2015年11月8日日曜日

「自衛隊は南沙諸島に行くべきでない」 元陸自方面総監

 南シナ海・南沙諸島の人工島をめぐる中国と米国の緊張関係に、安倍官邸周辺は「やった、やった」と大ハシャギで、LITERAによれば、すでに自衛隊を南シナ海に派遣すべく具体的に動き始めており年明けには米艦隊と一緒に人工島の12カイリ内を航行する計画も密かに進んでいるということです。「精神年齢12歳」という言葉を思い出させるような愚かさです。
※ 10月31日 南シナ米中衝突の危機に官邸周辺は大ハシャギ 
 アメリカは今度カーター国防長官が空母に乗り込んで南シナ海を視察するということで、今後南シナ海での米中の緊張関係は定期的に反復されるものと見られますが、最も避けるべきことは隣国の日本がそれに悪乗りして、米海軍の驥尾に付して12カイリ内に侵入したりすることです。虎の威を借るが如くにして米艦に随行すれば、世界から失笑も沸き起こることでしょう。
 世界の警察官を自認するアメリカにとっては必要な航行であったとしても、隣国でまして9条を擁する国家が行うべき挑戦ではないからです。それに日本のシーレーンに対して、致命的な影響を及ぼしているわけでもないのですから。
 
 北部方面総監外国特派員協会で記者から質問されて、「日米同盟は絶対的に重要です。しかし、アジア圏においての日本は全方位外交が前提。もし12カイリ内で航行すれば、日中関係にどんな影響を及ぼすかを考えなくてはいけません」と官邸の軽挙妄動の非を厳しく指摘したということです。極めて当然の話です。
 しかし先には、リーダーであれば持つべき良識や自制心を投げ捨てて安保関連法を成立させた安倍政権は、今度は隣国を相手に暴走しようとしています。
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「海自は南沙に行くべきでない」元陸自方面総監が強烈な一言
日刊ゲンダイ 2015年11月7日
 南シナ海をめぐる米中の覇権争いが日増しにエスカレートしている。ついに、カーター国防長官が原子力空母「セオドア・ルーズベルト」に乗り込み、南シナ海を視察することが明らかになったのだ。すでに米軍は中国が造成している人工島の12カイリ(約22キロ)内にイージス艦を航行させている。そのうえ、カーター長官が空母を訪問すれば、一帯の主権を主張する中国を刺激するのは確実だ。
 
 恐ろしいのは、この争いに日本が巻き込まれる危険が現実味を帯びてきたことだ。軍人出身の共和党の重鎮、ジョン・マケイン上院議員が5日の朝日新聞のインタビューで12カイリ内の航行を日本にも促し、それに呼応するように、菅官房長官が「今後、十分に検討していくべき課題だ」と、海上自衛隊の参加を示唆し始めたのだ。
 
 そんな折も折、5日、外国特派員協会で興味深い会見があった。北海道の陸上自衛官3万人のトップを務めた元北部方面総監・酒巻尚生氏が、南シナ海への海自派遣を強く牽制したのである。言っておくが、酒巻氏は政府批判のために会見に臨んだわけではない。むしろ目的は全く逆で、“元軍人”の立場から、安保法制の必要性と自衛官の社会的地位の向上、平和を守るために国民が負うべきリスクを強く訴えた。
 ところが、参加者から「公海上の南シナ海の海域で、海自が米軍と一緒に航行しても問題ないのではないか?」と問われると、キッパリとこう言った。
 
「日米同盟は絶対的に重要です。しかし、アジア圏においての日本は全方位外交が前提。もし12カイリ内で航行すれば、日中関係にどんな影響を及ぼすかを考えなくてはいけません。万が一、中国の行動が我が国のシーレーンに対し、致命的な影響を及ぼすとなれば話は別ですが、その段階においても政治的にはかなりハードルの高い問題になってくると思います」
 
 ゴリゴリの元軍人の酒巻氏が「おかしい」と言ったことを、菅官房長官は国民の承諾もなしにシレッとやろうとしている。この国は明らかにヘンな方向に進もうとしている。