「マスコミに載らない海外記事」に「Moon of Alabama(アラバマの月)」の記事:「ヨーロッパは、いかにして経済自殺に追いやられたのか」が載りました。
まだ完全な形で実施されたわけではありませんが、ノルドストリーム2によるロシアの天然ガスの購入をEU各国が止めるという政策は、いずれEUを経済自殺に追いやるという指摘です。
米国(やEU)はその方針でロシアがウクライナ戦争を止めると考えたのでしょうが、実際にはそうしたとしてもロシアの困窮は起きず、戦争はいつ終わるのか見通しは立っていません。
ロシアへの経済制裁を言い出した米国はシェールガスや石油を生産できるので困らず、現在、一方的に困窮に向かおうとしているのはEU側です。尤もグローバル経済体制になっている以上米国も影響が皆無ということはなく、現実に8・5%のインフレを起こし、食品などの価格が高騰しています。
米国をベースとする多国籍企業は種苗の独占体制を作り上げましたが、ロシアからの肥料の供給が細まったために、小麦の生産がままならなくなったというのは皮肉な話です。
記事は、EUの指導部は「EUが経済自殺の道を採る以外にはロシアにひどく怒っているのを示す方法はない(要旨 以下同)と決めた」と皮肉り、そのプログラムに従えば最終的にEUはの完全な産業空洞化を起こすと述べました。
また「ある真摯な観察者」による、「ロシア・エネルギーにノーと言うのは、エネルギー資源の上で、EUが組織的、長期的にエネルギーコストが世界で最も高価な地域になることを意味する」という言葉を紹介しています。
いずれにせよ米国がEUがどんなに困窮しようとも構わないと考えているのは事実です。
註)文中の太字強調は原文に拠っています。
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ヨーロッパは、いかにして経済自殺に追いやられたのか
マスコミに載らない海外記事 2022年5月22日
Moon of Alabama 2022年5月18日
ヨーロッパ「指導部」の積極的支援でアメリカはヨーロッパ破壊に成功しつつある。
カンザスシティー、ミズーリ大学経済学教授マイケル・ハドソンは、ロシアのウクライナ介入前、2月初旬に、こう書いていた。
アメリカは、もはや金融権力も、1944年-45年に、世界の貿易と投資のルールを規定することができた貿易と国際収支の慢性的黒字も失ったようだ。NATOや他の同盟諸国に益々必死に犠牲を要求しているアメリカから得られるものより、中国やロシアやマッキンダーのユーラシア世界島中枢地域が提供している貿易と投資の機会の方が良いことが、アメリカの優位に対する脅威なのだ。 |
2月中旬、欧州安全保障協力機構(OSCE)オブザーバーは、ウクライナによるドンバス砲撃が、1日、ごくわずかから2,000回以上に増加したと指摘していた。ロシアは、これらの攻撃に対し、ドンバスの両共和国を認め、彼らと防衛協定に署名して備え、最終的に彼らの支援を始めたのだ。
ロシア軍事行動開始から間もなく、ハドソン教授は以前の考えを更に発展させた。
2014年後のウクライナ・ネオナチ・マイダン政権による、最近のウクライナによる反ロシア民族的暴力行為でロシアを刺激しているのは決着を強いるよう狙ったものだ。NATO同盟諸国や他のドル圏衛星諸国が利益を増大する好機は、中国とロシアとの貿易や投資にあると理解したため、経済的、政治的支配力を失いつつあるアメリカ権益の恐れの対応に起因する。 |
4月初旬、ハドソン教授は状況を見直した。
ノルドストリーム2阻止を、西欧(「NATO」)が、中国とロシアとの貿易と投資によって繁栄を求めるのを禁じる狙いの一環と見なすアメリカの本格的戦略で、この新冷戦が、一年以上前に計画されていたのは今や明らかだ。 制裁を実施する戦争前のヨーロッパ貿易と投資には、ドイツ、フランスや他のNATO加盟諸国とロシアと中国間で増大する相互繁栄の可能性があった。ロシアは競争力の高い価格で豊富なエネルギーを供給しており、このエネルギー供給はノルドストリーム2で画期的に増加するはずだった。ヨーロッパは、この増大する輸入貿易に対し、例えば、ロシアへの更なる工業製品輸出と、ロシア経済再構築のための資本投資、ドイツの自動車会社や航空機や金融投資の組み合わせによって外貨を獲得するはずだった。この双方の貿易と投資はユーロとイギリス通貨で保持していたロシア外貨準備高のNATO没収により実に長年止められてしまった。 |
アメリカの対ロシア代理戦争に対するヨーロッパの反応は、メディアが推進するヒステリック説教、説教的なヒステリーに基づいている。それは合理的でも現実的でもない。
ヨーロッパ「指導部」は、ブリュッセルがロシアにひどく怒っているのを示すにはヨーロッパの経済自殺以外では不十分だと決めたのだ。ドイツを含む能なし政府は、そのプログラムに従った。連中がその路線を継続すれば、結果は西洋の完全な産業空洞化だ。
ある真摯な観察者の言葉はこうだ。
今我々は純粋に政治的理由で、自身の野心に突き動かされ、アメリカ大君主から圧力を受け、ヨーロッパ諸国が更なるインフレーションを招く石油とガス市場への更に多くの制裁を課すのを目にしている。自分の間違いを認める代わりに他人で犯人探しをして。 ・・・ 西欧の政治家と経済学者たちは、基本的経済法則を忘れたか、単にそれを無視すると決めたという印象を受ける。 ・・・ ロシア・エネルギーにノーと言うのは、エネルギー資源の上で、ヨーロッパが組織的、長期的に、世界で最も高価な地域になることを意味する。そう、価格は上昇するだろう、資源は、この物価上昇に対抗するだろうが際立って状況を変えるまい。これは世界の他地域の企業に既に負けつつあるヨーロッパ産業の大部分の競争力を、深刻に、あるいは取り返しがつかないほど傷つけるだろうと一部のアナリストは言っている。今このプロセスが速度を速めるのは確実だ。ロシア・エネルギー資源と同様、経済活動の機会は、他の地域の発展とともに、ヨーロッパを去るだろう。 この経済の異端判決宣告式は、もちろんヨーロッパの内政問題だ。 ・・・ 今我々のパートナーの常軌を逸した行動は、これが実態なのだが、ヨーロッパ経済への打撃に加え、ロシア石油とガス部門で収入の事実上の増大をもたらした。 ・・・ 欧米が近い将来どんな処置をとるか理解し、我々のパートナーの一部による思いやりがない混沌とした措置を、我が国の利益に変えるよう、事前に結論し、先を見越すべきだ。当然、我々は彼らの果てしない失敗を望むべきではない。我々は、私が言うように現在の現実から進むべきなのだ。 |
2020年5月17日、モスクワ、クレムリン、石油産業開発会議、ウラジーミル・プーチン
記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2022/05/how-europe-was-pushed-towards-economic-suicide.html#more