元経産官僚の古賀茂明氏の掲題の記事を紹介します。
古賀氏は高市内閣の支持率が急落している理由として、国民の意見とかけ離れた内容の皇室典範改定法を成立させたこと、物価高対策が消費税減税を含め遅々として進まないこと、緊急性のない国旗損壊罪法や副首都法などをゴリ押しして成立させたことなどへの反発、誹謗中傷動画問題やサナエトークンなどのスキャンダルに真摯に向き合わず説明責任を回避していることへの批判があると見ています。
虚妄の高支持率というメッキが剥げてしまうと、もう高支持率を回復することは不可能です。高市首相が今後対決する相手はマーケットになりますが、そこにはこれまでオールドメディアが採って来たような高市氏への忖度はありません。
現に21日には高市政権の見せ場になる筈の〝骨太の方針″(経済財政運営と改革の基本方針)を閣議決定しましたが、マーケットでは 財政支出増加、国債発行を想定した金利上昇と円安が加速する「骨太ショック」と呼ばれる現象が起きました。
高市政権は骨太方針の決定にあたって、巨額の財政支出をぶち上げたかったのですが、そのために財政規律が失われることはないと市場に見せるために、派手な財政支出の表現は避けざるを得ないという二律背反に陥ったのでした。
そして予算編成で大きな論点となる防衛費拡大の具体的水準には言及しませんでした。困難を先送りしたということです。
古賀氏は、高市首相自身は何か新たな歳出を行うには必ず財源が必要だということを全く認めていないと見ています。高市氏は、単年度の基礎的財政収支は軽視して、債務残高対GDP比を安定的に引き下げていけば良いという考え方なのですが、そもそもGDPが高い成長率を示すという保証はないので、それでマーケットの信頼を維持しようとするのには無理があり、長期金利上昇と円安が進むことがはっきりと予測できると断言します。
インフレを加速させてインフレ税を含めた税収の大幅増を実現して、ギリギリのところで財政破綻を防ぐしかないということであれば、高市首相にはほとんど自由がなく死んだも同然ということです。
インフレ・円安を加速させれば国民の生活苦は一層増大します。それでも年末に先送りした防衛費の拡大は何が何でも実現しようとするでしょうから、いくら「反中感情を煽って」みても国民の「高市政権拒否」は高まるばかりです。
古賀氏は「軍事費をGDP比を5%ではなく1%に抑えれば、年間約27兆円も浮く。2%を1%にするだけで6.7兆円だ。それを他の支出に充てるか、財政再建のために使うことが可能だ。さらに、富裕層増税や法人税増税、金融所得や不動産所得への課税強化、資産課税や相続税強化など、あらゆる財源について議論すべきだ。大企業補助金のカットや租税特別措置の廃止も行う。その上で、マイナンバーによる資産・所得の把握で富裕層への課税強化も行うべきだ」と提言します。そういう政治こそが必要なのです。
いずれにしても高市首相の政治生命は終わりました。
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「天皇陛下に弓を引いた」高市内閣の支持率が急落! ゾンビのように生き残ろうとする政府の次の一手は「反中国」への国民扇動 古賀茂明
古賀茂明 AERA 2026/07/28
何が起きても下がらないと言われていた高市早苗首相の内閣支持率が急落している。毎日新聞の7月の世論調査では、支持率 41%(10ポイント減)、不支持率 44%と、初めて不支持率が支持率を上回った。「報道ステーション」(テレビ朝日系)、朝日新聞、読売新聞などの同月の世論調査でも支持率は大幅に下落している。
その理由としては、国民の意見とかけ離れた内容の皇室典範改正をほとんど審議しないまま成立させたこと、物価高対策が消費税減税を含め遅々として進まないこと、緊急性のない国旗損壊罪法や副首都法など高市首相と日本維新の会が執着するものだけはゴリ押しして成立させたことなどへの反発、誹謗中傷動画問題やサナエトークンなどのスキャンダルにも真摯に向き合わず説明責任を回避していることへの批判などがあると分析されている。
ただし、国会では、自民党は衆議院で3分の2を占める。衆議院で可決した法案を参議院で否決されても再議決で成立させる力を持ち、圧倒的に優位な立場にある。したがって、どんなに支持率が下がっても、衆議院で内閣不信任案が可決する可能性はなく、野党に政権の座を追われるリスクはない。自民党総裁の地位を守っている限り、首相の地位は安泰だ。
高市首相の強権的な党運営には自民党内でも批判が強いようだが、石破茂、岩屋毅、村上誠一郎各氏のようなごく一部の重鎮議員を除き、表で高市首相に異を唱える議員はいなかった。異常に高い支持率を誇り、2月の衆議院選挙で歴史的大勝を収めた首相に逆らうことは難しかったからだ。
しかし、今回のような支持率急落という事態を見れば、党内の雰囲気は大きく変わる可能性があるが、7月25日に閉会し、人事の季節だ。ある自民党の重鎮議員は、秋までに行われる党役員人事と内閣改造を前にして、口をつぐむ自民党議員ばかりだと嘆いていた。
そうだとすると、人事が終わった後、10月ごろから開かれる臨時国会における野党の追及がどの程度国民に響くか、言い換えれば、その影響で高市首相の支持率がさらに下がるのかどうかが、来年秋の自民党総裁選に向けた党内の反高市勢力の動向を左右することになる。高市首相としては、臨時国会前になんとかして以前の高支持率を取り戻し、臨時国会に備えてある程度余裕のある状況を作っておきたいところだ。
「骨太の方針」で見せ場を外した高市政権の焦り
では、高市首相の支持率が上がるとしたらどんな場合だろう。国会閉会中は、マスコミは、政府の新しい政策などを報じるので、首相の露出が増え、しかも、それは政権の宣伝に使える内容が中心になる。支持率はある程度戻るのが普通だ。それに勢いをつけるために、さまざまな話題作りなどを準備していることだろう。スピードスケートの五輪金メダリスト・高木美帆さん(引退)に国民栄誉賞を授与するという話もその一環だ。
しかし、今年の夏から年末にかけて、高市首相には大きな戦いが待っている。その相手は、野党ではない。マーケットだ。
その話は、5月19日配信の本コラム「『米国隷属』の高市政権では消費税ゼロは実現できず『金利上昇』『円安』は待ったなし! ツケを払う国民はますます貧しくなる」で述べたことと重なるが、現在の状況を踏まえて、ポイントを書いておこう。
高市政権は、7月21日に「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を閣議決定した。骨太の方針は高市政権にとって見せ場であるはずだったが、その思惑とは正反対に、原案発表段階から、内容が高市首相の積極財政政策を反映すると予測され、市場では、財政支出増加、国債発行を想定した金利上昇と円安が加速する「HONEBUTOショック」と呼ばれる現象が生じた。
決定にあたっては、迫力ある政策を推進するために巨額の財政支出をぶち上げたいという要請があったが、それと同時に、そのために財政規律が失われることはないと市場に見せるために派手な財政支出の表現は避けざるを得ないというジレンマに高市政権は陥った。
最終的な骨太には、消費税減税の結論先送りと財政規律の大幅な緩和をしながらも極めて楽観的な成長率と税収の増加見通しが書かれていた。
今後の予算編成で大きな論点となる防衛費の拡大についての具体的水準には言及がなかった。ジレンマの中で可能な限り「派手にぶち上げ」つつ、市場に最大限配慮したというところだろう。
全くの偶然だが、面白いことに、骨太が決定された前日(現地時間20日正午)、もう一人の首相が高市首相と同じジレンマの中で新たに登場した。英国のアンディ・バーナム首相だ。
そのバーナム氏の首相就任直後の短いスピーチを聞いて、私は、日本が進むであろう恐ろしい道筋を想像してしまった。
社会保障を抑制して防衛強化する英国
労働党のバーナム氏は、マンチェスター市長として人気を博した政治家だ。「小さな政府」のサッチャリズムを批判し、民営化や緊縮財政、規制緩和の流れを見直し、財政規律のルールの緩和を唱えていた。
財政規律緩和という点では、高市首相と似ている。バーナム首相誕生で歳出圧力が強まると見た市場では、首相就任前から長期金利上昇の動きが始まった。
そのバーナム新首相が就任スピーチで何を語ったか。私は二つの部分に注目した。日本人にとって教訓になるからだ。
第一は、「生活費の高騰に苦しむ人々に、少しでも余裕を取り戻していただくための支援を始めます。その具体策については明日から順次発表します」と話した後に、「それをどのように財源面で実現するかについてもお示しします」と続けた点だ。
弱者対策をやる場合でも必ず財源対策がセットになるということを当然の前提としていることがわかる。保守党のリズ・トラス元首相は、中央銀行が引き締めに動く中で財源なき拡張政策を掲げて、債券、株、ポンドのトリプル安という市場の反乱に遭い、わずか40日で余り政権を追われた。その教訓が縛りとなっている。
第二に注目したのは、若者への支援や公営住宅の建設などの対策を並べた直後に、「それこそが、公正かつ持続可能な形で社会保障費を抑制し、財政規律を守り、国際社会のパートナーに対する防衛上の責任を果たす公平で持続可能な道です」と続けたことだ。
つまり、社会保障を抑制して財政規律を守り、防衛強化を行うことが最終目的だと言っているようなものである。
英国では、社会保障を抑制して財政規律を守り、防衛力を強化しようというような発想を政権与党が堂々と主張し、しかも、そのことが何のニュースにもならない。すなわち、誰もが当たり前のことだと考えている。
多くの日本人には驚きではないだろうか。ただし、私の感想は、「やはりそうなんだ」というものだ。なぜなら、今や、欧州の大半の国において、国防が最優先で、そのためにはいかに社会保障を抑制するか、いかに増税するか、さらに、いかに国民をより多くの時間働かせるのかということが大きなテーマになっている。
その理由は、ロシアの脅威だ。そうしたことの一部はこれまでも本コラムで取り上げてきた。したがって大きな驚きはない。
長期金利上昇と円安が進む
今回特に強調すべきことは、労働党の中でもより弱者寄りの政策を掲げるバーナム氏が首相になっても、国防最優先という大枠に変化がないことがわかったということだ。ロシアの脅威の前に、「国防」と言えば社会保障を削る大義となる。
国防と財政規律という二つの呪文が英国首相を縛っている。高市首相も、実は、似たような状況にある。
しかし、大きく異なるのは、何か新たな歳出を行うには必ず財源が必要だということを高市首相自身は全く認めていないことだ。骨太には日銀の独立性を尊重するかのような表現を入れたなどと言われるが、前年まであった「財政健全化」の文言が「財政の持続可能性」に置き換わった。単年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を軽視して、債務残高対GDP比を安定的に引き下げていくという。
しかもGDPの高い成長率が前提となっていて、何の保証もない。成長投資のための借金は別枠で考えるとか、借金してもリターンが大きく税収が増えるから心配ないというようなロジックで、なんとか市場の信頼を維持しようと必死だ。
しかし、そんな子供騙しの理屈で市場が納得するはずはない。「責任ある積極財政」と言いながら、「財源なき放漫財政」に陥るのではないかと疑念を持たれることで、長期金利上昇と円安が進むことがはっきりと予測できる。
今、積極財政を言葉の上では並べているものの、具体策を出すと市場の反乱に遭うことが確実になっているため、動くに動けない。それが高市首相の置かれた立場だ。
骨太に消費税の減税を書くとショックが大きくなると恐れ、あえて8月上旬まで間をあけ、その間に骨太への市場の不信感を何とか払拭して、消費税の財源問題を曖昧なまま年末に先送りすることへの市場の黙認を取り付けようとしたと見られるのも、手足を縛られた高市首相の実情を物語る。
しかし、8月上旬に財源を明示しないまま消費減税を決めれば、必ず金利上昇と円安が再び進行し、大規模介入に追い込まれる。しかし、その効果は長続きせずにさらなる円安が進むだろう。3回目の介入は、前述の本コラムで指摘したとおり、米国(スコット・ベッセント財務長官)との関係を考えてももうできない。
国民の生活は苦しいが防衛費は拡大
これによりインフレは加速し、日銀は金利の引き上げを迫られる。それでも、円安を止めるレベルまで一気に引き上げることは困難で、結局円安とインフレは続く。国民の不満が高まるので、バラマキが必要となり、高市首相は年末には再び何らかのばら撒き策を講じなければならなくなるのではないだろうか。
こうして、財政規律はどんどん緩み、円安も止まらない。しかし、インフレで税収は伸びるため、政府債務残高の対GDP比はそれほど上がらないかも知れない。
一方、労働者の実質賃金は上がらず、生活は苦しくなる。さらに住宅ローン金利の上昇などで、貧困層ではない中間層世帯の生活苦も加わる。高市首相が生活を楽にしてくれるという期待は完全に裏切られるわけだ。
それでも、年末に先送りした防衛費の拡大については、高市首相は何が何でも実現しようとするだろう。しかし、そこで財源がないまま進めば、さらなる円安と金利上昇が待っている。増税や保険料引き上げは国民の怒りを買うのでできない。
その際、注意が必要なのは、事実上、防衛費最優先の政策を推進することに対する国民の不満をかわすために従来以上に国民の反中感情を煽ることだ。
「中国が怖い、危ない」と思わせるために、国民に気付かれないように中国への敵対行為を行い、それに少しでも中国が反応して強行措置を取ってくれば、待ってましたとばかりに大々的に宣伝して、「中国の攻撃に備えるためにどうしても防衛費の拡大が必要です」と訴える。それを繰り返すうちに、「ロシアが欧州攻撃の準備を進めている」と危機感を煽って、軍拡予算のために社会保障費を削ろうと堂々と言える欧州諸国のような環境を作っていくのだ。
もちろん、国民を騙しても市場は騙せないから、金利上昇と円安は続き、国民はますます苦しくなるだろう。
高市政権は、結局は、インフレを加速させてインフレ税を含めた税収の大幅増を実現して、ギリギリのところで財政破綻を防ぐ(国民から見れば、十分破綻と言える状況だが)しかないということだ。
こう考えると、高市首相にはほとんど自由がなく、絶体絶命の状況だ。もう死んだも同然。私が親しくしているある自民党議員がこう言った。
「天皇に弓を引いたのだから、高市さんが終わるのは当然だ。しかし、その後に来るのが麻生太郎副総裁の傀儡の茂木敏充外相とかだったら離党したいね。小泉進次郎防衛相だったら日本は破滅だよ。自民党は人材枯渇だ。残っているのは、林芳正総務相くらいだが、彼に動く根性があるのかというと心許ない。高市政権が続いても終わっても、先は暗いね」
野党も支持率が低いまま
一方、野党はどうか。今回の皇室典範の改正に賛成した中道改革連合への怒りの声はものすごい。本来、高市内閣の支持率が10ポイント落ちれば、中道の支持率は5ポイントくらい上がりそうなものだが、上がらない。立憲民主党はどうかと見ても低い支持率のまま。
つまり、国民は、リベラル政党もほぼ見限っているのだ。高市首相は死んでも生き延びるゾンビだという悪口を言う人もいるが、野党もすでに死んだのに死にきれないゾンビのように見える。
財源がない、財源がないと繰り返されるが、本当か。よく考えてみよう。まずは、歳出カットだ。防衛費の対GDP比の拡大の中止を宣言することが日本を救うことになる。GDP比1%は約6.7兆円。現状の2%をNATO並みに3.5%、関連経費を含めて5%にするという議論があるが、それを1%に戻せとか、さらには戦闘機開発やミサイル配備をやめろと言える政党はないのか。「中国と戦争しないと約束する」という公約を打ち出せる政党はないのか。中道や立憲は、防衛力強化に正面から異を唱える勇気がない。軍国主義的な法案にも多くの場合賛成してきた。
GDP比を5%ではなく1%に抑えれば、年間約27兆円も浮く。2%を1%にするだけで6.7兆円だ。それを他の支出に充てるか、財政再建のために使うことが可能だ。
さらに、富裕層増税や法人税増税、金融所得や不動産所得への課税強化、資産課税や相続税強化など、あらゆる財源について議論すべきだ。大企業補助金のカットや租税特別措置の廃止も行う。
その上で、マイナンバーによる資産・所得の把握で富裕層への課税強化も行うべきだ。さらに政府が庶民のために税金を使ってくれるという信頼を得られれば、消費税も上げて良い。ただし、食料品などの生活必需品を非課税にすることは続けても良いだろう。
高市首相にも、その後継を狙う自民党議員にも、政権交代を目指す野党議員にも、逃げ道はない。撤回すべきは、嘘とまやかしの骨太の方針だけではない。野党もいい加減な公約を撤回すべきだ。減税すれば、給付金を渡せば経済成長するから財源は不要というようなでたらめな経済政策はやめて、取るべきところからしっかり取るということを大きな声で提示すべきである。
高市首相の政治生命は終わった。それは真実かもしれない。それにもかかわらず、生き延びているのは、ひとえに野党のふがいなさとマスコミの無能力さにある。
死んでいるのに死にきれない。ゾンビ首相とゾンビ野党が徘徊する日本に明るい未来など訪れるはずはない。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。