5日は「子供の日」でした。1989年に国連で採択された「子どもの権利条約」は、(1)生命、生存及び発達に対する権利、(2)子どもの最善の利益、(3)子どもの意見表明と、その尊重、(4)差別の禁止―の4原則を掲げていて、世界で最も広く受け入れられている人権条約です。
ところが日本では子どもの権利条約の実践ができていないと国連から何度も勧告されてきたのに、政府は軽視しています。これを含めて「人権の擁護」に関してはこれまでたびたび国連の各委員会から改善勧告を受けているのですが、日本政府はなぜか一貫して軽視しています。米国の要求であれば何でも受け入れるのに、です。
子どもの貧困も深刻で、日本では7人に1人が貧困(ひとり親世帯でみると半数)とされていますが一向に改善されていません。子どもをめぐる施策も立ち遅れたままで、子どもに関する国の予算は国際的にみて最低水準です。
高い学費に進路が閉ざされる学生も多く、奨学金によって進学しても卒業時には高額な負債額になって、その返還に苦しむという現実もあります。
かつては「子どもは国の宝」という言葉がありましたが、今は死語となっています。子どもの権利を守ることは大人社会の責任であり、そのまま政治の責任です。
しんぶん赤旗の「主張」を紹介します
併せて同紙の「きょうの潮流」を紹介します。そこでは子どもの心配ごとに対して、とにかく安心させようと「心配しなくても大丈夫だよ」と言うのではなく、「心配になって当たり前。考えていることを聴かせて」という姿勢が大事だと述べています。
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(主張)こどもの日 平和の中で生きる権利保障を
しんぶん赤旗 2022年5月5日
きょうは「こどもの日」です。ロシアによる侵略が続くウクライナでは、多くの子どもが家を追われ、家族と離れ離れになり、命まで奪われています。どの国の子どもも戦火にさらされ命の危機におびえることなく、平和に暮らせる世界にしなければなりません。
命を危機にさらすな
ウクライナの子どもたちは、200万人以上が国外に避難し、280万人が国内の避難民となっているとされます。繰り返される無差別攻撃は子どもにも容赦ありません。死の恐怖で心に深い傷を負った子どもは数多くいます。
長期的な影響が懸念される中、国連児童基金(ユニセフ)は保健、水と衛生、暴力からの保護、教育などについて支援計画を発表し、必要資金約9億4900万ドル(約1186億円)の提供を国際社会に求めました。
全ての子どもは、健康に生き、学び、自由に活動し、おとなや国から守られ援助されながら成長する権利があります。1989年の国連総会で採択された子どもの権利条約は、(1)生命、生存及び発達に対する権利、(2)子どもの最善の利益、(3)子どもの意見表明と、その尊重、(4)差別の禁止―の4原則を掲げました。締約国は、国連加盟国数を上回る196の国と地域にのぼり、世界で最も広く受け入れられている人権条約です。平和に生きる権利は、世界中の子どもに保障されなくてはならないはずです。おとな社会の責任が強く問われています。
日本の子どもをめぐる施策も立ち遅れたままです。子どもに関する国の予算は、国際的にみて最低水準です。18歳以下の7人に1人が貧困とされます。ひとり親世帯でみると半数に達します。高い学費に進路が閉ざされる学生も多くいます。教員は不足しています。保育士や児童福祉等の専門職の配置基準も低いままです。処遇改善も進んでいません。
政府は2023年度に「こども家庭庁」を設置する法案を国会に提出しましたが、十分な予算と人の確保が伴わなければ、困難に直面する子どもの問題の解決を図ることはできません。
日本政府は、子どもの権利条約の実践ができていないと国連から何度も勧告されてきたのに、軽視しています。一方で、理不尽な校則に対し中高生たちが声を上げ、前向きの変化を起こしています。
権利条約の理念に立った政治の実現で子どもが置かれている状況は大きく変えることができます。日本国憲法や子どもの権利条約の精神を生かした政治への転換が、切実に求められています。
おとなが果たす役割
ウクライナ侵略に乗じ、自民党などから9条改憲、大軍拡、「核共有」の動きが強まっていることは重大です。「子どもたちの未来に戦争はいらない」「平和な世界を子どもたちに」。日本でも世界でも戦争反対の声が広がっています。長野県内のある女性は「ウクライナ侵略が始まって以降、子どもの未来を思い、憲法・平和について考えるようになった」と子育て仲間に選挙の大切さを語っています。戦争の悲惨なニュースを見て不安になり、心を痛める子どもと、どうしたら戦争のない世界にしていけるのか一緒に考えることも大事でしょう。一人ひとりの一歩が子どもの未来につながっていきます。
きょうの潮(2022.5.5)
しんぶん赤旗 2022年5月5日
大型連休は楽しく過ごせていますか。新学期の疲れは癒やせましたか? 長引くコロナ下の我慢に加え、日々ロシアのウクライナ侵略の惨状を目にする子どもたち。心の健康が心配です。
「戦争でみんな死んじゃうの?」など不安を抱く子に、おとなはどう接したらいいか。日本ユニセフ協会が「対話のヒント」を紹介しています。印象に残ったのが、子どもの心配を受け止め、寄り添って話を聴くことの大切さです。
とにかく安心させようと「心配しなくても大丈夫だよ」と言いがちでした。しかしそれでは不安な気持ちを軽視することになってしまう。「心配になって当たり前。考えていることを聴かせて」という姿勢が大事だと気づかされました。
いつも笑顔で、とはいかないのが人生。ふと2015年公開のアメリカ映画「インサイド・ヘッド」を思い出しました。11歳の少女の頭の中を舞台に「ヨロコビ」「イカリ」など擬人化された五つの感情が少女を幸せにするべく奮闘する物語です。
その1人「カナシミ」は少女を悲しませてばかり。後ろ向きな行動に最初はイライラさせられますが、徐々にその存在の大切さに気づかされます。観客からは「つらい気持ちを押し殺さず悲しい時は泣くこと、マイナスの感情も人生には必要だというメッセージに感動した」などの感想が。
子どもの笑顔を守りたい。でも無理に笑わなくていい。不安な思いを受け止め見守り続けるおとなでありたい。それを保障する、おとなの心のゆとりも大切です。