2021年4月14日水曜日

「完成の可能性は低い」辺野古にいつまでしがみつくのか(高野孟氏)

 辺野古新基地の一部の海底地盤が脆弱なのにその部分の水深が対策工事の限度を超えているため、「完成する可能性は低い」(仮に完成しても沈下対策の土盛りが延々と続く)ことは既に米国のシンクタンクや議会関係者が見透かしていることです。
 仮に不完全なゴマカシ工法を採るにしても完成までには10年を要するのですが、そもそも工事方法の変更の認可が沖縄県から下りない以上、工事再開の見通しは立ちません。
 菅首相は、トリチウム汚染水の海洋放出を決めるのが政治の仕事だと意味不明のことを口にしたようですが、暗礁に乗り上げた辺野古新基地のこうした事態を解決するのこそが政府の責任です。ましてや前政権で6年もの間「沖縄基地負担軽減担当」相に就いていたのですから尚更です。
 日刊ゲンダイに「永田町の裏を読む」を週1で連載している高野孟氏が、米戦略国際問題研究所が昨年11月に出した報告書の執筆者:マーク・カンシアン元海兵隊大佐「私的な見解だが海兵隊が空軍嘉手納基地を使用することも考えられる」と語ったのを取り上げて、菅政権はいつまでも25年前の案にしがみつくのをやめて、この勧告に従うべきだろうと述べました。
 嘉手納統合案は、鳩山政権時代に高野氏などが唱えていたことで、嘉手納基地内のゴルフ場を潰すなどして海兵隊を一時移転させ、普天間は即時返還させた上で、海兵隊を丸ごとグアムやハワイに移す交渉を急速に進めるという案です。
 高野氏は、またそこに戻ればいいのではないかと述べています是非そうすべきでしょう。
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永田町の裏を読む
「完成の可能性は低い」辺野古にいつまでしがみつくのか 
                      高野孟 日刊ゲンダイ 2021/04/08
                        (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 米ジョージタウン大学の「戦略国際問題研究所(CSIS)」が昨年11月に出した報告書で、沖縄・普天間海兵隊基地の辺野古移設について「完成する可能性は低い」と指摘していたことが明らかになった。朝日新聞(4日付)が、報告書を執筆したマーク・カンシアン元海兵隊大佐への追加インタビューを織り交ぜて報じた。
 CSISと言えば、安保・外交に関わる最有力のシンクタンクのひとつで、ジョセフ・ナイ元国防次官補やリチャード・アーミテージ元国務副長官らのいわゆる“知日派”(という名の“日米安保マフィア”)がここを拠点にして対日政策勧告を繰り出してきたことで知られる。
 そこから「辺野古基地が完成する可能性が低い」という判断が出てきたとなるとただ事ではないので、さっそく原文に当たった。報告書そのものは、21会計年度の予算との関わりで米海兵隊の再編がどう進もうとしているのかを論じたもので、その終わり近くに「バッド・ニュース(悪い知らせ)」として「沖縄/グアム/日本」の小項目がある。海兵隊としては沖縄の基地負担を軽減すべく部隊をグアムはじめ日本本土、ハワイ、米本土に移そうとしてきて、日本政府の負担によるグアムの基地は昨年9月にすでにオープンしているが、辺野古については「引き続き困難を抱えていて、完成期日が2030年に再延期され、また費用が急騰している。同基地はいつになっても完成することはないかに見える」と、日本政府にとっては絶望的な見方を述べている。

 朝日の記者はそこに着目して執筆者本人にアプローチ、次のような発言を引き出している。「7万1000本も杭を打たなければならない(辺野古の軟弱)地盤は明らかに不安定」「現行の計画では完成する可能性は低く、小規模化するなど別の計画なら完成するかもしれない」「私的な見解だが(海兵隊が)空軍嘉手納基地を使用することも考えられる」など。いずれもまことに常識的な判断で、菅義偉政権はいつまでも25年前の案にしがみつくのをやめて、この勧告に従うべきだろう
 嘉手納統合案は、鳩山政権が再検討を言い出した頃に私などが唱えていたことで、嘉手納基地内のゴルフ場を潰すなどして海兵隊を一時移転させ、普天間は即時返還させた上で、海兵隊を丸ごとグアムやハワイに移す交渉を急速に進めるというもの。またそこに戻ればいいのではないか

高野孟 ジャーナリスト

1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。