2022年5月16日月曜日

北欧のNATO加盟 誰も批判しない危うさ / 軍事大国化を図る日本 (日刊ゲンダイ)

 日刊ゲンダイが「こうして戦争は泥沼にはまっていく 北欧のNATO加盟 誰も批判しない危うさ」という記事を出しました。
 ロシアと国境を1300km以上も接している北欧フィンランドが、ロシア敵視の軍事同盟であるNATOに加盟申請する方向で、これまではロシアと国境を接する国の加盟には慎重であったNATOも、「申請すれば温かく迎え入れられる」との事務総長声明を発表しました。NATOは年内にも加盟を認める予定ということです。
 ロシアと国境を接する国がNATOに加盟することはロシアが最も嫌うことで、ウクライナ侵攻もそれが理由の一つでした。ウクライナ侵攻が逆にそうした事態を促進することになったのは皮肉なことです。幸いなことにいまのロシアはそんな体力を持っていないので、フィンランドとの具体的な衝突はないと思われます。
 元外交官の孫崎享氏は「いま北欧2カ国がNATOに加盟する緊急性はないが、欧州ではNATOに加盟しないと孤立しかねない空気が広がっている」と見ています。ロシアのウクライナ侵攻の非はこんなところにも表れています。
 日刊ゲンダイの記事は、後半で「尻馬に乗り軍事大国一直線の岸田自民」という中見出しを掲げ、ウクライナ侵攻を良いチャンスとばかりに一直線に軍事大国化に奔る岸田政権を批判しています。
 岸田氏はしゃべり方はソフトですが、その実何を考えているのかが分からないというよりも、言うこと為すことは極右そのものです。ようやく極右である安部・菅政権が退場したと思ったら、岸田首相がそれと瓜二つの本性を現わしたのでした。
 先に経済安保推進法が共産党以外の賛成で成立しました。
 まだ関連する138本の政令.省令が出来ていないので実体は隠されていますが、いずれは戦時体制推進法とでも言うべき正体を顕わすものと思われます。
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こうして戦争は泥沼にはまっていく
  北欧のNATO加盟 誰も批判しない危うさ
                          日刊ゲンダイ 2022/5/14
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 新たな“火種”になる恐れはないのだろうか。不用意にロシアを刺激することになるのではないか。
 北欧フィンランドが、西側諸国の軍事同盟「NATO(北大西洋条約機構)」に加盟申請する方向となった。フィンランドの大統領と首相が12日、「遅滞なく加盟申請する」との共同声明を発表した。さらにフィンランドの隣国スウェーデンも追随する方針だ。
 これまで“中立路線”を維持してきた両国のNATO加盟は、戦後の世界秩序を一変させるものだ。
 ロシアと約1300キロの国境を接するフィンランドは、歴史的な経緯からNATOには加盟せず中立を保ってきた。NATOに加わらず“中立”を守ることが、ロシアを刺激せず、侵攻されないようにするための国防政策の柱だった。フィンランド国民もNATO非加盟を支持していた
 ところが、ロシアによるウクライナ侵攻を目の当たりにして国民世論が大きく変化。最新の世論調査では加盟支持が76%に達している。西側諸国も、もろ手を挙げて歓迎している。NATOの事務総長は「申請すれば温かく迎え入れられる」との声明を発表。年内にも加盟を認める予定だ。
 いまウクライナで起きている大量虐殺を見れば、両国世論がNATO加盟に傾くのは仕方がないのかも知れない。
 しかし、NATO加盟がロシアを刺激するのは間違いない。はやくもロシアは「NATO拡大は地域の安定につながらない」「報復措置を取る」と激怒している。朝日新聞によると、ロシアとの国境沿いに住むフィンランド人も「国としては安全になる。でも、ロシアは反発するだろうから、この村のような国境周辺ではきっと緊張が高まる」と不安を強めているという。
 そもそも、ロシアがウクライナに攻め込んだ大きな理由は、ウクライナがNATOに加盟しようとしたからだ。プーチン大統領は、5月9日の対独戦勝記念式典でも、2月24日の開戦初日の演説でも、「NATOの東方拡大が緊張を高め、ウクライナ侵攻につながった」との持論を展開している。
 なのに、さらにNATOの東方拡大を進めて大丈夫なのか。元外務省国際情報局長の孫崎享氏はこう言う。
「いま北欧2カ国がNATOに加盟する緊急性はないと思います。ウクライナ侵攻で苦戦しているロシアに北欧2カ国を攻める体力はないでしょう。NATO加盟は、軍事的な意味よりも、政治的な意味が大きいのだと思う。ヨーロッパではNATOに加盟しないと孤立しかねない空気が広がっているからです」

戦争の長期化を望んでいるアメリカ
 いま、国際社会が最優先すべきことは、とにかく戦争をストップさせることのはずだ。果たして、プーチンが嫌がるNATOの東方拡大を進めることが早期停戦につながるのかどうか。
 ロシアは「なぜフィンランドは自立を捨て、領土をロシアとの軍事対立の境界にしようとするのか」と憤っている。実際、このタイミングで国境線を緊迫させることは逆効果なのではないか。プーチンを刺激し、早期の停戦につながることはないだろう。
 そもそも、米国を中心とした西側諸国に、本気でこの戦争を止める気があるのかどうかさえ疑わしい。むしろ、長期化を願っている疑いすらある。
 米保守系メディア「アメリカン・コンサバティブ」は先月14日、〈アメリカはウクライナ人が最後の1人になるまでロシアと戦う〉と題された衝撃的な記事を配信している。
〈米国と欧州はウクライナを支援しているが、それは平和をつくるためではない。それどころか、モスクワと戦うウクライナ人が最後の1人になるまで、ゼレンスキー政権を支援するつもりだ〉とし、ウクライナへの兵器提供について〈それはウクライナの戦争を長引かせることに役立っている〉〈米国は戦争の外交的解決を邪魔したいのだ〉と書いている。
 アメリカの真の狙いは、戦争の長期化だと指摘しているのだ。
 今月10日付の英フィナンシャル・タイムズも、米英の有力者からは、この戦争について「ロシアを世界の舞台から追い出す好機」という声が上がっていると報じている。米国の本音は「早期停戦」ではなく「ロシアの弱体化」ということだ。
 戦争の長期化は、経済面でもアメリカを潤わせることになる。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。
「ウクライナに供与したミサイルやドローンなど、多くの米国製兵器が世界中で注目を浴びている。ある意味、戦地を“見本市”にしている状況です。自国の犠牲者を出すことなく兵器の性能をPRできるのですから、こんなにおいしい話はないでしょう。さらに、ロシアからの原油や小麦の輸出がストップすれば、同じく産油国であり農業国でもあるアメリカは、今後、自国産の原油や穀物の輸出を本格化していく可能性がある。戦争の長期化はアメリカに多大な恩恵をもたらすことになります」
 窮鼠猫を噛むということもある。プーチンが破れかぶれになれば、本当に第3次世界大戦に発展しかねない。こうして戦争は泥沼にはまっていく。

尻馬に乗り軍事大国一直線の岸田自民
 戦争の興奮状態にあるのは、日本も一緒だ。ロシアのウクライナ侵攻以降、どんどん戦時体制に近づいている
 自民党内では「核共有論」が公然と飛び交い、従来の「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と言い換えたうえで、相手国のミサイルだけでなく「指揮統制機能等」も攻撃可能などと口にし始めている。もはや“専守防衛”など、どこ吹く風といった状況だ。
 さらに、自民党が4月にまとめた「防衛力強化」に関する提言では、現在GDPの1%に抑えられている防衛費を5年以内に2%に倍増するよう政府に求めている。いまでも日本の防衛費は世界9位と巨額なのに、GDPの2%に倍増したら、日本はアメリカ、中国に次ぐ世界3位の軍事大国になってしまう。それでも、なぜか野党からもメディアからも疑問の声が上がらない
「安全保障環境はかつてなく厳しい」と唱えれば、軍事力強化がどんどん容認される空気が広がっている。
「安全保障」を口実に、政府による“国家統制”も強まり始めている。象徴的なのが、11日に成立した経済安保推進法だ。
 危ういのは、民間企業の活動に政府が手を突っ込めるようになることだ。法律では、電気、石油、通信など14事業で設備を導入する際、国による事前審査が義務づけられている。さらに、半導体など「特定重要物資」の供給を担う企業に対し、国家による在庫などの調査権も定めた。「現代の国家総動員法」との指摘も出ている。
 「経済安保推進法の狙いは『日本経済の軍事化』でしょう。法律の柱の一つに掲げられた『先端技術開発を巡る官民協力』では、軍民両用が可能な技術が研究対象となる。これは、日本の学術界が戦後、一貫して距離を置いてきた『軍事研究』に学者や企業が参加できるようにするものです。岸田自民は、この危機に乗じて憲法改正や軍事費増額など、あらゆる面で一気に日本を戦争できる国に変えるつもりでしょう」(金子勝氏=前出)

 この戦争はいつ終わるのか。この調子では簡単に終わらないのではないか。