2021年4月19日月曜日

日米首脳会談 軍拡に突き進む約束許せない(しんぶん赤旗)

 しんぶん赤旗が「日米首脳会談 軍拡に突き進む約束許せない」とする「主張」を出しました。

 「主張」は、声明の中で日米同盟とインド太平洋地域の安全保障を一層強めるためとして、日本が「自らの防衛力を強化する」と約束したことは極めて重大であるとしました。そして「中国の覇権主義的行動が到底容認できないのは当然はあるものの、「中国と軍事力の増強を競い合うことは、軍事的な緊張を高め、問題解決に逆行することは明らか」とも述べました。
 声明は、米軍駐留経費の大幅アップに向けての交渉を進めることを明らかにし、辺野古基地が普天間基地問題を解決する唯一の方法であることを双方で確認したとしていますが、それらが民意に反しているのは明らかです。
 また「台湾海峡の平和と安定の重要性」が明記されのは、トランプ政権以降 中国を打倒しようとしている米国が、ここにきて俄かに6年以内と期間にまで言及した上で台湾有事が起きると宣伝し出したことと関係しているのは言うまでもありません。しかし台湾有事を引き起こしたいのはむしろ米国であるというのが識者の見解です。
   ⇒4月11日)台湾有事のシナリオ – 対中戦争から最後まで離脱できない日本
    4月14日)台湾有事・米中戦争・第三次世界大戦は三位一体
 目下米国は、周辺の国や同盟国を語らって中国に対する包囲網を構築しようとしていますが、それに安易に同調するのは極めて危険です。
 声明で、主語が「米国」であるものの、核を含むあらゆる種類の米国の能力を用いた日米安全保障条約の下での日本の防衛に対する揺るぎない支持を改めて表明した」と敢えて謳ったのも、核兵器の使用を容認するものであって極めて重大です
 しんぶん赤旗の記事3編を紹介します。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
主張 日米首脳会談 軍拡に突き進む約束許せない
                       しんぶん赤旗 2021年4月18日
 菅義偉首相がバイデン米大統領と初めて対面で会談しました。両首脳による共同声明は、「台湾海峡の平和と安定の重要性」を明記しました。声明の中で、日米同盟とインド太平洋地域の安全保障を一層強めるためとして、日本が「自らの防衛力を強化する」と約束したことは極めて重大です。中国の覇権主義的行動が到底容認できないのは当然です。しかし、中国と軍事力の増強を競い合うことは、軍事的な緊張を高め、問題解決に逆行することは明らかです。

新たな基地負担を強いる
 日米の首脳間の文書に「台湾」が明記されるのは、1969年の佐藤栄作首相とニクソン大統領の共同声明以来52年ぶりとされます。今回の共同声明は、中国が軍事的圧力・威嚇を強める台湾の問題に触れるだけでなく、東シナ海での一方的な現状変更の試みや、南シナ海での不法な海洋権益の主張と活動に「反対」を表明しました。この際、重要なことは、中国の主張と行動が国際法にいかに違反しているかを具体的に指摘し、その順守を求めることです。
 ところが、共同声明はそうした冷静な批判を欠いたまま、日本の軍事力増強とともに、日米両国の「抑止力及び対処力」や「拡大抑止」=「核の傘」の「強化」、「サイバー及び宇宙を含む全ての領域を横断する防衛協力」の「深化」をうたいました
 日本の軍拡という点では、元米国防総省幹部が、中国「抑止」のためには、日本は軍事予算を国内総生産(GDP)の1%程度にとどめず、2%に増やすことが「最低限必要」と述べています(コルビー元国防副次官補、「時事」15日配信)。
 菅氏は首脳会談後の共同記者会見で、今回の共同声明を「日米同盟の羅針盤」と語りました。これをたてに日本が際限のない軍拡に突き進むことは許されません
 日米軍事協力を今後あらゆる面で「深化」させるとしたことも大問題です。
 米軍は、中国に対抗し、沖縄をはじめ日本の南西諸島やフィリピンなどの「第1列島線」に地上発射型の中距離ミサイルの配備を検討しています。また、台湾や南シナ海での有事をにらんだ新たな作戦構想を打ち出しています。
 米海兵隊は、多数の小規模部隊を「第1列島線」の島々に展開させて、ミサイルや航空機の基地を構築し、そこから中国軍を攻撃するという「遠征前進基地作戦」(EABO)を進めています。米空軍も一時的な基地で航空機への迅速な整備・補給を行う「機敏な戦闘運用」(ACE)という構想を持っています。
 実際、これらの作戦を想定した訓練が、沖縄をはじめ日本各地の米軍基地で行われています。沖縄県民や日本国民に新たな基地負担が強いられることは避けられません。

自衛隊を米軍支援に動員
 有事となれば、米軍の拠点となる日本の基地が攻撃対象にされ、自衛隊が米軍支援に動員されることになります。
 中国への軍事的な対応を強化することは、“軍事対軍事”の危険な悪循環を生み出すだけです。何よりも大事なことは、中国の覇権主義・大国主義に反対する国際世論を高め、外交的に包囲することです。


日本国民に危険と負担をもたらす軍事同盟強化の道に反対する
         日米首脳会談について 志位委員長談話
                       しんぶん赤旗 2021年4月18
 日本共産党の志位和夫委員長が17日に発表した日米首脳会談についての談話は次の通りです。
                   
 一、日米首脳会談の共同声明では、「日米同盟を一層強化する」と、日米軍事同盟を全面的に強化する方向が打ち出された。
 日本政府は、「自らの防衛力」の強化を誓約し、日米両国は、「抑止力及び対処力」を強化すること、「サイバー及び宇宙を含む全ての領域を横断する防衛協力を深化させる」こと、「拡大抑止」=「核の傘」を強化することが明記された。
 沖縄県民が繰り返し「ノー」の審判を下している辺野古新基地を相も変わらず「唯一の解決策」とし、馬毛島の軍事拠点化推進で合意したことも重大である。
 さらに、「在日米軍駐留経費負担に関する有意義な多年度の合意を締結すること」が確認され、すでに約8000億円と世界に類のない異常な多額となっている在日米軍駐留経費負担を継続・拡大する道が明記された
 これらの合意は、地球的規模での日米の軍事的共同を全面的に推進し、核兵器禁止条約など平和を求める世界の流れに逆行するとともに、日本国民に耐えがたい犠牲と負担をもたらす、危険きわまりないものである。
 日本共産党は、こうした軍事同盟強化の道に断固として反対を貫く。

 一、日米共同声明は、東シナ海における中国の「一方的な現状変更の試みに反対」するとともに、南シナ海における中国の「不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対」を表明している。また「香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念」を表明している。
 中国による東シナ海や南シナ海における覇権主義、香港や新疆ウイグル自治区などにおける人権侵害は、もとよりきびしく批判されなければならない。そのさいに何より重要なことは、中国による国際法に違反する主張と行動を具体的に指摘し、国際法の順守を冷静に求めていくことにある。
 この点で、日米共同声明は、中国の覇権主義を象徴している中国海警法に対して国際法違反との批判が欠落しており、中国の不法性の指摘は南シナ海における「不法な海洋権益の主張」にとどまっている。中国が行っている重大な人権侵害に対しても、「深刻な懸念」をのべるだけで、この行動が、世界人権宣言、国際人権規約、ウィーン宣言などの国際的な人権保障の取り決めに反する、国際問題であるという批判が欠落している。これでは中国の覇権主義、人権侵害に対する本質的批判にならない。
 くわえて重大なのは、日米共同声明が、中国のこれらの問題への対応を、「日米同盟の強化」の文脈に位置づけていることである。国際法にもとづく冷静な批判を欠いたまま、軍事的対応の強化をはかることは、軍事対軍事の危険な悪循環をもたらすだけである。

 一、日米共同声明は、「台湾海峡の平和と安定の重要性」に言及している。ここでも問題なのは、共同声明がこの言及を「日米同盟の強化」の文脈に位置づけていることである。
 台湾問題の解決のためには、台湾住民の自由に表明された民意を尊重すべきであり、非平和的な手段は断固として排されるべきであって、中国が軍事的圧力・威嚇を強化していることに、わが党は強く反対する。
 同時に、日米両国が、台湾問題に軍事的に関与する方向に進むことにも、わが党は断固として反対する。
 台湾問題の解決は、あくまでも平和的話し合いで行われるべきであることを、この機会に強調したい。


「対中国」で同盟強化 鮮明 「台湾」52年ぶり声明明記
        辺野古は推進 日米首脳が会談
                       しんぶん赤旗 2021年4月18日
【ワシントン=遠藤誠二】菅義偉首相とバイデン米大統領による初の日米首脳会談が16日午後(日本時間17日未明)、ワシントンのホワイトハウスで開かれました。1月に就任したバイデン氏と対面で会談した首脳は菅氏が初めて。発表された共同声明は、「日米同盟を一層強化する」と表明。「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」と明記し、1969年11月の佐藤栄作首相とニクソン大統領の共同声明以来、52年ぶりに「台湾」が日米首脳の共同合意文書に盛り込まれました
 会談後の共同記者会見で両首脳は、中国への軍事的圧力を前面に掲げた3月の日米安保協議委員会(2プラス2)での認識を確認。菅氏は「抑止力、対処力を強化していく。防衛力強化への決意を伝えた」と言明し、軍事力の強化を誓いました。米側は共同声明で「核を含むあらゆる種類の米国の能力」に言及。核兵器禁止条約に真っ向から背き、「核抑止」を掲げました。
 また、共同声明は沖縄県・米軍普天間基地の「固定化を避ける唯一の解決策」だとして、名護市辺野古の米軍新基地推進を明記。馬毛島(鹿児島県西之表市)への米空母艦載機着艦訓練場や在沖縄米海兵隊のグアム移転など基地強化を掲げました。さらに、米軍思いやり予算特別協定について、「有意義な他年度の合意を締結する」ことが盛り込まれました。
 両首脳は、東シナ海、南シナ海における中国の「力による現状変更の試み」への反対で一致。共同声明で、新疆ウイグル自治区と香港の人権状況をめぐり、「深刻な懸念を共有する」と明記。北朝鮮の核・ミサイル開発や日本人拉致問題に言及し、ミャンマー情勢について懸念を表明しました。
 両首脳は経済や新型コロナウイルス、気候変動でも合意文書を発表。高速大容量規格「5G」と次世代規格「6G」の最先端通信技術開発に日米で計45億ドル(4900億円)を投資することで合意し、中国とのハイテク分野での競争に共同で対抗する姿勢を示しました。半導体を含む機微なサプライチェーン(供給網)や重要技術の育成・保護での協力でも一致しました。
 共同会見でバイデン氏は、最先端技術への投資は、「専制主義ではなく、民主主義の規範によって管理されている」と強調し、中国との対抗意識をあらわにしました。