NHKが3月15~17日に行った憲法改正に関する世論調査では、
今の憲法を改正する必要があると思うかどうかについては
「改正する必要があると思う」が35%、「改正する必要はないと思う」が19%でした。
また、戦争の放棄を定めた憲法9条を改正する必要があるかについては
「改正する必要があると思う」が31%、「改正する必要はないと思う」が30%でした。
9条を「改正する必要があると思う」と答えた人に理由を聞いたところ、
「自衛力を持てることを憲法にはっきりと書くべきだから」が64%と最も多く
また「改正する必要はないと思う」と答えた人に理由を聞いたところ
「平和憲法としての最も大事な条文だから」が70%でした。
この結果について、現憲法を守るべきとの立場の石川健治東大教授は
「ウクライナ侵攻による現実的な恐怖から、一挙に9条改正へという流れができてしまうのではないかと思っていたが、データを見るかぎり、非常に皆さん冷静だという印象を受ける」と話しています。
改憲勢力の自民・維新が、ロシアのウクライナ侵攻を奇貨として9条の改憲を扇動しているのは残念なことで、軍備を拡充して他国からの侵略に備えるという考えは際限のない軍備拡張の道に踏み込む愚かな選択です。
いまこそ9条の精神に沿って近隣諸国をはじめ諸外国と友好関係を構築することで大事で、それこそが国を守る正しい道です。
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憲法改正“必要”35% “必要ない”19% NHK世論調査
NHK NEWS WEB 2022年5月3日
3日は日本国憲法の施行から75年となる憲法記念日です。
NHKの世論調査で
調査概要
NHKは、先月15日から3日間、全国の18歳以上を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかけるRDDという方法で世論調査を行いました。
調査の対象になったのは2978人で、50.6%にあたる1508人から回答を得ました。
憲法改正の必要性
今の憲法を改正する必要があると思うかどうか聞いたところ、
▽「改正する必要があると思う」が 35%
▽「改正する必要はないと思う」が 19%
▽「どちらともいえない」が 42%でした。
去年の同じ時期に行った調査と比べると、「改正する必要がある」と「改正する必要はない」は、いずれもほぼ同じ割合でした。
“改正が必要”の理由
憲法を「改正する必要があると思う」と答えた人に理由を聞いたところ、
▽「日本を取りまく安全保障環境の変化に対応するため必要だから」が 57%と最も多く
▽「国の自衛権や自衛隊の存在を明確にすべきだから」が 23%
▽「プライバシーの権利や環境権など、新たな権利を盛り込むべきだから」が 9%
▽「アメリカに押しつけられた憲法だから」が 6%でした。
“改正は必要ない”の理由
憲法を「改正する必要はないと思う」と答えた人に理由を聞いたところ、
▽「戦争の放棄を定めた憲法9条を守りたいから」が 61%と最も多く
▽「すでに国民の中に定着しているから」が 16%
▽「基本的人権が守られているから」が 15%
▽「アジア各国などとの国際関係を損なうから」が 3%でした。
憲法9条改正の必要性
憲法9条について、改正する必要があると思うかどうか聞いたところ、
▽「改正する必要があると思う」が 31%
▽「改正する必要はないと思う」が 30%
▽「どちらともいえない」が 34%でした。
去年の同じ時期に行った調査では「改正する必要はない」が「改正する必要がある」をやや上回っていましたが、今回は同程度となりました。
憲法9条“改正が必要”の理由
憲法9条を「改正する必要があると思う」と答えた人に理由を聞いたところ、
▽「自衛力を持てることを憲法にはっきりと書くべきだから」が 64%と最も多く
▽「国連を中心とする軍事活動にも参加できるようにすべきだから」が 20%
▽「自衛隊も含めた軍事力を放棄することを明確にすべきだから」が 8%
▽「海外で武力行使ができるようにすべきだから」が 4%でした。
憲法9条“改正は必要ない”の理由
憲法9条を「改正する必要はないと思う」と答えた人に理由を聞いたところ、
▽「平和憲法としての最も大事な条文だから」が 70%と最も多く
▽「改正しなくても、憲法解釈の変更で対応できるから」が 15%
▽「海外での武力行使の歯止めがなくなるから」が 9%
▽「アジア各国などとの国際関係を損なうから」が 4%でした。
※調査結果は四捨五入しているため合計が100%にならないことがあります。
※複数の選択肢を合計する場合は、実数を足して%を再計算しているため%の合計値とは一致しないことがあります。
“憲法改正に向けた議論を” 関西学院大学 井上武史教授
憲法学が専門で、憲法改正に向けた議論を進めるべきだという立場の関西学院大学の井上武史 教授は「ウクライナへの軍事侵攻でもう少し顕著に9条を改正したほうがいいという人が増えると思ったが、いっときの事態に流されず冷静に考えていこうという姿勢の表れだと思う」と話しています。
そのうえで「実際の大国による侵略を目にしたことや、中国の脅威などもある中で、75年前の前提とは変わり、9条をそのままの形で保つのは無理な面もあるのではと、ある程度の国民が気づいているとも言える。9条の改憲について賛否が均衡しているのは悪くない状態で、両者で対話をして、いい方向を探っていくべきだ」と指摘しています。
そして、施行から75年となった憲法への向き合い方について「制定から75年間、1回も改正していない憲法は、知るかぎり世界でほかになく、時代にあわせて価値観や考え方も変わっている。困難な憲法改正より、法律改正や憲法解釈を変えることで対処できるなら、そちらを選ぼうという考え方は政治家にも多いと思うが、それは本当はよくない。自分たちの憲法を常にチェックして見直し、どんな事態が来てもうまく対処できるように、平時から改憲の議論をしておく必要がある」と話しています。
“今は憲法を変えるべきではない” 東京大学 石川健治教授
憲法学が専門で、今は憲法を変えるべきではないという立場の東京大学の石川健治 教授は「ウクライナ侵攻による現実的な恐怖から、一挙に9条改正へという流れができてしまうのではないかと思っていたが、データを見るかぎり、非常に皆さん冷静だという印象を受ける」と話しています。
そのうえで「憲法9条は、安全保障の目的のための手段として用意された条文ではなく、軍事力の統制という課題に対応するために用意され、究極的には国民の自由を確保するためにある。国防目的の国家にはしないという文明的な選択が、日本国憲法であり、とりわけ憲法9条なので、それを大事に、その前提で議論する必要がある」と指摘しています。
そして、施行から75年となった憲法への向き合い方について「憲法に関する議論は、目先の問題に振り回されず長いスパンで考えていくことが非常に大事だ。コロナ対策やウクライナ侵攻に対する手段をいかにスピード感を持って実現すべきかという考え方の延長線上に、専制主義的な統治のほうが効率的でいいのではないかという見通しが出てきてしまっている。75年という節目に、自由を確保するために立憲主義的な体制を維持するという選択をするかしないかが、実は問われていると思う」と話しています。