2022年5月27日金曜日

外交における信義と公正さの重要性(植草一秀氏)

 植草一秀氏が「外交における信義と公正さの重要性」(25日付)とする記事を出しました。

 日本の政府は、15年12月に行われた日韓合意を韓国が守らないと盛んに主張していますが、当時 日韓両国の外相が従軍慰安婦問題の解決のために共同発表を行った際、韓国は
 日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、空間の安寧、威厳の維持といった観点から懸念しているという点を認知し、韓国政府としても可能な対応方法に対し、関連団体との協議等を通じて適切に解決されるよう努力する」と述べたのであって、韓国政府の責任において少女像を撤去すると確約したものではありませんでした(背景には慰安婦問題において日本を非難する根強い国民運動がありました)。
 植草氏は、それを一方的に「韓国が約束を守らないと主張するのは誤りであり、外交文書を無視して韓国を根拠なく誹謗中傷するものであると述べました(特に安倍元首相は口癖のように「韓国は約束を守らない国」と繰り返し述べました)。
 本来「外交文書の細目を十分に精査してから自国の主張を展開しなければならないのに、この意味において日本外交には欠陥が多い(要旨)」として、そうしたデタラメを日本国民は許すべきでなく、それは日本の国民の尊厳にかかわる問題であり、日本国憲法の前文に謳った精神に反すると述べました。
 植草氏は26日付で「維新・国民=隠れ与党に投票しない」とする記事を出しましたので併せて紹介します。
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外交における信義と公正さの重要性
                植草一秀の「知られざる真実」 2022年5月25日
日本の国民として日本の外交について責任を持たなければならない。
国と国との間で交わした約束は守らなければならない。
日本国憲法前文に次のように記述した。
「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」
「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」

「平和を愛する諸国民の公正信義に信頼する」
「政治道徳の法則は普遍的なものである」
「この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務である」
「日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成する」
「普遍的な政治道徳の法則に従うことは各国の責務」
と記述している。

国と国との間で交わした約束はしっかりと守らなければならない。
日本は韓国との関係で韓国が約束を守らないと主張するが、その場合、韓国が具体的にどのような約束をして、どのように約束を守っていないのかを明確にする必要がある。
2015年12月28に日韓両国の外相が従軍慰安婦問題の解決のために共同発表を行った際、私は2015年12月29日付ブログ記事
「日韓合意、日本政府謝罪明記でも玉虫決着」https://bit.ly/3ao2kip 
メルマガ記事「日韓合意あいまい決着が問題を再燃させる懸念」http://foomii.com/00050
と題する記事を掲載した。
2016年1月9日には、
「問題根源は2015/12の日韓玉虫合意文言にある」https://bit.ly/3NyNG5X 
を掲載した。

日本政府は韓国の日本大使館前に設置されている従軍慰安婦少女像の撤去を韓国政府に求めてきた。このことに関して外相共同発表を行ったが、この共同発表は少女像撤去を確約するものにはなっていなかった。
日本の岸田文雄外相
「日韓間の慰安婦問題については、これまで両国局長協議等において集中的に協議を行ってきた。その結果に基づき、日本政府として以下を申し述べる。
一、慰安婦問題は当時の軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。安倍首相は日本国首相として、改めて慰安婦としてあまたの苦痛を経験され、心身にわたり癒やしがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。
二、日本政府はこれまでも本問題に真摯(しんし)に取り組んできたところ、その経験に立って、今般日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置を講じる。具体的には、韓国政府が元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を行うこととする。
三、日本政府は以上を表明するとともに、以上申し上げた措置を着実に実施するとの前提で、今回の発表によりこの問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。併せて、日本政府は韓国政府と共に、今後、国連等国際社会において、本問題について互いに非難、批判することを控える。
なお、先ほど申し上げた予算措置については、規模としておおむね10億円程度となった。以上のことについては、日韓両首脳の指示に基づいて行ってきた協議の結果であり、これをもって日韓関係が新時代に入ることを確信している。」
と述べた。

これに対して韓国の尹炳世外相は、
「韓国政府として以下を表明する。
一、韓国政府は日本政府の表明とこのたびの発表に至るまでの取り組みを評価し、日本政府が先に表明した措置を着実に実施されるとの前提で、このたびの発表を通じて、日本政府と共にこの問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する。韓国政府は日本政府が実施する措置に協力する。
二、韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、空間の安寧、威厳の維持といった観点から懸念しているという点を認知し、韓国政府としても可能な対応方法に対し、関連団体との協議等を通じて適切に解決されるよう努力する
三、韓国政府はこのたびの日本政府が表明した措置が着実に実施されるとの前提で、日本政府と共に今後、国連など国際社会において本問題に対する相互非難、批判を自制する。」
と述べた。

日本政府の最大の関心事である少女像について韓国の尹炳世外相が表明した言葉は、
「韓国政府としても可能な対応方法に対し、関連団体との協議等を通じて適切に解決されるよう努力する」というものであって、韓国政府の責任において少女像を撤去することを確約するものではなかった
したがって、日本が10億円の資金を拠出したとしても、慰安婦像が撤去されることは保証されないということになる。

外交文書の細目を十分に精査して自国の主張を展開しなければならない。
この意味において日本外交には欠陥が多い。
日本政府がその欠陥を棚の上にあげて、他国を根拠なく誹謗中傷することを日本国民は許すべきでない。日本の国民の尊厳にかかわる問題である。

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             (以下は有料ブログのため非公開)


維新・国民=隠れ与党に投票しない
                植草一秀の「知られざる真実」 2022年5月26日
国会は6月15日に会期末を迎え、参議院議員通常選挙が6月22日に公示され、7月10日には投開票日を迎える。参議院の定数は248。半数の124議席が改選される
非改選議席の党派別分布は

 

自 民

56

維 新

9

立 民

22

 

 

公 明

14

国 民

5

共 産

7

 

 

 

 

NHK

1

れいわ

2

 

 

 

 

 

 

無所属

7

 

    (参院議長、橋本聖子議員は自民に算入)
非改選議席では自公が70議席、維国Nが15、これ以外が38議席になっている。
参院選の勝敗を決するカギを握るのは32ある1人区。
1人区の与野党勝敗推移を見ると
  07年  与  6   野 23
  10年  与 21   野  8
  13年  与 29   野  2
  16年  与 21   野 11
  19年  与 22   野 10
となっている。
今回選挙では野党共闘が崩壊している。1人区での野党苦戦が見込まれている
参議院定数の3分の2超議席は166
衆議院議席の党派別分布は

 

自 民

264

維 新

41

立 民

98

 

 

公 明

32

国 民

11

共 産

10

 

 

 

 

NHK

0

れいわ

3

 

 

 

 

 

 

無所属

1

 

    (衆院議長・副議長を自民、立民に算入)
衆議院の3分の2超議席は311である。
自公の合計は296で311に届かないが、維新を加えれば337で3分の2を超える。
公明が抜けても自民に維新と国民を加えると316になり、3分の2を超える。
参院選で非改選議席と同数の各会派当選者が誕生すると、党派別分布は次のようになる。

 

自 民

112

維 新

18

立 民

44

 

 

公 明

28

国 民

10

共 産

14

 

 

 

 

NHK

2

れいわ

4

 

 

 

 

 

 

無所属

14

 

この計算では合計数が246になり定数より2少ないが、数値はあくまでも仮定計算による参考数値である。
この数値では自公合計が140で3分の2超の166に届かない。
維新と国民を加えると168になり、3分の2超に達する。

この意味で、非改選議席、すなわち2019年参院選と類似した選挙結果になる場合には、憲法改定論議のキャスティングボートを公明党が握ることになる。
公明党は自民党と比較すると憲法改定に強い積極性を示していない。
むしろ、現野党の維新や国民の方が憲法改定に前のめりであると見られる。
したがって、参院選結果で自民、維新、国民の3党が多数議席を獲得し、この3勢力で参院3分の2超議席を確保する場合には、憲法改定論議が急激に進行する可能性が浮上する。

参院における非改選議席では自維国が70議席を占有している。
今回参院選で自維国が合計で96議席を獲得すると、この3勢力で参院議席が166に届く。
憲法破壊=壊憲を阻止するには、自民党、維新、国民の議席増を阻止しなければならない。
参院選の最低目標は壊憲勢力に参院3分の2超議席を付与しないこと。
これを明確にしておかねばならない。
自民、維新、国民の議席増を断固として阻止しなければならない。
壊憲阻止の中核的役割を担うことが期待されてきた立憲民主党が連合の軍門に下り、信頼できる勢力ではなくなってしまっているため、立民以外の壊憲阻止勢力の議席増を実現しなければならない
立憲民主党については大敗して解体的出直しを図ることが強く求められる。

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