2015年11月15日日曜日

9条改憲より恐ろしい「緊急事態宣言」条項!

 憲法に「緊急事態条項」を導入することの危険性は13日に取り上げたばかりですが、今回は「9条改憲より恐ろしい緊急事態宣言条項!」(山本弘之 ネットIBニュース)を紹介します。
 
 1933年2月にドイツで「緊急事態宣言」が出されると、その直後の数日間に5000人が司法手続きなしで逮捕・予防禁され、行方不明となりました。その事実はドイツ国民に決定的な恐怖心それに無力感諦観を与え、8ヶ月後の選挙におけるドイツ国民の投票行動に驚くべき激変をもたらしました
 ヒトラーはその後はそうした大弾圧は行わなかったのですが、最初の恐怖政治で国民の側が従順になったので、あとはヒトラーの思うがままの独裁政治が行われ、ついにナチス・ドイツによるあのユダヤ人に対する蛮行に至りました。
 
 山本氏は、緊急事態条項」は9条の改憲よりも恐ろしいものなので、来年の参院選まで約9カ月の今、緊急事態宣言条項阻止に重点を移すときだと、述べています
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9条改憲より恐ろしい「緊急事態宣言」条項!
ネットIBニュース 2015年11月13日
 10月下旬に新聞に掲載された意見広告が警告した「緊急事態宣言を可能とする憲法改正の危険性」が来年夏の参院選挙後、現実のものになる危険が出てきた。
 
 安倍首相が11月10、11日の衆参予算員会の国会閉会中審査で、憲法改正の極めて重要な課題として、「緊急事態条項」の必要性を強調したからだ。自民党は、来年の参院選で与党が77議席以上当選し参院で3分の2以上を占めれば、憲法改正の発議を狙うことができる。
 自民党憲法改正草案の緊急事態宣言条項には、「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」とある。緊急事態が宣言されると、「何人も、法律の定めるところにより」「国その他公の機関の指示に従わなければならない」という内容だ。
 
独裁国家をつくったナチス・ヒトラーの手口
 冒頭に紹介した意見広告は、10月下旬に朝日新聞などに掲載されたもので、「ナチス憲法 あの手口に学んだらどうかね」という麻生太郎財務相の発言を取り上げながら、自民党憲法改正草案の「緊急事態宣言」条項の危険性を訴えていた。意見広告を出したのは、一人一票の実現に取り組んでいる升永英俊弁護士、伊藤真弁護士らだ。
 
 麻生財務相が「学んだらどうか」と言った手口と言えば、ナチス・ヒトラーが、1933年3月、行政府(内閣)に立法権などを与えた全権委任法によって、国民の知らないまま憲法を変えて、独裁国家をつくった歴史が思い浮かぶ。当時もっとも民主的と言われたワイマール憲法が停止させられ、ナチス・ヒトラーが権力を握った。
 だが、ナチスが圧倒的多数を占めたのは、全権委任法の結果だけではない。
 
ナチスに反対した7割が緊急事態宣言でほぼ全員賛成に!!
 升永弁護士は、ナチス・ヒトラーが選挙で圧倒的多数の議席を握った事情を、こう説明する。
 「1933年2月28日に、ドイツでは、『緊急事態宣言』が出た。1933年2月28日から数日中に、約5,000人が司法手続きなしで、逮捕・予防禁され、行方不明となった。32年11月6日の選挙では、669%の選挙人がナチス以外の政党に投票した。『緊急事態宣言』下、1年後の33年11月12日の総選挙(投票率95%)では、ナチス支持票が、92%であった。すなわち、32年11月6日の選挙ではナチスに反対する政党に投票した、全選挙人の669%のほぼ全員が、ナチスを支持した。すなわち、1932年のドイツ人(ただし、32年11月6日の選挙で、ナチスに反対する政党に投票した、全投票人の669%人々)は、ほぼ全員、司法手続きなしの、逮捕・予防拘禁・その後の行方不明を知って、恐怖心と無力感と諦観から、ナチスを支持した」。
 つまり、「1933年のドイツ人は、緊急事態宣言下の司法手続きなしの逮捕・予防拘禁・行方不明を知って、心は、折れた」(升永弁護士)のだ。
 
緊急事態宣言で、国民主権が自然死する
 緊急事態宣言が可能となると、言論の自由も、表現の自由も、報道の自由も、デモも封殺される
 9月に成立した安保法にしても、憲法調査会での憲法学者3氏の違憲発言や、SEALDsの国会前デモがなければ、もっと早く無風状態で成立したのは想像に難くない。
 安保法案反対の行動ができたのも、表現の自由が日本にあるからだ。しかし、緊急事態が宣言され、ナチス・ドイツのようになれば、弾圧される覚悟なしには、海外派兵反対もTPP反対も、プラカード1枚掲げられなくなるだろう。
 民主主義が機能するには、単に投票権があれば足りるわけではない。候補者選択を判断する十分な情報が言論の自由、報道の自由によって提供され、容易にアクセスでき、意見表明や、デモなど政治的行動の自由がなければ、民主主義は機能せず、国民主権は、形式上存在しても、自然死する
 
 護憲派は、長く憲法改正の焦点として「9条を守れ」をスローガンにしてきたが、来年の参院選まで約9カ月の今、緊急事態宣言条項阻止に重点を移すときだ。 【山本 弘之】