ご存知のように、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が発表した22年の世界各国の報道自由度ランキングで、日本は昨年から4つ順位を下げて71位でした(180カ国・地域中)。
その原因について孫崎享氏は「当局者にインタビューすることを許可する権限を持つ『記者クラブ』システムがジャーナリストを自己検閲に誘導している」と述べました。その結果、「政府批判をできないメディア」となり、西側流のメディアの定義で言えば、もはや「メディア」ではなく、形を変えた政府広報放送であり広報紙となったとしています。
記者クラブ制度は日本特有のもので、数社の幹事会社が各省庁の記者会見の場を仕切るしくみになっていますが、海外にはそういう制度はありません。
これは民主党政権が出来る以前から指摘されていたことで、鳩山由紀夫政権時代には政権サイドの改善の動きが見られましたが、本体である幹事会社の方には何の動きもありませんでした(因みに当時のランキイングは11位)。
孫崎氏はまた、世界国際関係学会元副会長で、日本学術会議元会員などを歴任した羽場久美子氏の、「NHKは少しでも自由な意見表明をしたり、国民の知る権利に基づいて質問するような人たちを左遷したり、降板させたりしてきました。~ それは政府の圧力なのか、アメリカなのか、警察なのかはわかりませんが、NHKにはどこからかの大きな圧力がかかっているのではないか」、「最近は多くの新聞が非常にアメリカ擁護、反中国あるいは反露の立場から論じるケースが多くなりました」との指摘を紹介し、日本の報道は危険なくらい異常なところにきていると述べました。
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日本外交と政治の正体 孫崎享
日本の報道の自由度は世界71番目 「記者クラブがジャーナリストを自己検閲」
孫崎享 日刊ゲンダイ 2022/05/20
国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が2022年の世界各国の報道自由度ランキングを発表した。180カ国・地域中、日本は昨年から4つ順位を下げて71位である。G7諸国のランキングは、ドイツ16位、カナダ19位、英国24位、フランス26位、米国42位、イタリア58位である。
健全な報道ができて初めて健全な民主主義が成立する。報道の自由の存在は健全な民主主義の大前提になる。
アジア諸国では台湾38位、韓国43位である。1970年代や80年代に外務省で働いた者として、報道の自由度で、日本が台湾や韓国の下になるとは想像だにできなかった。日本はもはや、そういう国になってしまったのである。
日本の評価が低下した理由はこうだ。
「当局者にインタビューすることを(可否を)許可する(権限を持つ)『記者クラブ』システムがジャーナリストを自己検閲に誘導している」
自己規制とは上品な言葉であるが、「政府を批判することは書かない」ということである。
政府批判をできないメディアは、西側流のメディアの定義で言えば、もはや「メディア」とは呼ばれない。形を変えた政府広報放送であり、広報紙なのである。
世界国際関係学会元副会長で、日本学術会議元会員、日本政治学会理事、日本国際政治学会理事などを歴任した羽場久美子氏はメディアについて次のように記載している。
「NHKは少しでも自由な意見表明をしたり、国民の知る権利に基づいて質問するような人たちを左遷したり、降板させたりしてきました。最近でも何人かのキャスターが降板しています。それは、政府の圧力なのか、アメリカなのか、警察なのかはわかりませんが、NHKにはどこからかの大きな圧力がかかっているのではないかと思います」
「政府の圧力なのか、アメリカなのか、警察なのか」とは意味深な表現だ。
羽場氏はまた、
「最近は多くの新聞が非常にアメリカ擁護、反中国あるいは反露の立場から論じるケースが多くなりました」とも指摘している。
世界の報道がどういうものであるかを知っている人々から見ると、日本の報道は危険なくらい異常なところにきている。
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。