2022年5月12日木曜日

ウクライナ政府に戦争の継続を命令する米英両国政府(櫻井ジャーナル)

 櫻井ジャーナルは西側のメディアが隠したい情報を伝えてくれます。

 今回は、マリウポリのアゾフスタル製鉄所の地下要塞に避難していた市民が、そこから簡単には出てこれない(アゾフ大隊に射殺される)という状況にあったことと、ウクライナが停戦を目指すことは、米国(と英国)から戦争の続行を命令されていて出来ないことを明らかにしました。
 米国はロシアを消耗させようという目的でロシアをウクライナ侵攻に仕向けたのであり、ウクライ国民にとってどうあることが最も望ましいのかというような視点は元々ありませんでした。
 問題はゼレンスキー自身がどう考えているのかということですが、これもどうも米国と一体の考え方としか見えません。
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ウクライナ政府に戦争の継続を命令する米英両国政府
                         櫻井ジャーナル 2022.05.12
 ドイツのオーラフ・ショルツ内閣はロシアに対する敵対的な姿勢を強めている。アメリカのジョー・バイデン政権やイギリスのボリス・ジョンソン政権に従属したということだ。
 そのドイツの有力な雑誌「シュピーゲル」はマリウポリのアゾフスタル製鉄所から脱出した住民のひとり、ナタリア・ウスマノバの証言を3分間の映像付きで5月2日に伝えたが、すぐに削除したショルツ内閣や米英の政権にとって都合の悪い事実が語られていたからだ。

 マリウポリを拠点とするアゾフ大隊(アゾフ特殊作戦分遣隊)は内務省の親衛隊に属し、ネオ・ナチのメンバーで編成された。これは広く知られている話で、2014年2月のクーデター当時、BBCのような西側の有力メディアでさえ、この事実を伝えていた。そうした話を西側では力くで封印しようとしている
 製鉄所で働いていたウスマノバはアゾフ大隊が住民を2カ月にわたって掩蔽壕へ閉じ込め、恐怖の生活を強いたとしている。ロシア軍が設定した脱出ルートの存在は知っていて、脱出しようと試みたが、アゾフ大隊が許さなかったという。
 これは脱出できたほかの住民の証言と一致している。そうした住民は異口同音に、アゾフ大隊が脱出を試みる住民を射殺していると語っている。また建物を破壊、住民や捕虜を拷問、若い女性をレイプしているとも告発している。(例えば​ココ​や​ココだが、脱出した住民が増え、少なからぬ映像がインターネット上にアップロードされている。)

 しかし、こうした証言が広がると西側のメディアが作り上げたウクライナ情勢のイメージが崩れてしまう。そこで住民の声を伝えず、ウォロディミル・ゼレンスキー政権やネオ・ナチと結びついている市長の主張を垂れ流している
 すでに脱出した市民の声がインターネット上で伝えられていることを配慮したのか、ロイターはバイデン政権にとって不都合な事実を削除して1分間に縮めた映像を流した。ところがシュピーゲル誌は3分間の映像を流している。その映像をシュピーゲル誌はすぐに削除したが、削除した事実は消せない。
 そもそもゼレンスキーが大統領に選ばれた一因はウクライナ国民のネオ・ナチ体制への反発にあったが、そのゼレンスキーの後ろ盾もネオ・ナチの後ろ盾と同じだったと指摘されている。西側のショービジネスがアメリカの情報機関に支配されていることを知っている人は少なくないだろう。

 現在、ウクライナで行われている戦争が始まったのは、1999年3月にNATO軍がユーゴスラビアを先制攻撃した時から始まる。その時、破壊と殺戮でひとつの国を解体したのだ。
 1998年4月にアメリカ上院はソ連との約束を無視してNATOの拡大を承認、その年の秋にマデリーン・オルブライト国務長官はユーゴスラビア空爆を支持すると表明、99年3月にアメリカ/NATO軍はユーゴスラビアを先制攻撃した。その際、スロボダン・ミロシェヴィッチ大統領の自宅を破壊し、中国大使館を爆撃している。
 攻撃の前にセルビア人を悪魔化するための宣伝が繰り広げられたが、その仕事を請け負ったのはルダー・フィン・グローバル・コミュニケーションという広告会社。アメリカは戦争の中心にプロパガンダを据えたと言える。
 2001年9月11日の世界貿易センターと国防総省本部庁舎への攻撃を経てアメリカは侵略戦争を本格化したが、戦争反対の声は小さく、平和運動は消えたと言われた。
 NATOは東へ拡大し続け、ウクライナへ入ろうとしている。アメリカのバラク・オバマ政権は2013年11月から14年2月にかけてウクライナでクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除することに成功した。経済政策は新自由主義を推進、治安や軍事の部門はネオ・ナチが握ることになった。
 このクーデター体制はロシア語を話す国民に対する敵意を隠していない。かつてシオニストがパレスチナで行ったように、殺戮と破壊でロシア語系住民を消し去ろうとしてきた。
 そして今年2月19日、ウクライナの政治家であるオレグ・ツァロフは緊急アピール「大虐殺が準備されている」を出し、ゼレンスキー大統領がごく近い将来、ドンバスで軍事作戦を開始すると警鐘を鳴らした。
 そのアピールによると、この地域を制圧してからキエフ体制に従わない住民を「浄化」するという作戦で、ドンバスを制圧し、キエフ体制に従わない住民(ロシア語系住民)を「浄化」、つまり皆殺しにするというものだったという。西側から承認を得ているともしていた。
 この作戦と並行してSBU(ウクライナ保安庁)はネオ・ナチと共同で「親ロシア派」の粛清を実行することにもなっていたという。住民虐殺の責任を西側の政府や有力メディアはロシアに押し付けるつもりだったのだろう。
 戦闘が始まった後、ロシア軍はウクライナ軍が残した文書を回収しているが、それによると、衛隊のニコライ・バラン上級大将が1月22日に攻撃の指令書へ署名ドンバスを攻撃する準備が始まった。2月中に準備を終え、3月に作戦を実行することになっていたという。この作戦はゼレンスキーが1月18日に出した指示に従って立てられたとされている。
 そのゼレンスキー大統領はロシア政府と交渉を始めるが、3月5日にロシアと交渉しているチームのひとり、デニス・キリーエフがキエフの路上で治安機関SBUの隊員に射殺された
 クーデター以後、SBUはCIAの下部機関となり、反クーデター派を拷問したり暗殺してきたと言われている。マリウポリ空港の地下にはSBUの「図書館」と呼ばれる秘密刑務所があり、拷問も行われていたとする証言もある。2018年にロシアへ亡命したSBUの将校、バシリー・プロゾロフもSBUは2014年からCIAからアドバイスを受けていたと語っている。
 そのプロゾロフによると、SBUの「死の部隊」は暗殺、誘拐、拷問を実行そのターゲットのひとりはルガンスクのクーデター政権が支配している地域の市長で、ロシア話し合いでの解決を目指していたボロディミル・ストルク。3月1日に誘拐され、拷問された上で胸を撃たれて死亡した。
 また、3月5日にはロシアと交渉しているチームのひとり、デニス・キリーエフがキエフの路上で治安機関SBUの隊員に射殺されている。3月7日には殺されたゴストメルのユーリ・プライリプコ市長の死体が発見された。ウクライナでは11名の市長が行方不明だとも言われていた。
 そして4月21日、ウクライナの南部にあるるミコライフ州のビタリー・キム知事は「ウクライナ24テレビ」の番組で「全ての裏切り者を処刑する」と語った。そうした処刑を実行するための秘密部隊を編成、すでに作戦を遂行しているともいう。キムにとって「裏切り者」とはウォロディミル・ゼレンスキーの政策に同意しない人びとだという。
 SBUはゼレンスキー政権の政策に従わない人びとを拘束しているが、APによるとその数はウクライナ北東部にあるハリコフだけで400名近くに達した。
 ウクライナ国民は戦闘を早くやめてほしいだろうが、それはアメリカ政府やイギリス政府が許さないロシア政府とウクライナ政府の停戦交渉は4月9日にジョンソン英首相がキエフを訪れた直後に止まった。ロシアのウラジミール・プーチン大統領を叩きのめすまで戦争をやめるなとゼレンスキーに命令、ゼレンスキーの態度は好戦的になった。