日本維新の会は18日に9条改憲の条文イメージを示し、併せて「積極防衛能力」の整備を謳い、その具体策案として8項目を掲げました。後者については自民党でも明言していない内容も含まれています。それはかねてから自民党よりも更に右寄りと言われていた維新が、自民党を右に引っ張る役割をしていることを明瞭にするものでした。
それにしてもここまで専守防衛の9条を逸脱する内容を堂々と提案するとは、まさにロシアのウクライナ侵攻を奇貨として、新憲法制定後の75年の実績を無に帰さしめるもので、ただただ呆れるしかありません。
しんぶん赤旗に中祖寅一氏の解説記事が載りました。
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維新 戦争あおる大軍拡 9条改憲案を提示 「専守防衛」投げ捨て
しんぶん赤旗 2022年5月27日
日本維新の会は18日に「憲法9条の改正に向けて」として9条改憲の条文イメージを示すと同時に、「積極防衛能力」の整備をうたい、その具体策案として8項目を掲げました(表)。自民党と全く同じか、自民党でも明言していない内容です。
積極防衛能力 ・ 具体策案 |
日本維新の会 9条改憲 条文イメージ
「第九条の二 前条の範囲内で、法律の定めるところにより、行政各部の-として、自衛のための実力組織としての自衛隊を保持する。」
軍事費11兆円
「具体策案」が掲げる「防衛費の増額(GDP (国内総生産) 比2%)」は自民党の安保提言(4月末)と軌を一にするもの。軍事費を11兆円に膨らませ、大増税や社会保障の削減で国民生活を押しつぷす内容です。
「具体策案」は「中距離ミサイル等新たな装備の拡充」にも言及しています。かつて政府自身、核兵器のほか「攻撃的兵器の中で例えばB52(戦略爆撃機)のようなもの、あるいはICBM、あるいは中距離弾道弾、このように他国の領域に対して直接脅威を与えるものは(憲法上)禁止されている」(中曽根康弘防衛庁長官)としてきた中距離ミサイルの保有を狙うものです。「敵基地攻撃能力」=「反撃能力」の保有を提起した自民党の安保提言も明言していない内容です。
さらに、厳しい批判を受けている「核共有」に、ついて「核共有を含む拡大抑止に関する議論の開始」と明記。非核三原則の公然とした破壊を執拗(しつよう)に狙います。
重大なのは「『専守防衛の定義にある『必要最小限」」に限るとの規定の見直し」を掲げていることです。
9条のもとで政府が自衛隊を「戦力」ならざる「必要最小限度の実力」として〝合憲性″を主張してきたのは、「専守防衛」という防衛政策をとってきたからです。その内実として①武力攻撃の発生 ②他に取るべき適当な手段のないこと ③必要最小限度の実力行使にとどまること-が「武力行使の3要件」とされてきました。
このうち「必要最小限度」の要件は、他国領域内での武力攻撃の禁止など、日本対する攻撃の「排除」を超えた武力行使は許されないというもので、「専守防衛」のもっとも中心的な要件とされてきました。「必要最小限」を見直すというのは、「専守防衛」そのものを投げ捨てるに等しいものです。焦点となっている「敵基地攻撃」は、まさに相手国領域内での武力行使であり、これを野放図に解禁していくことになります。
そのほか「戦争被害補償法制の整備、自衛官等殉職者の追悼の在り方検討」も掲げられ、戦死者、戦傷者が出ることも想定しています。
まさに戦争をあおる自民党以上の大軍拡政党-。日本維新の会の危険な本性がますますあらわとなっています。.
自衛隊を明記
「憲法9条の改正に向けて」は、「積極防衛能力」の整備のために9条の「改正条文イメージを公表する」とし、「積極的防衛能力」の整備には9条の改正が必要という認識を示しています。
条文イメージでは「前条の範囲内で」とされ、あたかも9条2項の戦力不保持規定の効力の範囲内での「自衛隊」明記であるかのようにみせています。しかし、専守防衛の放棄と一体であることをみれば、「自衛隊」を憲法に明記することで、自衛隊が大きく変貌することが明らかです。同時に「9条1、2項を残して自衛隊を明記する」という大枠を自民党案と同じにしたことで、衆参憲法審査会での議論の促進を狙います。
また、条文イメージには「自衛権については、閣議決定による憲法解釈及び平和安全法制(安保法制=戦争法)等の法律で規律付けする現在の枠組みを維持する」と書き込まれており、集団的自衛権の行使容認の「閣議決定」(解釈変更)と安保法制を全面追認するものとなっています。 (中祖寅一)