2022年5月29日日曜日

今後も物価の急激な上昇が続き国民生活は困窮 それなのに「軍事費倍増」の絶句

 今年に入って円安が顕著になり、食材関連や燃料などの基本資材を輸入に頼っている日本には当然の如くに物価高が襲いかかりました。それもまだ序の口で、この先どれだけの期間そしてどこまで物価高が進むのかは予測がつきません(少なくとも1年は続くといいます)

 円安の理由は明らかで、米国などがインフレ抑制に向けて国債の利上げに踏み切る中で、アベノミクス戦略によって現在国債残高が莫大になっているため日本だけが利上げに踏み切れないためです。
 総務省20日、4月のインフレ率(消費者物価指数前年同月比)を21%と発表しました。それはしかし「持ち家の帰属家賃」(安倍政権下で創出)を突然ゼロに見做したため約1%低めになったもので、従来通りに計算すれば3%、1~4月間に限定したインフレ率は実に4・7%に達しているということです。いずれも看過できない驚くべき数値です。
 米国をはじめ海外でもインフレは起きていますが、日本国民の賃金が20年来全く増えていないなかで諸外国は順調に賃金を上昇させているので、国民のフトコロに与える打撃は比較になりません。
 国はいまこそ血眼になって物価高に対処し国民の生活を守る必要があるのですが、岸田政権からは何も伝わってきません。そもそもこの事態にいたることは昨年から予想されていました。⇒21.12.24)  来年は火だるま 円安地獄 景気もコロナも外交も(日刊ゲンダイ)

 それなのに岸田首相にはこの狂乱物価を抑え込む意志が全く感じられず、有効と思われる消費税減税もやろうとしません。補正予算が正味僅かに1兆2000億円で、それも原油価格高騰対策だけというのはあり得ないことです。ましてや国民を苦しめる物価高を放置する一方で、米国が要求する「軍事費倍増」だけは実行するというのでは話になりません。
 何もかもピントが外れているというしかありません。日刊ゲンダイの記事を紹介します。
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物価は今後もどんどん上がっていく 国民が求めているのは軍事費倍増ではなく大型減税
                          日刊ゲンダイ 2022/ 5/ 27
                        (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 26日から、補正予算案の本格審議がスタートした。岸田内閣が補正予算案を提出したのは、“インフレ対策”のためだ。
 しかし、この予算案で、インフレ対策になると本気で考えているのだろうか。なにしろ予算額は、たったの2兆7000億円である。しかも、そのうち1兆5000億円は予備費の補充に使われ、残り1兆2000億円が原油価格高騰対策に使われるだけだ。
 これでは、野党議員が「遅い、小さい、中身がない」と批判するのも当然である。もはや、この深刻なインフレは、2兆7000億円程度ではどうにもならないことは、ハッキリしているはずだ。
 総務省が先週20日に発表した4月の「消費者物価指数」は、前年同月比21%の上昇だった。13年半ぶりの高水準だった。しかし、統計のマジックによって21%の上昇となっているが、実生活に即したインフレ率は、すでに3%に達しているという。
 総務省の物価統計には、「持ち家の帰属家賃」という項目が含まれている。「持ち家の帰属家賃」とは、マイホームに住んでいる人が、仮に家賃を払ったとしたらという“架空家賃”のことだ。今回、この「持ち家の帰属家賃」の上昇率をゼロ%と評価したため、全体のインフレ率を押し下げてしまった。総務省によると、「持ち家の帰属家賃」を除いたインフレ率は、3%だったという。
 経済評論家の斎藤満氏がこう言う。
「国民生活に近いのは、“持ち家の帰属家賃”を除いた、3%というインフレ率でしょう。実際、総務省も厚労省も、“持ち家の帰属家賃”を除いた数字をもとに“実質賃金”と“実質消費”を計算しています。深刻なのは、足元の物価上昇が加速していることです。1月から4月までの4カ月間に限ると、インフレ率は年率47%になっている。
 日銀の“生活意識に関するアンケート調査”でも、今年4月時点で消費者が感じるこの1年の物価上昇率は、平均66%、中央値50%となっています」
 日本経済は、給料は上がらないのに物価だけは上がる、最悪の事態に突入している。

物価高はあと1年続く
 このインフレはいつまで続くのか。日銀の黒田総裁が言うような「一時的」な現象ではないだろう。今後もどんどん上がっていく恐れが強い。
 実際、この夏から秋にかけて、値上げラッシュが控えている。燃料価格の上昇に伴い、東京電力など大手電力4社は、7月の電気料金を値上げする。東電は標準的な家庭の1カ月当たりの料金を、6月比301円増の月8866円にするという。たった1年間で1800円以上も値上がりすることになる。
 ビールなど飲料品の値段も上がる。大手各社は、10月1日納品分から一斉に値上げする予定だ。
 この先、インフレは1年以上つづく可能性が高い。
 24日付の日経新聞コラム「大機小機」によると、過去50年間で商品価格の高騰は6回起き、いずれも戦争が契機だったそうだ。高騰が落ち着くのに、16カ月程度の時間がかかったという。ロシアによるウクライナ侵攻が始まったのは2月24日だから、来年の6月24日まで物価上昇が続くと思った方がいいだろう。
 しかも、企業の“価格転嫁”が本格化するのもこれからだ。国内の企業物価指数は、今年2月に前年比9.3%増加した後、3月に9.5%、4月には10.0%と毎月、上昇。今後、価格転嫁が進み、時間差で消費者物価に波及してくるに違いない。経済ジャーナリストの荻原博子氏はこう言う。
「足元でも高騰する小麦の価格に、戦争の影響が本格的に織り込まれるのは10月以降です。まだ物価高は続く可能性が高いでしょう。しかも、政府も日銀もさしたる対策を取っていない。岸田首相は『検討します』としか言わない“検討使”と揶揄されていますが、このままだと物価高はなかなか収まらないと思います」

切り札は消費税の凍結
 このままでは、日本のインフレ率も、アメリカや欧州のように7%、8%となりかねない。一刻も早く手を打つ必要があるだろう。
 アメリカも欧州も、物価上昇を抑えるために、一斉に利上げに動いている。すでに米連邦準備制度理事会(FRB)と英イングランド銀行は利上げを実施し、欧州中央銀行(ECB)も7月には利上げに踏み切る予定だ。さらに、韓国の中央銀行も2カ月連続で利上げすることを決めている。
 ところが、日本だけは、日銀の黒田総裁が頑として利上げを認めない
「日銀が利上げすれば、円安もストップして輸入物価が下がるから、二重の効き目がある。物価上昇が抑制されるのは間違いありません。でも、黒田総裁は、利上げしたくてもできないのでしょう。利上げしたら、一気に景気が悪化しますからね。他国と違って日本には利上げする体力もないということです」(金融関係者)
 金利を上げられないのなら、消費税減税に踏み切るしかないのではないか。
黒田総裁が利上げを嫌がっているなら、消費税減税を実施すべきです。時限的にでも消費税を凍結すれば、物価上昇を抑えられるはずです。現在、10%の税率をゼロ%にすれば、単純計算で1割、物価が下がります。税率をゼロ%にすれば、店のレジの切り替えも簡単でしょう。それに消費税を凍結すれば、物価上昇が止まるだけでなく、消費を喚起して経済対策にもつながるはずです」(斎藤満氏=前出)

関心はインフレ対策より軍事費倍増
 ところが、岸田首相には、この狂乱物価を抑え込む意志が全く感じられない。日銀に利上げを求めることもせず、消費税減税もやろうとしない。そもそも、補正予算がたったの27兆円では話にならない。
 国民を苦しめる物価高を放置する一方、「軍事費倍増」にシャカリキになっているのだから、どうかしている。
 自民党は、防衛費の対GDP比を現状の1%から2%に倍増させることを提言。実現すれば、予算規模は5兆円も増え、約11兆円に膨張する。岸田はバイデン米大統領との首脳会談の場で「防衛費の相当な増額をする」と伝えたそうだ。しかし、ドンブリ勘定で軍事費を5兆円も増やしたら、アメリカから余分な兵器を買わされるのは目に見えている。庶民を無視して米国に媚びるとは、どういうつもりなのか。
「欧米諸国も物価高に襲われていますが、賃金も上がっています。ところが、日本は賃金は上がらず、年金の給付金は減らされています。可処分所得が減っているのに、この物価高騰では、生活防衛も限界です。なのに、岸田政権のやっていることといえば、ガソリン価格抑制のため『過去最高益』の石油元売りへの補助金支給くらいです。内閣発足時に打ち出していた『所得倍増』に至っては、いつの間にか『資産所得倍増』に変わってしまった。今、資産を増やすために投資する余力のある国民がどれだけいるというのか。現状が分かっていないとしか思えません」(荻原博子氏=前出)
 こんな岸田政権の支持率が過去最高を記録しているのだから摩訶不思議だ。国民は本当にこれでいいのか。