植草一秀氏が、「菅コロナ対応が最悪である理由」とするブログを発表しました。
短く簡潔に書かれていますが、独自の視点での分析が行われていて説得力があります。
鈴木貴博氏の記事「『コロナ第4波』対策に期待できないことを、国民が一番知っているワケ」を併せて紹介します。
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菅コロナ対応が最悪である理由
植草一秀の「知られざる真実」 2021年4月10日
コロナ対応で政府が果たすべき役割は以下の五つ。
1.徹底した検査
2.陽性者の行動抑止
3.正確な情報の周知
4.生活の保障
5.重篤化しやすい人の保護と病床確保
この五つを確実に実行するべきだ。
日本政府はコロナ問題が表面化して以降、一貫して1と2をおろそかにしてきた。
最初の試金石はダイヤモンド・プリンセスだった。
乗員乗客3711人に対して、当初273人にしか検査を実施しなかった。
直ちに全員に検査を行い、陽性者を隔離することが必要だった。
検査を小出しに行い、全員を狭い船内に監禁した。その結果として、ダイヤモンド・プリンセスの悲劇が生み出された。明白な人災。
コロナに感染して重篤化した人、死亡した人の家族から刑事告発や民事提訴があっておかしくない。
日本政府は徹底して「検査と隔離」の感染症対策の基本を拒絶し続けてきた。この間違った対応はいまも続けられている。
3の正確な情報の周知も行われていない。もっとも重要な情報はコロナ感染症の実態である。
陽性反応が確認された人のうち、無症状の比率がどれだけなのか。
発症した陽性者のうち、軽症、中等症、重症の比率。
重症化した陽性者の年齢別データと基礎疾患の有無、基礎疾患の種類の情報が極めて重要だ。
高齢でない者で基礎疾患を持たない人のなかで、重症化した事例、死亡した事例の数と内容が広く周知されるべきだ。
現在公表されているデータでは、日本の場合、陽性者に対する死亡者の比率は1・9%。
全世界では4月10日現在で、陽性者数1億3535万人に対して死者が292・9万人。
死亡率は2・2%。死亡率は全世界データと日本データで大きな違いがない。
大きく異なるのは、人口当たりの陽性者数。
日本の人口1000人当たりの陽性者数は3・9人だが、同じ人口1000人当たり陽性者数がチェコ147人、米国96人、スウェーデン84人、フランス76人、英国64人になっている。日本の16倍から38倍の水準だ。
それでも、日本の人口当たり陽性者数は東アジアでは突出して多い。
中国0・06人、台湾0・04人、ベトナム0・02人で 日本の62分の1から146分の1の水準だ。
日本の1日当たりコロナ死者は1月のピークで121人だった。年率換算では4・4万人。
無視できる水準でない。
これまでの累計死者数は9334人で、これはインフルエンザ並。
重要なことは重篤化す事例が基礎疾患を持つ人と高齢者にほぼ限られているのかどうか。
高齢者のうち、基礎疾患がないのに重篤化した事例、死亡した事例がどれだけ存在するのかが重要だ。
これらの重要事実が周知されずに「大変だ、大変だ」と恐怖を煽ることは適正でない。
政府が実行するべき施策の4として生活保障があるが、これが機能していない。73兆円もの追加財政支出が決定されたのに、本当に支援が必要な人の手元に支援が向けられていない。
政府がとりわけ力を注ぐべきは、5の重篤化するリスクの高い人を十分に保護すること。
そして、国公立病院、国公立大学病院において、十分なコロナ病床を確保すること。
菅内閣は五つの基本施策のひとつも十分に実行していない。
基本政策をおろそかにして感染抑止と感染推進の間で右往左往を繰り返すだけ。
4月25日の国政三選挙では、菅政治に対して明確なNOの意思を表示することが何よりも重要だ。
「UIチャンネル」第380回放送、鳩山元首相との対談がアップされております。
https://bit.ly/37cW7Bs ぜひご高覧賜りたい。
「コロナ第4波」対策に期待できないことを、国民が一番知っているワケ
鈴木貴博 ダイヤモンドオンライン 2021.4.9
百年コンサルティング代表
「コロナ第4波」の拡大は
企業の経営崩壊の現場に似ている
私はこれまで経営コンサルタントとして、経営崩壊の現場をいくつも経験してきたのですが、そういったときの共通の現象として、トップの思考停止が起きるのを何度も見てきました。それと同じ光景を見ている気がします。大阪や宮城の「コロナ第4波」が、全国に拡大しないかどうかの瀬戸際の状況にあることについての話です。
思考停止とは、要するに対策がルーティン化することであり、かつその対策には効力がないという可能性から目を背けることです。
まん延防止措置がとられることになった大阪では、街頭のインタビューで市民が「普通に今の対策じゃ減らないと思う」と答えていることが、おそらく真実をついていると思います。「裸の王様」の寓話と同じで、市民だけが本当の問題に気づいている状態です。
議論を進める前に、実に興味深いデータがあるので紹介したいと思います。グーグルが提供するGPSデータなのですが、ひとことで言えば東京とその近郊だけが自粛を続けていて、それ以外の道府県は人出が多すぎるのです。
直近、4月2日のデータによれば、東京都の飲食店や小売店エリアの外出状況をコロナ以前と比較した数字では、人出は26%減です。これは緊急事態宣言発出中のマイナス30%台と比較して、若干緩んではいるものの、それでもまだ自粛が明確に続いていることを表す数字です。
同様に東京では、ターミナル駅の人出が30%減、職場が25%減。確かに都内の電車は座席に座ることができるくらいには空いているし、Zoom会議やリモート出社も続いています。
それと比べて大阪府は飲食店・小売店エリアの人出が16%減、乗換駅は21%減、職場は14%減と自粛が弱い。実は、これは宮城県も同様ですし、東京以外の全国平均もだいたい同じ水準です。つまり菅首相や西村大臣、小池知事の監視の目が光っているところにおいてだけ、日本人はおとなしく自粛命令に従っていて、それ以外の場所では気が緩んでいるということが、データから見て取れるのです。
取り締まりの厳しくない場所へ
国民が逃げて生じる「予想外の密」
ところで、このデータの一番興味深いところは、それだけではありません。グーグルの調査ポイントの中に「公園」というカテゴリーがありますが、東京の公園への人出が14%減なのに対して、他の府県ではコロナ以前よりも総じて増加しています。大阪は4%増、全国平均は8%増、そして宮城に至っては25%増になっているのです。
つまり法律で、「20時で営業停止」「21時までに緩和」とうるさく言われている場所から市民が逃げているだけで、他のところに新たに「密」ができている。実際に市井で暮らす人々はそのことがわかっているから、「普通に、今の対策じゃ減らないと思う」とインタビューにコメントするわけです。
官邸や都庁にいて、歌舞伎町や銀座のガラガラ具合だけを目にしている行政側の人たちは、自分のお膝元以外の日本各地で「無言の市民の反乱」が起きていることに、気づかないのです。
それが、思考停止というものです。そして「緊急事態宣言」という言葉を「まん延防止措置」にすり替えて、同じ対策ばかりを繰り返している。官僚は上から言われたことをやっていれば叱られないので、それでいい。これと似たことが、冒頭で述べたように経営が崩壊する現場では、本当に毎回起こる。私たち経営コンサルタントが「思考停止」と呼ぶ状況が、コロナ対策の現場にも起きているのです。
では、何がまずいのでしょうか。コロナ対策で思考停止が起きていることについて、まずい点が2つあります。表面的なことと、より本質的なことの2つですが、まず表面的なことから整理してみます。
表面的な話とは、「接触を減らさなければ新型コロナのまん延は抑えられない」ということです。昨年の緊急事態宣言時には、日本全体でターミナル駅の人出は46%も減っていました。だから昨年の第1波は収束したわけです。
それに比べて今回は、データを見れば明らかに「コロナ慣れ」が起きていて、人出が大して減っていない。昨年の4月末は、コロナ陽性者が何人の人に感染させるかを示す実効再生産数が0.5台まで下がりましたが、今年の4月上旬の数字は全国で1.25、大阪府は1.64です。
接触を減らすには職場のリモート推進も徹底させるべきですし、休日には繁華街だけでなく、公園に外出する息抜きも本当は控えさせるべきです。しかし、そうした厳しいことを強制すれば、当然市民も企業も反発します。
不十分だとわかっていても
飲食店や若者を狙い撃ちする「思考停止」
そこで、思考停止が起きます。効果が不十分だとわかっていても、飲食店だけを狙い撃ちして営業時間を20時までに抑える。それで感染者が減らないと、メディアに「若者が犯人だ」と言わせる。これは実は、若者に対するヘイトスピーチです。本当は中高年だって、マスクを外して騒いでいます。
つい先日も、私が夕食に訪れたお店で新宿区の教育関係者とおぼしき団体が酒を飲み、大騒ぎしていました。お店の人が何度も「他のお客さんの迷惑になるのでやめてください」と下座の幹事さんに懇願するのですが、一番年長と思われる6~70代のお偉いさんが奥の席で泥酔して大声を出しており、組織の力関係のせいか、誰もそれを止められないようでした。
私はジャーナリストではありませんが、このように「迷惑な中高年だって、若者と同じくらい数は多い」ということは、きちんと「報道」しておこうと思います。
さて話を戻すと、飲食店対策だけでは総合的に見て役に立たないとしても、現状の打ち手が印象操作だけの対策になっているのがわかっていたとしても、そこだけに予算がついているので、やらざるを得ない。一方、その他の対策である職場の出社制限も市民の外出制限も、予算がないから手をつけないのです。
そうやって思考が止まっている限りは、「役所はやれることはやったが、残念ながら第4波がきてしまった」という未来が訪れることは、当然予測されたわけです。
そしてもう1つ、この問題にはより本質的なポイントがあります。これは随分以前から私だけでなく多くの方々が問題提起していることですが、コロナまん延防止と経済のどちらを優先するか、態度をはっきりさせたほうがよくて、まん延防止だけがこの問題のゴールではないという点です。
裸の王様に「王様は裸だ」と叫んだ子どもの気持ちになって断言させていただくと、日本は今回の第4波だけでなく、この先の夏の第5波も防ぐことは難しいはずです。理由は、ワクチンの供給を海外に頼っている関係で、ワクチン接種が遅れているからです。
人口100人あたりの接種回数で見ると、世界で一番進んでいるのがイスラエルで、すでに100回を超えています(注:一般的に、接種は1人2回必要だとされるので、100%の接種率になるには人口100人あたり200回の接種が必要)。
これに次ぐのがアメリカやイギリスで、ほぼ50回超となっています。こういったワクチン接種が進んだ国では、この夏の旅行が解禁になるなど経済が復興する方向に動いています。欧州ではイギリスが進んでいる一方で、ドイツ、フランス、スペインなどの大陸部では20回弱と接種が遅れ、そのことで政権が非難を浴びています。
各国の状況と比較して日本がどうかというと、直近で人口100人あたりの接種回数は1回。そもそもワクチンを外国から買っている以上、こうした低い水準になるのは当たり前です。このような理由があって、結果だけ言えば、世界の先進国から見て、日本は滅茶苦茶ワクチン接種が遅れているわけです。
ワクチンが入ってこなくても
医療崩壊を食い止められる日本の特徴
そしてここが問題なのですが、ワクチンが入ってこない以上、暖かい季節が来て人出が増えれば、新型コロナは間違いなく増加します。これが、日本の抱える構造的な問題です。
しかしもう1つ、日本人はなぜか欧米人と比べて、新型コロナの感染でも重症化率が低いという「ファクターX」の効果があることが、この1年ちょっとの経験からわかっています。だとしたら、これから平均気温が高くなる5月以降の新型コロナの拡大局面では、昨夏同様に医療崩壊を起こさない可能性が考えられるわけです。
そこで原点に話が戻りますが、そうした状況を見据えた上で、コロナまん延防止と経済のどちらを優先すべきかを、政府がなぜきちんと判断しないのか――。その点こそが、私は思考停止問題の本質だと思うのです。
思考停止の状況においては、医療出身の尾身茂氏が政府の感染症対策分科会会長をしている限り、対策は自動的に「たとえ経済が悪化しても、まん延防止に重点を置く」ことになります。経産省出身の西村大臣もコロナ対策担当なので、ミッションとしてはまん延防止にどうしても重点を置いてしまう。
つまり、そのさらに上のトップが判断しなければ、コロナ対策はまん延防止寄りで思考停止してしまうというメカニズムにあるのです。
大阪・宮城の第4波を封じ込めたいなら、まん延防止のような緩い方針ではなく徹底して封じ込めるべきですし、それができないとわかっているのであれば、表面的な対策だけであまり飲食店をいじめてほしくないと思います。
現状の対策が続くだけでは
「暗い未来」しか見えない
これから先、2021年の日本の未来はどうなるのでしょうか。この後、だんだん暖かくなって、政府や都や府県からは中途半端で実効性のない営業時短が繰り返される中、市民は仕方なく公園に出かけてうさを晴らす――。去年に続いて、今年もそんな春と夏を迎えることが、現状の延長線上に予測されます。
賛否は分かれるかもしれませんが、それくらないならリスクを割り切って、思い切った行動をとるという選択もあるかもしれません。もちろん、感染対策を徹底するという前提ありきですが、五輪会場で国民が思い切り声援をあげるという未来も考えられるでしょう。しかし、このままの対策が続くだけでは、ただただ暗い未来が訪れそうだという点を、私は残念だと思うのです。
読者の皆さんはどう思われますか。 (百年コンサルティング代表 鈴木貴博)