政府が30日発表した9月の各種経済統計によれば、1世帯(2人以上)当たりの消費支出は27万4309円となり、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比0・4%減になりました。勤労者世帯の実収入は1世帯当たり41万5467円と実質で1・6%減少しました。また15年度の実質GDP(国内総生産)の伸び率は政策委員の見通しの中央値で1・2%でこれまでの見通し1・7%を下回りました。
また同日出された日銀の10月の「展望リポート」では、「2016年度前半ごろ」としていた2%の物価上昇目標の達成時期を「16年度後半ごろ」に先送りしました。
首相からアベノミクスという言葉を聞かなくなってから久しくなります。アベノミクスの立ち往生ぶりは最早隠しようもありません。
アベノミクスの本質は結局日銀の異次元金融緩和策だけで、その他の要素は全く機能しませんでした。その異次元緩和も、資金需要がないところでいくら緩和を行なっても空回りするだけ(実体経済は改善しない)で、結局は株価を引き上げて大企業や富裕層を富ませるだけの効果しかありませんでした。しかもその結果日銀の国債買取額は300兆円を超え、その保有率は10年度の4倍の28%に達し、国債市場は完全に官製相場化して健全性を失いました。
国債をいくらでも買い取ってもらえる市中銀行にとって、いまや日銀当座預金は重要な資金運用手段となったので、日銀はその桁外れな預金に対して莫大な利息を払い続けていますが、それはそのまま国民の負担するところとなっています。
こうしたいびつな形は近い将来正常化(出口)を目指すときに、止めどのない円安や極端なインフレを招く惧れがあるということです。
政権が庶民のためにやったのは個人所得を直撃する消費増税と労働者非正規化だけでした。個人の可処分所得を削減する政策だけをやっていて景気が上向くはずはなく、デフレ脱却などは夢物語です。
安倍首相の新しいスローガンは「経済で結果を出す」で、こんな窮地にあるなかで一体何をやるのかと思えば、そこで出された新3本の矢は何んと経団連の方針をそのままなぞったものでした。
弱肉強食の経済を是正するものこそが政治の筈ですが、安倍政権にあるのはひたすら戦前回帰への願望だけで、本来の政治に立ち返る意思は見受けられません。
しんぶん赤旗の記事とブログ「日々雑感」の「自公与党は軽減税率議論をしている場合か」を紹介します。
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アベノミクス立ち往生 家計消費支出0・4%➘ 勤労者実収入1・6%➘
物価目標も先送り
しんぶん赤旗 2015年10月31日
政府が30日発表した9月の各種経済統計は、家計消費支出の落ち込み、勤労者世帯の実収入の減少など、家計に厳しい経済状況を浮き彫りにしました。日銀が同日発表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、「2016年度前半ごろ」としていた2%の物価上昇目標の達成時期を「16年度後半ごろ」に先送り。アベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)の立ち往生ぶりがいよいよ鮮明になりました。
総務省が同日発表した9月の家計調査(速報)によると、1世帯(2人以上)当たりの消費支出は27万4309円となり、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比0・4%減になりました。マイナスは2カ月ぶりです。同省は、消費支出の基調判断を「足元では横ばいの状況となっている」とし、前月までの「このところ持ち直している」から後退させました。
勤労者世帯の実収入は1世帯当たり41万5467円と実質で1・6%減少し、6カ月ぶりにマイナスとなりました。過去最高を更新している大企業のもうけが家計には及ばないことを改めて示しました。
9月の全国消費者物価指数(2010年=100)は、価格変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が103・4となり、前年同月比0・1%下落しました。日銀が「異次元の金融緩和」を導入した13年4月以降では初めての2カ月連続のマイナスとなりました。
日銀が発表した10月の「展望リポート」では、物価上昇が2%程度に達する時期を従来の見通しから半年先送りしました。成長率見通しも下方修正。15年度の実質GDP(国内総生産)の伸び率は政策委員の見通しの中央値で1・2%。これまでの見通し1・7%を下回りました。
自民党の新しいスローガンは「経済で、結果を出す」です。しかし、看板政策の「デフレからの脱却」は行き詰まり、壁に突き当たっています。統計数値は、八方ふさがりの「結果」がすでに出ていることを示しています。
自公与党は軽減税率議論をしている場合か
日々雑感 2015年10月31日
<黒田東彦総裁は30日の記者会見で強調した。生鮮食品とエネルギーを除いた消費者物価指数の上昇率は9月に前年同月比1・2%となり、8月の1・1%から拡大。2013年の異次元緩和導入後の最大の伸び率を更新したことが根拠だ。
ただ原油安の影響は大きく、エネルギーを含む総合指数は9月まで2カ月連続で下落した。原油の影響はいずれ剥落するとはいえ、0%程度で推移すれば人々の物価上昇期待が鈍りかねない。日銀内でも「基調に変化が出るか慎重に見極めないといけない」(幹部)との声は強まっている。
「経済成長と物価にやや下方リスクが大きい」(中略)
「物価だけが上がれば良いわけではない。賃金も上がり企業収益も増えていくという経済全体のバランスが取れた形でないと2%目標を安定的に達成するのは難しい」
日銀の悩みは賃金上昇が広がりを欠き、物価上昇に追いついていないことだ。物価の影響を除いた実質賃金はプラス圏に浮上し始めたばかり。一段の賃上げが進まないなかで追加緩和に踏み切り、円安で物価ばかりが上がると、消費が冷え込み、かえって物価の安定した上昇が遠のく。政府内でも追加緩和への慎重論が広がっていた。(中略)
「イングランド銀行は7割くらいまで(国債を)買い進んだ」 (中略)
会見で「追加緩和の手段が尽きているのでは」と聞かれた黒田総裁は英国の例を引き、「手段に限界があるとは思っていない」と強調した。(中略)
「2年程度を念頭に置くことが無理だとか無駄だと思っていない」
異次元緩和を導入した13年春に「2年程度を念頭に」としていた物価目標の達成時期は16年度後半に先送り。緩和導入から足かけ4年となり、日銀には「いつまでも先延ばしすると、人々の信認を失いかねない」(幹部)との焦りも出ている>
(以上「日経新聞」より引用)
アベノミクスは日銀の異次元金融緩和策だけの安倍自公政権不存在の経済政策だった。ただ安倍自公政権がやったのは個人所得を直撃する消費増税と労働者非正規化だけだ。個人の可処分所得を削減する政策だけをやっていて景気が上向くはずはなく、物価水準も対前年比マイナスに陥っている。
それでも景気は緩やかに回復している、とする日銀総裁の景気観測はどんな実態を見ているのか疑問だ。日銀による国債買取も300兆円を超えて、もはやタコ足金融緩和の実態をあらわにしている。連結決算という概念を政府系法人に持ち込めば、日銀の株真の過半数を政府が有しているため政府と連結しなければならず、そうすると発行済み国債残の内、日銀保有の国債は相殺される。つまり国家会計の連結決算を実施すると日本の国債残は700兆円ということになる。
それを異常とも思わず、日銀総裁は英国中央銀行は英国の発行済み国債の7割を買い入れているから日銀にはまだまだ国債を買い入れる余地があると強弁しているが、年間GDP以上もの国債を日銀が保有するとしたら国際的な信認どころか「円」の信用は地に墜ちてハイパーインフレを招くことに議論の余地はない。
それでも自公与党政治家たちは財務官僚の掌で踊らされて軽減税率の議論を演じている。つまり毎日のように2017年4月から消費税を10%に上げると予告宣伝を行っているのだ。
これ以上個人可処分所得を減少させて、どうやって経済成長させるつもりなのだろうか。法人減税を実施するまでもなく、法人の内部留保は最大を更新している。安倍自公政権が労働配分率を低下させる派遣業法の野放図な規制緩和という愚かな政策を進めているのだから当然の結果だ。
安倍自公政権は金の卵を産むガチョウを殺してしまおうとしている。そんなことをしてはダメだという教訓を、安倍自公政権の政治家諸氏は知らないようだから、さぞかし幼い頃に「金の卵を産むガチョウ」の童話を母親から読み聞かされていなかったのだろう。母親の愛情を知らずに成長した政治家たちが政権に座ると国民にかくも無慈悲な政策を強いて平気なのだろう。
安倍自公政権はこの国を徹底的に破壊しようとしている。そして米国にすべてを貢ぎ、米国のポチそのものに成り下がろうとしている。腐り切ったマスメディアも無批判に米国の戦略に踊り、多くの国民を貧困層へ落とし込もうとしている。