2022年5月8日日曜日

岸田資産所得倍増プランで目が点(植草一秀氏)

 連休で東南アジアや伊、英等を歴訪していた岸田首相は、ロンドンでの講演で「資産所得倍増プラン」を進める方針を示し、日本への投資を呼びかけたということです。岸田氏は「新しい資本主義」を謳って首相の座を射止めましたがその内容は今も不明で、その後「資本主義のバージョンアップ」と言い換え、「市場も国家も」、「官も民も」の「官民連携」で新たな資本主義をつくっていくと述べました。
 それに対して植草一秀氏は「もっともらしく聞こえるが具体的な意味が不明」、「目新しい言葉を並べることより、政策の核心を分かりやすく明示することが大切だ」として、日本国民にとって必要な経済政策は「分配」の是正で、「猖獗を極める新自由主義の振り子を引き戻すことが何よりも求められている」と批判しました。
 そして「岸田氏の認識の甘さを象徴したのが資産所得倍増プラン」であり、「一世帯当たりの金融資産保有額平均値は1062万円だが、分布の中央値は100万円なので、実態は圧倒的多数の国民が金融資産ゼロや保有金融資産100万円の状況に置かれている」として、「この状況を放置したまま資産所得倍増を叫んでも意味がない」と切って捨てました
 植草一秀氏の記事「岸田資産所得倍増プランで目が点」を紹介します。
 因みに「資産所得とは、給料ではなく株式の配当などから得られる所得のことを言うので、言い換えれば「配当収入を倍にする」ということになります。海外の投資家を相手に講演した岸田首相は、「2000兆円ある日本の個人金融資産は大きなポテンシャル」、これを「貯蓄から投資へのシフトを進める」として、現在、半分以上が現預金で保有されている個人の金融資産2000兆円を投資に回させ株価をアップさせる魂胆のようですが、そもそも日本の株価は政府が国民の資金を投じて買い支えた結果なので、到底経済の実態を表しているとは思えません。
 それに日本はドルベースだとマイナス成長の国斎藤満氏)で、円安がどこまで進むのかも分からない中で、岸田氏が構想するようなことが起きるとは思えません。
 日刊ゲンダイとまるこ姫の独り言の記事を併せて紹介します。
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岸田資産所得倍増プランで目が点
                植草一秀の「知られざる真実」 2022年5月 7日
連休に岸田文雄首相がロンドンを訪問し、金融街シティーで講演した。
岸田氏は「日本経済はこれからも力強く成長を続ける」と強調。
同時に「資産所得倍増プラン」を進める方針を示した。
岸田氏が自民党総裁選に際して掲げたのが「新しい資本主義」。
岸田氏は当初、「分配こそ重要」と述べていたが、これが「分配も成長も」に変わり、最終的に「まずは成長」に変化した。

経済政策の課題は「分配」と「成長」。「分配」ではなく「成長」重視なら安倍・菅政治と変わらない。
岸田氏は、資本主義がこれまでにレッセ・フェール(自由放任主義)から福祉国家へ、福祉国家から新自由主義へと二度の転換を示したと述べた。
市場原理=市場経済は必然的に格差を生み出す。資本主義が修正された主因が「格差拡大」だった。自由放任主義は格差拡大をもたらす。
その弊害が拡大して福祉国家が追求された。しかし、福祉国家が追求されるなかで、これが経済の効率を低下させるとして、再び自由放任に振り子が引き戻された。結果が新自由主義の台頭である
しかし、新自由主義が猛威を奮い、再び、福祉国家の方向に振り子を引き戻すべきとの声が広がっている。

この点について岸田氏は奇妙な主張を示す。岸田氏は「新しい資本主義」を「資本主義のバージョンアップ」だと述べた。意味が分からない
岸田氏は資本主義が「市場か国家か」と「官か民か」の間で振り子のように揺れてきたとした上で、「新しい資本主義」においては「市場も国家も」、「官も民も」の「官民連携」で新たな資本主義をつくっていくと述べた。もっともらしく聞こえるが具体的な意味が不明
新自由主義は埋めようのない格差拡大をもたらした。この現実に対して、いま再び強い修正圧力が生じている。振り子を引き戻すことが求められている。

バージョンアップだろうとグレードアップだろうと、実体のない言葉遊びにしか聞こえない。
岸田氏は格差拡大を「外部不経済の問題」と述べたが理解に苦しむ。
外部不経済とは市場を通じて行われる経済活動の外側に、個人や企業などの第三者の不利益が発生すること。格差拡大は外部不経済ではない
原稿を書いたのがスピーチライターであっても、正確さを欠く文章で評価を下げるのは岸田氏自身。目新しい言葉を並べることより、政策の核心を分かりやすく明示することが大切だ。

多くの偶然が重なり岸田内閣支持率が高水準で推移しているが、本当の力量がなければメッキはすぐに剝がれてしまう。
日本国民にとって必要な経済政策は意味の希薄な「バージョンアップ」でなく「分配」の是正だ猖獗を極める新自由主義の振り子を引き戻すことが何よりも求められている。

岸田氏の認識の甘さを象徴したのが「資産所得倍増プラン」
金融広報委員会による「家計の金融行動に関する世論調査(2021年)」によると単身世帯の33.2%が金融資産ゼロ。
一世帯当たりの金融資産保有額平均値は1062万円だが、分布の中央値は100万円
ほんの一握りの者が多額の金融資産を保有しているだけで、圧倒的多数の国民が金融資産ゼロや保有金融資産100万円の状況に置かれている。
この状況を放置したまま資産所得倍増を叫んでも意味がない。
金融庁審議会は老後資金が2000万円不足すると明らかにした。
「100年安心」と謳ってきた日本の年金制度が、100年どころか1年でも不安な状況なのだ。

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岸田首相「資産所得倍増計画」は“空振り”確定 
  個人金融資産2000兆円狙う魂胆にも批判殺到
                          日刊ゲンダイ 2022/05/07
 予想通り、市場はほとんど反応しなかった。
 連休中、6カ国を外遊した岸田首相は5日、ロンドンの金融街シティーで講演し、「安心して日本に投資してほしい」「資産所得倍増を実現する」と表明したが、翌日(6日)の東京市場は、185円03銭高の2万7003円56銭と、わずかに上昇しただけだった。
 海外の投資家を相手に講演した岸田首相は、「2000兆円ある日本の個人金融資産は大きなポテンシャルだ」「貯蓄から投資へのシフトを進める」「インベスト・イン・キシダです」と胸を張ってみせた。どうやら、現在、半分以上が現預金で保有されている個人の金融資産2000兆円を投資に回させ、株価をアップさせる魂胆のようだ。
 しかし、「資産所得倍増計画」を打ち出した直後からネットでは批判が噴出。<なんか違う気がする><「資産所得倍増プラン」?「所得倍増計画」はどこへいった?><そもそもなんで貯蓄に走るかわかってないんでしょうね。日本の先行きに希望が見えないから不安で貯蓄するんでしょう。投資を推奨する前に日本経済を成長させろ。そうすれば投資なんて自然に集まるでしょう。成長が見えないとこに投資はしませんよ><無意味なマネーゲームにしかならないと思う>
 資産所得とは、給料とは異なり株式の配当などから得られる所得だ。厚労省の調査によると、2018年の1世帯当たりの資産所得は15万8000円だった。岸田首相は、資産所得を倍増させるために「NISA」の利用者拡大などを推し進めるという。しかし、はたして日本国民や外国人が投資するのかどうか。
 経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
「岸田首相の講演をテレビで見ましたが、聞いていた外国人投資家は、『この人、なに言ってんだ』という感じでキョトンとしていました。日本はドルベースだとマイナス成長の国ですよ。しかも、円安が進行している。投資の鉄則は、強い通貨の国を対象にすることです。経済成長もせず、弱い通貨の国には、誰も積極的には投資しない。外国から投資マネーが入ってこなければ、日本人が投資しても儲けることは難しいでしょう」
 どこが「新しい資本主義」なのか。


岸田、半年前には「所得倍増」今「資産所得倍増」根拠のない大言壮語
                         まるこ姫の独り言 2022.05.06
去年の10月11月頃には「令和版所得倍増」と言っていた総理が、今では国民がため込んでいると言われている貯金を投資に回すようにと誘導している。

岸田首相、「資産所得倍増プラン」を表明 貯蓄から投資へ誘導
                        5/5(木) 18:05配信 毎日新聞
>岸田文雄首相は5日(日本時間同)、ロンドンの金融街・シティーで講演し、自身が掲げる経済政策「新しい資本主義」の具体策として、日本の個人金融資産約2000兆円を貯蓄から投資へと誘導する「資産所得倍増プラン」を始めると表明した。

その前に、総裁選で掲げた「令和版所得倍増」はどうなったのか。

まさか、総裁選で「令和版所得倍増」を掲げていたとは知らなかったが、ほとんど賃金が上がらない今、どう考えても所得倍増はあり得ない話だ。

高度成長期ならいざ知らず、衰退期に入っていると感じられる日本が「所得倍増」ってなんなのか。

なんでもパクれば良いって話じゃない。

具体的な策はあるのか。と思っていたら日本だけ世知辛い今の時代に荒唐無稽とも思われる「所得倍増計画」をそのままに、もう「資産所得倍増」を恥ずかしげもなくイギリスで披露する岸田。。

そもそも貯蓄が多いと言われている人たちの多くは将来に不安があるから嫌がおうも無く貯蓄に回しているだけで、日本の経済にも政治にも信用を置いていないからと違うのか。

しかも投資は本当の自己責任で、儲かる保証はない。

経済が上り調子で政府が老後の不安を無くしたら、貯蓄をする必要もない。
経済は下降線をたどり、政府への信頼も無く、どうして貯蓄を投資に回すという発想になろうか。

貯蓄さえない世帯も沢山あると報道されているが、もう2000兆円の個人資産を狙うしかないこの国の政府。

元本割れるすることは当然と思っていないと投資などできないが、甘い言葉で誘われて貯蓄を投資に回した結果、悲惨な目に合う人もいる。

素人がにわかで投資をするとろくなことがないと思うが、それを日本の総理自ら勧誘しようとする日が来るとは。。。

ニコニコ顔で揉み手をしている図が目に浮かぶ。

個人の資産を投資に回すのが「新しい資本主義」の実態とは。
中身なにも無かった。。。