2020年11月3日火曜日

任命拒否 法解釈はっきり “首相は拒めぬ”政府文書は一貫

  2日の国会中継は余裕がなくて、16時20分頃から立民党の川内博史議員の最後の部分と立民党の奥野総一郎議員の全部を視聴しましたが、菅首相の答弁は実に酷いものでした。

 聞かれていることにまともに答えないというのは安倍首相時代に始まったことで、あの時は何とも酷い場面を見飽きるほど見せられてきました。その安倍氏が退場したのでようやく日本の国会はマトモになるのかと思ったのですが、菅首相も全くウリ二つで、安倍氏と甲乙つけがたいほどに酷いものでした。
 対論によってものごとを究明する場合、「それは『A』なのか、それとも『非A』なのか」という、これ以上はないほど単純明快な問いに答えていくことで進みます。逆にそれへの回答が得られなければ話はそれ以上に進展しません。答えることを避けるために延々と別のことを話してみても、問われたことに答えなければ同じことです。
 そんなことは小学生でも分かる話ですが、それを愧じることなく堂々とやってのけられる精神とは一体何なのでしょうか。そのことに全く逡巡せずに、心を痛ませることもなくできるというのは尋常ではありません。ただただ先行きの国会審議の不毛が思いやられます。

 しんぶん赤旗が日本学術会議会員任命拒否の問題について、日本学術会議法改定時の関連資料の要点を示し、国会での菅首相の答弁の誤りを指摘する記事を出しました。
 熊本日日新聞も「学術会議問題 論点ずらさず丁寧に説明を」とする社説を掲げました。

追記)2日の衆院予算委の動画は下記等で見ることが出来ます。
  https://youtu.be/gJuZ32dNPTA  (8時間23分)
  https://youtu.be/JgBzLzvCBnQ (8時間18分)
 4日の衆院予算委の質問者は立民、共産、維新で、共産党は14:34ごろ~(志位和夫議員)です。NHKが中継。
 (国会中継の予定はいつも「晴天とら日和」に詳しく載っています。中継録画も)
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学術会議会員任命 法解釈はっきり “首相は拒めぬ”政府文書は一貫
菅首相が言う“根拠”にも疑念
                        しんぶん赤旗 2020年11月2日
 日本学術会議の会員候補を任命拒否した問題で、菅義偉首相は、推薦の通りに任命する義務はないと強弁し、「政府の一貫した考え方だ」と繰り返しています。しかし、歴代政府が作成した任命に関する複数の文書は、首相に任命拒否できる実質的な権限はないとの法解釈を示しています。(岡素晴)
 「(学術会議会員を)必ず推薦の通りに任命しなければならないわけではない」―。衆参本会議での野党側の代表質問(10月29、30日)に対し、菅首相は何度も繰り返しました。その上で、内閣法制局の了解を得ており、政府の一貫した考え方だと言い張りました。
 本当に“一貫した考え方”なのか―。
 1983年と2004年、日本学術会議法が改定された際に政府の作成した文書の存在が人事介入の発覚後、それぞれ明らかになっています。
 83年文書は、内閣法制局の「法律案審議録」に収録されている「日本学術会議関係想定問答」。首相の任命は「実質任命であるのか」との問いに、「推薦人の推薦に基づいて会員を任命することとなっており、形式的任命である」としています
 04年文書は、学術会議を当時、所轄していた総務省が内閣法制局に提出した同法改定案の説明資料です。「日本学術会議から推薦された会員の候補者につき、内閣総理大臣が任命を拒否することは想定されていない」と明言しています。
 これらの記述から、少なくとも04年当時までは、首相は実質的に任命拒否できないという法解釈が一貫して維持されていたことになります。
 一方、菅首相が言うように、推薦の通り任命する義務はないとの説明を裏付ける根拠はあるのか―。唯一、政府が示しているのは「内閣府日本学術会議事務局」名で作成された2018年11月13日付の文書です。
 この文書は、首相が「推薦のとおりに任命すべき義務があるとまでは言えない」と記述しています。法制局も「異論はない」と返答していますが、当時の会長ら幹部が文書の存在を知らされていなかったと、複数の関係者が証言。正当性に大きな疑念が生じています。
 信頼性にも疑問符が付いています。同事務局は「当時の担当者が文書を作成し、(内容を内閣法制局にはかるために)事務局長に口頭で了解を得た」と説明。その際の決裁文書すらないとしており、「行政手続きとしてそんなことはあり得ない」との批判が起きています。
 任命拒否できないことは過去の資料で明らかなのに、“拒否できる”という根拠は疑わしいものばかりなのです。


社説 学術会議問題 論点ずらさず丁寧に説明を
                    熊本日日新聞 2020年10月日11月2日
 菅義偉首相の所信表明演説に対する衆参両院の各党代表質問で、最大の焦点となったのは日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否問題である。日本学術会議法に違反するとの野党の指摘に対し、首相は「必ず推薦通りに任命しなければならないわけではない」と答弁。しかし、拒否の理由については「人事に関する」として説明を拒み、議論は平行線のまま終わった。
 一方、政府は学術会議の組織を見直す検討に入った。予算の無駄削減と業務効率化が必要との考えからだが、論点をずらそうとの意図が透けて見える。

「学問の自由」侵害
 首相答弁にはつじつまが合わない点が少なくなかった。まず任命権。首相は「推薦通りに任命しなければならないわけではないという点は、政府の一貫した考えだ」と強調した。しかし、1983年の政府国会答弁は「政府が行うのは形式的任命にすぎない」としており、明らかに矛盾している
 首相の主張の裏付けとして政府が挙げたのは、2018年11月に内閣府がまとめた文書だ。学術会議事務局と内閣法制局が協議し、「首相が推薦を拒め、任命権の裁量がある」との解釈を明確化したとする。83年答弁との整合性については、2004年の日本学術会議法改正で会員の推薦方式が変わったためと説明した。
 ふに落ちないのは、この文書が今回の問題発覚まで非公表だった点。政府が国会答弁の解釈をひそかに変更していた疑いがある。さらに法改正された04年、やはり政府が「首相が任命を拒否することは想定されていない」との内部資料をまとめていたことも新たに判明した。この文書によれば、推薦方式が変わってもなお83年答弁を踏襲していたことになる。
 突然登場した18年文書だが、作成の経緯や、83年答弁などとの整合性をきちんと説明すべきだ。
 任命拒否は野党も指摘した通り、憲法23条「学問の自由」への侵害ではないか。これに対し首相は「会員が個人として有する学問の自由や、学術会議の独立性を侵害するものとは考えていない」と述べただけだった。
 首相は任命拒否の詳細な理由の説明を避ける一方、会員は東大など七つの旧帝国大学所属が45%を占め、民間企業の所属や若手が3%しかおらず偏りがあり、多様性を重視したと強調した。

「多様性」の根拠は
 当初は推薦段階の名簿を見ていないと発言。他方で総合的、俯瞰[ふかん]的な判断の結果としたが、ここに来て新たに多様性を持ち出したのは苦し紛れにも見える
 学術会議は、この20年間で女性の比率は1%から38%に、関東に偏っていた会員比率も68%から51%に改善したとして、「多様性や男女比率は長い間、試行錯誤してきた結果だ」と反論している。今回、任命拒否された会員には女性や50代前半の若手、その大学からただ1人の研究者が含まれている。首相の言う多様性の根拠があいまいだ。理由を言わず、多様性重視として切り捨てるのはあまりに強権的ではないか。
 任命を拒まれた6人には、安全保障関連法や米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設といった政府方針に批判的だった研究者が含まれており、政府方針に異を唱える人を排除したのではとの疑念も出ている。学術会議が政府との距離感を意識するのは、かつて研究者が太平洋戦争に協力、動員された反省からで、当然のことである。

不可解な行革論議
 国会での論戦を横目に、河野太郎行政改革担当相と井上信治科学技術担当相は会談し、学術会議への年間約10億円の国費負担が妥当かどうか検証作業を加速する方針で一致。「行政改革」として年内に結論を出し、来年度予算案への反映を目指すという。自民党プロジェクトチーム(PT)の塩谷立座長は、10日をめどに論点を整理する考えだ。
 学術会議の職員は約50人全員が官僚で事務局人件費が約4億円。政府への提言などのための活動費が約2億5千万円で続く。
 一方、会員210人に固定給はなく、支払われるのは会議参加の手当1万9600円(税込み)。手当は会長など役職に応じ加算されるが、合計で約7千万円にとどまる。年金制度はない。最先端の知見を社会に還元することを考慮すれば、高額とは言えまい。
 任命拒否問題は国民の7割以上が説明不十分と受け止めている。説明を省き組織改編に乗り出すことには違和感がある。首相が疑問を正面から受け止め対応しなければ何も解決しない。国会はきょう予算委員会が始まる。首相には丁寧な説明を求めたい。