病院機構「北海道医療センター」は、新型コロナ患者の受け入れを取りやめた。11日現在、道内で用意しているコロナ患者用病床は全体の約8割、494床が埋まった。感染ピーク時に約1800床を確保する予定だが、医療機関のクラスターが続けば、病床確保はおぼつかない。
 札幌市の12日の新規感染者は164人。今後の見通しを、札幌市保健所の担当者は「難しい。推測の域を出ない」と話した。
 クラスターを封じ込めなければ、感染拡大を防げない。「予兆をなるべく早く検知できる態勢を取り、早く対応することが重要」
 厚生労働省に助言する専門家組織「アドバイザリーボード」座長の脇田隆字・国立感染症研究所長は11日、そう強調した。

◆感染少ない地域では「気の緩み」
 クラスターは各地で増えており、感染者が比較的少なかった地域で、対応の遅れがみられるという。その一つの事例が、青森県弘前市内の接待を伴う飲食店で発生したクラスターだ。
 最初の感染者判明は10月12日。その10日ほど前から、複数の従業員が体調不良を訴え、保健所に何度か相談したが、軽症のためかPCR検査をしなかった。客や従業員、その家族や友人、同僚ら関連の感染者は180人以上とみられる。
 県内の感染者総数は8月末時点で35人。9月は1人だけだった。「身近では起きていないので、という気の緩みはあったかもしれない」と県健康福祉部の奈須下淳次長は説明する。

◆「個人の対策が最も重要」
 「それぞれのクラスターで感染が拡大する要因がある。それを分析して対策につなげる必要がある」と脇田氏。だが、クラスターの起点となる感染を防ぐのは結局は人だ。「個人個人の基本的な感染対策が最も重要だと思う」と訴えた。


<新型コロナ再拡大(2)>
連動する「寒さ」と「感染増加」 冬迎え5つのアクション緊急提言
東京新聞 2020年11月14日 05時50分
 今回初めて経験する冬場」―。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は9日夜、緊急提言をし、感染防止策の確実な実践など5つのアクションを示した。その基本的な考え方の中で強調したのが「冬」だ。

◆「緊急提言出さないと手遅れになる
 前日の8日、尾身茂会長らメンバーが東京都内の大学に集まり、提言内容を話し合った。議論は約8時間に及んだが、「緊急提言を出さないと手遅れになるという認識は共有していた」と日本感染症学会の舘田一博理事長は話す。

 冬を迎えつつある北海道では感染が急拡大し、その日の感染者は初めて200人に達した。メンバーから「このまま放置すると数週間でオーバーシュート(感染爆発)を起こす可能性さえある」との意見も出たという。
 地域の現状をみると、「寒さ」と感染拡大には連動がみられる。厚生労働省に助言をする専門家組織「アドバイザリーボード」は8日時点で、北海道から関西までは感染が「拡大」「拡大傾向」とし、中国地方から沖縄までは横ばいを意味する「持続」と分析した。

◆温度1%上がると感染者0.85%減
 こんな研究結果がある。米メリーランド大のグループは、1~3月上旬のデータを基に、東京を含む世界50都市の気温や湿度、感染状況を分析した。結果は、気温5~11度で、湿度が比較的低い地域で感染が拡大していた。
 北京大のグループは3月下旬までの166カ国のデータを基に、感染者と気象条件を調べた。平均では気温が1度上がると感染者は3.08%減り、湿度が1%上がると感染者は0.85%減っていたという。
 政府が予防対策のポイントとして、目安とする室温は18度以上。世界保健機関(WHO)のガイドラインを基にしている。室内の湿度は40%以上。

◆「湿度低いと水分失ったウイルス漂う」
 内閣官房新型コロナ感染症対策推進室の担当者は「湿度が低いと、ウイルスの水分が少なくなって軽くなり、空気中で漂う時間が長くなる」と説明する。また、冬は換気をする回数が減りがちで、ウイルスが室内に侵入すると、とどまりやすくなる。のどの粘膜が乾燥していると、ウイルスはのどに付着しやすくなる。そのまま増殖すると、感染につながる。うがいの推奨はそのためだ。
 12日の東京都のモニタリング会議で、国際感染症センターの大曲貴夫センター長は「急速な感染拡大の始まり」という認識を示した。都独自の警戒度は最高レベルから2番目を維持しているが、「ほとんど『赤』(最高レベル)に近い」とも。同日の東京の平均気温は10.2度。平年の平均気温は12月が7.6度、1月は5.2度だ。冬は近づいている。



<新型コロナ再拡大(3)>
新型コロナ検査 1日54万件可能と言うけれど…
34万件は精度低い簡易キット
                         東京新聞 2020年11月17日
 新型コロナウイルスの陽性、陰性を判定する検査能力は1日約54万件―。感染拡大ピーク時、全国の医療機関などが行えるというPCR検査、抗原定性検査(簡易キット)、抗原定量検査の総件数だ。政府がピーク時に想定する検査数46万件を上回る。

◆PCR検査はピーク時で17万件「持続的には無理」
 では、現状はというと、まず、全国で1日に可能なPCR検査数は8万5000件。厚生労働省によると、12日に行われたPCR検査は約3万件。まだ余裕がある。
 ピーク時は1日17万件。だが、検査に携わる人員などを考えると「持続的にできる検査数ではない」(厚労省の担当者)。そこで注目されるのが、2人以上の検体をまとめて分析する「プール方式」だ。
 陰性なら全員陰性。陽性なら、個別に再検査をして陽性者を探す。米国では感染拡大に伴い、4検体を1度に検査するプール方式が緊急的に許可された。

◆複数まとめて検査の「プール方式」、厚労省は否定的
 東京都世田谷区が導入を目指しているが、厚労省は「精度が不明」として、国費による行政検査での使用を認めていない。例えば4人分をまとめて検査すると、唾液など1人当たり検体量が少なくなり、含まれるウイルスも減って判定しにくくなるからだ。厚労省は国立感染症研究所の調査結果をみて、使用可能か見極める。
 一方、ピーク時に約54万件のうちおよそ6割、約34万件を賄うのが簡易キットだ。

◆安倍前首相約束の「1日20万件」は簡易キットのこと
 「インフルエンザとの同時検査が可能となるよう、1日20万件の検査体制を目指します」。8月、安倍晋三首相(当時)は辞意を表明した記者会見で、そう宣言した。この20万件は簡易キットを指す。
 厚労省によると、毎年の流行期のインフルエンザ検査数は1日平均20万件。担当者は「簡易キットが1日20万件あれば、診療所でインフルとの見極めができる」と説明する。来年1月には体制が整うという。
 簡易キットの強みは30分ほどという短い判定時間。だが、PCR検査と抗原定量検査に比べて一定量のウイルスが必要となるため精度は低く、発症中でも陽性を見逃す可能性もある。

◆キットは便利でも…使えるのは発症から2~9日以内、無症状には無理
 「便利だけど、結局、PCR検査に頼らないといけない」。9月から簡易キットを使い始めた東京・新宿にある診療所の30代の開業医。患者を待たせ、陽性なら直ちに保健所に連絡して隔離する。やっかいなのは陰性の時だ。
 「陰性でも、体温38度超などの症状があれば、PCR検査も追加して受けてもらっている。偽陰性だった場合、周囲に感染させる可能性があるから」
 厚労省は、ウイルス量が多い「発症から2~9日以内」に限り、簡易キットで陽性、陰性を確定できると定める無症状の濃厚接触者の検査には使えないため、クラスター(感染者集団)対策には残念ながら活用できない。