2021年4月24日土曜日

3度目「緊急事態」失政は明白 大阪の悲惨 第4波収束は9月と専門家

 首相は23日の記者会見で東京都、京都府、大阪府、兵庫県を対象として期間は4月25日から5月11日まで緊急事態宣言の発出を決めたと述べましたが、僅か17日間の自粛で事態が一体どれほど改善すると見ているのか不思議としか言いようがありません。その席上で「これまで再び宣言に至らないように全力を尽くすと言ったが、今回の事態に至り、心からお詫びする(要旨)」と陳謝しました。これまで何の努力もして来なかったのですから、心から詫びると言われても白けるだけです。

 河北新報が「3度目の『緊急事態』/失政のつけ 国民に回すな」との社説を出しました。
 菅首相の無為無策は新型コロナを甘く見ているからとしか思えません。彼は首相になったばかりの頃「この1年間でコロナのことがほぼ分かってきた」と豪語しましたが、一体何を分かったというのでしょうか。特異株の流入を簡単に許したのも菅政権の後手後手の不十分な対応からでした。特異株がこの先どれだけの猛威を振るうのは見当もつきません。
 無為無策も含めて「失政」というのであればまさにその一語に尽きます。

 ところで特異株が猛威を振るっている大阪府は悲惨を極めています。
 重症者数は328人に達し病床数272床を56人分上回ったため、その人たちは軽症用及び中等症用ベッドに受け入れたということです(人工呼吸器などはありません)。
 感染者のうち自宅療養者と入院待機者の合計は22日の時点で約1万2000人に達し、そのうち9人が今月亡くなりました。
 新規感染者数/日は4月13日の1351人をピークに24日まで1100人~1200人超を維持(19日(月)を除く)していて、指数関数的増加は一応収まりましたが定数増加の傾向は止まりません。
 それなのに吉村知事が、詐術的言辞を交えてTVに出ずっぱりというのも不思議なことです。

 日刊ゲンダイの記事「この首相では悪夢の無間地獄 国民が求めるのは自粛と引き換え『首相交代』」を併せて紹介します。
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社説 3度目の「緊急事態」/失政のつけ 国民に回すな
                         河北新報 2021年04月23日
 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、政府は東京都と大阪府、兵庫県、京都府を対象に3度目の緊急事態宣言を発令する方針を決めた。
 大阪と兵庫は5日から、京都は12日から「まん延防止等重点措置」が適用されたが、効果が上がっていない。大阪は変異株が広まり、重症者数が重症病床数を超える「医療崩壊」に陥っている。
 東京もリバウンド(感染再拡大)の危機に直面し、飲食店などに休業要請・命令が可能になる緊急事態宣言に早々とかじを切った。12日に重点措置期間が始まったばかりだ。失敗だったのは明白だ。
 宣言は国民の権利と生活を制限する。不自由を強いる事態をなぜ、回避できなかったのか感染防止の決め手と目されるワクチンの入手も出遅れ、接種率は先進国で最低レベルだ。失政のつけが国民に回ってきている。政治の責任が厳しく問われよう
 東京が宣言を短期集中型にしたがったのは、長引けば、7月23日に開幕する東京五輪・パラリンピックに影響が及ぶと懸念したからだ。開催都市だけに「五輪ありき」の姿勢が顕著だ。
 政府と与党には5月中に宣言を解除すれば、五輪に支障はないと見込む向きがある。
 最も優先すべきは、命と健康であるはずだ。宣言は政府の手中に残る「最後のカード」だ。再三切れば、効力は薄らぎかねない。医療供給体制に余裕が生まれないかぎり、宣言は解除すべきではない
 宣言の五輪への影響について、菅義偉首相は20日、「オリンピックは(影響は)ないと思っている」と言明した。切迫した状況を前に、認識が甘すぎないか
 首相は「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証しとして開催する」「安全安心な大会になるように全力を挙げたい」とも述べている。
 ならば、コロナ禍を克服できず、安全性が危ぶまれる場合は、開催を再考すべきではないか政治的なメンツにこだわった揚げ句の強行開催を誰が支持するだろうか
 東京と大阪は、休業要請の対象に、飲食店のほか、百貨店、テーマパーク、ショッピングセンターといった大型施設も含める方向で検討している。感染防止のガイドラインを順守し、対策を徹底してきた施設にとっては、努力が報われないことに等しい。
 休業すれば、収入を得るすべがなくなり、取引先を含め、事業存続や雇用継続が苦しくなるのは必至だ。
 損失をそのまま補償する規定は、新型コロナ対応の改正特措法にはない。代わりに経営支援として協力金が支給されてきたが、損失の一部を補うにすぎない。
 政府はコロナ禍に備え、2021年度予算で5兆円の予備費を確保している。3度目の「緊急事態」だ。今度こそ、その場しのぎではない救いの手を差し伸べるときだ


この首相では悪夢の無間地獄 国民が求めるのは自粛と引き換え「首相交代」
                       日刊ゲンダイ 2021年4月23日
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 新型コロナウイルスの新規感染者数は、3カ月ぶりに全国で5000人の大台を超えた。
 感染拡大第4波が猛威を振るう中、ようやく政府は3度目の緊急事態宣言発令を23日、正式決定。宣言に準じる「まん延防止等重点措置」が適用されている東京、大阪、兵庫、京都の4都府県が対象で、期間は25日から5月11日まで。都は酒類を提供する飲食店に休業要請、酒類を出さなくても営業時間は午後8時までの時短要請。大型商業施設については生活必需品を販売するエリア以外は休業、イベントは原則無観客実施を求めるという。
 愛媛県はまん延防止措置の適用対象に追加。つまるところ、今年のゴールデンウイーク(GW)もまた全国的なステイホームだ。この国の政府は一体いつになったら後手後手、泥縄から抜け出せるのか。
 昨年10月の臨時国会。菅首相は所信表明演説で「爆発的な感染は絶対防ぐ」と威勢がよかったものの、足元では第3波が立ち上がり始め、大みそかには都内の新規感染者が1000人を突破。年明け早々に2度目の宣言発令に追い込まれると、「1カ月後に必ず事態を改善させる」と強がったが、全面解除は2カ月半後。それも、感染再拡大の兆しが見えているにもかかわらず、4日後に予定されていた東京五輪・パラリンピックの聖火リレー開始を優先した判断だった。その時も「感染拡大を二度と起こしてはいけない」と決意だけは立派。しかし、緩い水際対策を突破した変異株を甘く見て感染は急拡大し、わずか1カ月で逆戻りである。インドの感染急拡大の要因となっている二重変異株の流入も判明。感染力が高まり、ワクチンが効かない可能性があるとみられていて、22日までに5件が確認されている。

アジアを下回りアフリカ並みの接種率
 デタラメ尽くしだった安倍政権同様、菅政権もちゃらんぽらんだ。
 感染拡大の兆候をつかむPCR検査件数はコロナ禍の1年を経ても、最大で10万件足らず。数万件がせいぜいだ。「感染対策の決め手」と意気込んでいたくせに、ワクチン供給をめぐっては主体性ゼロ。米ファイザー社との供給契約を詰め切れず、「6月末までに6000万人分供給」としていたのが、「年内7200万人分供給」に後退させた。世論の怒りに焦り、訪米した菅がニューヨークにいるファイザーCEOに電話した成果として「9月末までに供給されるメドが立った」と胸を張ったが、数量も確約なのかも定かではない。20、21日の国会審議で追及された菅は「9月までに対象者に確実に供給できるよう追加供給を要請し、先方からは協議を迅速に進めたいとの話があった。相手方の関係もあり、詳細は差し控えます」と言葉を濁し、「差し控える」を5回も繰り返した。要するに、具体的な合意事項がないから、話せることがないんじゃないか。
 英オックスフォード大の研究者らが運営する「アワー・ワールド・イン・データ」(20日時点)によると、国内で少なくとも1回の接種を受けた割合は1・10%。ネタニヤフ首相と諜報機関モサドが陰に陽に動き回ったイスラエルの61・96%、金に糸目を付けない英国48・82%や米国39・85%に遠く及ばない。何かと敵視する韓国3・46%、見下すアジア3・67%を下回り、アフリカ0・80%をかろうじて上回っている程度だ。首相官邸のHP(21日時点)によると、最前線で働く医療従事者で2回接種を終えたのはまだ17・23%。「65歳以上の高齢者もスタート」というアリバイづくりのため、高齢者を割り込ませた結果、医療従事者が後回しにされるアベコベ。高齢者で1回接種したのは0・1%で、2回はゼロだ。
 これで五輪強行となれば、医療従事者は新型コロナ、ワクチン接種、五輪の三正面作戦を強いられることになる。正気の沙汰じゃない。政治の不始末を押し付けられた医療提供体制が崩壊寸前に陥るのは、自明の理なのである。

重症病床100%超、続発する自宅待機中の死亡
 菅と近い大阪維新の会代表の吉村知事がトップの大阪の状況は極めて深刻だ。新規感染者数は連日のように最多更新し、22日は1167人。3日連続で1000人を上回った。重症者向けの病床使用率は100%超え。収容しきれない56人は軽症・中等症の病床で治療中で、こちらもおよそ8割が埋まっている。入院先などが決まらず自宅待機する患者も急増。第3波ピーク時の1505人を8割も上回る2600人超え。今月だけで、自宅療養中や入院・療養先を調整している間に自宅で死亡したケースが9人。大阪市内では入院までに7時間以上も救急車内で待機させられるケースも出ている。隣接する兵庫でも自宅待機中に2人が亡くなっている。
 先進国では最低の検査数、ワクチン接種、病床逼迫。加えて、自宅療養者を見殺しにし、反省のそぶりもなく、口からデマカセを言い続ける首相をなぜ、続けさせるのか。災害並みの大阪の実態、ワクチン接種がたった1%なのに現場の大混乱。この首相では悪夢の無間地獄である。国民が求めるのは、自粛と「首相交代」の引き換えだ。
 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)は言う。
「3度目の緊急事態宣言発令は、これまでの新型コロナ対策が失敗だったという事実の裏返し。新たな法律を作り、反対を押し切ってまで罰則を強化させた『まん延防止等重点措置』は効果を発揮しなかった。コロナ禍は災害レベルの危機。トップリーダーこそ身を切る覚悟が求められるのに、菅首相にはそうした心構えはない。政治的思惑優先で、中途半端な対策に終始し、国民には自粛自粛で痛みを押し付けた上に、ツケまで回す。政治は結果責任です。ケジメをつけて辞職すべきです」

真面目にやらないなら引っ込め
「人類がコロナウイルスに打ち勝った証し」をあらため、菅が「世界団結の象徴」と言い出した五輪の開催まで100日を切った。カウントダウンが始まる中での3度目の宣言について、「影響はない」と一蹴。IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長も「関係ない」と言っていたが、国民の暮らしは権力亡者やカネの亡者の目に入らない。
 そもそも、「1年延期」という微妙な判断も政治的思惑からだった。IOC総会で福島第1原発について「アンダーコントロール」と大嘘をついた安倍が、首相として五輪を迎えたいがために「日本の技術力は落ちていない。ワクチンができる」と根拠のない楽観論をぶったのだ。後を継いだ菅が五輪を重視するのは、長期政権への足掛かりとみているから。お祭りムードの中、解散・総選挙に打って出て勝利を収め、9月末に任期切れとなる自民党総裁選で無投票再選。そして、本格政権への歩みを進めるという算段なのだ。だから、コトここに至っても五輪に執着するのである。
 失政続きの首相がどのツラ下げて緊急事態を宣言し、休業を要請するのか。やるなら辞任と五輪中止が物事の順序というものだろう。
 政治評論家の森田実氏はこう言う。
菅首相の頭にあるのは延命のみで、利己的な願望だけで政治をやっている。こうまで堕落した政治指導者を置いておくから、まったく意味のないことしかやらない。客観的に情勢を分析できず、願望だけで突っ走り、敗戦を招いた戦前の軍部と同じです。〈政は民を養うにあり〉が政治の基本なのに、飲食店をいじめ、弱い個人に責任を負わせることしかしない。孟子の言葉に〈木に縁りて魚を求む〉とあるように、方法を誤ると目的は達せられないのです。真面目にやれよ、やれないなら引っ込めと言いたい。一刻も早く総辞職すべきです」
 ムダ死になんて御免蒙る。