2021年4月23日金曜日

日本学術会議 組織の在り方検討し報告書にまとめる

 日本学術会議は定例の総会で22会員候補6人が総理大臣から任命されなかったことについて、「総理大臣は学術会議の推薦に基づいて105人を任命することが法律によって義務づけられていて、法律が定めた会員数を満たす責務を負っている」としたうえで「いまだ任命されていない6人の候補者を即時任命するよう要求する」とした声明を改めて決定しました。

 また国が、特殊法人になってはどうかという選択肢を示したことに対する回答を含め、学術会議の組織の在り方について検討を行い報告書としてまとめました。
 学術会議は、国を代表する学術組織には財政基盤や会員の選考の独立性など5つの要件があり、現行の国の機関であれば要件をすべて満たすとして、現在の国の機関としての形態が「学術会議の役割を果たすのにふさわしい」と評価し「変更する積極的な理由を見いだすことが困難だ」としました
 そして特殊法人とする場合には、所管する大臣からの独立性の担保や、職員や経費をどのように確保するかなど「国を代表する学術組織として役割を適切に発揮するために、解決すべきさまざまな課題がある」という認識を示しました。

 国が学術会議の特殊法人化を提案した背景には、学術会議関係費として国が10億円近くを支出しているから政府は口出しが出来るという考え方があり、「それがいやなら特殊法人として独立してはどうか」というものです(10億円の大半はそれに関与する官僚の給与等であり、内閣官房長官が勝手に使うことが出来る額約11億円にも及びません)。
   20.11.24学術会議に10億円と攻撃する菅氏は機密費から毎年11億円超を使う

 日本学術会議は1996年に国際学術団体IAPに加盟して以来、加盟各国に存在感が十分に認識されてきています。もしも学術会議が国の機関でなくなった場合、ナショナルアカデミーのみが会員となれるIAPのような国際機関から脱退しなければなりません。
 米国の全米科学アカデミーや英国の英国王立協会などは政府から独立しているので、米国は年間280億円、英国は130億円程度を国が配分しているにもかかわらず、ユネスコやIAPには加盟できません。それで米国や英国などはこれらのアカデミーとは別に政府直轄の機関を作って対応しています。
 それは長い歴史の中で形成されたものですが、日本政府が新たに替わりとなる組織を内閣府内に置いてIAPなどに加盟させたとしても、そんな急ごしらえの組織が本当に日本の科学者を代表できるのかという問題が生じます。何故そんな二重の手間をかけるのかについては、政府の言いなりの学術会議を作りたいという以外の理由は見つからず、そんなことをすれば結果的に日本の学術会議のレベルを低め、国の政策を危めるものとなります。
  ⇒(20.12.2)学術会議「民営化したら日本の未来に大きな危機」(白田佳子教授)
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学術会議 “総理大臣は6人の即時任命を” 総会で声明決定
                     NHK NEWS WEB 2021年4月22日
会員候補6人が総理大臣から任命されなかった日本学術会議は22日開かれた定例の総会で「総理大臣は学術会議の推薦に基づいて任命し、法律が定めた会員数を満たす責務を負っている」として6人の候補者を即時任命するよう求める声明を決定しました。
日本学術会議は去年10月に就任する新しい会員の候補として、定数の半分にあたる105人のリストを法律に基づいて提出しましたが、菅総理大臣はこのうち6人を任命せず、学術会議は6人の任命を求めるとともに組織の在り方についても検討をしてきました。
学術会議は、問題が明らかになった去年10月の総会の後としては初めてとなる定例の総会を開いています。この中で、会員の候補6人が任命されなかったことについて「総理大臣は学術会議の推薦に基づいて105人を任命することが法律によって義務づけられていて、法律が定めた会員数を満たす責務を負っている」としたうえで「いまだ任命されていない6人の候補者を即時任命するよう要求する」とした声明を決定しました。
また、この中では「任命しなかったことについて一般的な説明を超えた特段の理由を示す責任がある」と指摘しています。
学術会議が「声明」や「要望書」として6人の任命を求めるのは今回が3回目です。総会では、学術会議の組織の在り方についてまとめた報告書の案も提案され議論が行われています。

加藤官房長官「一連の手続きは終了している」
加藤官房長官は、午後の記者会見で「内容を承知していないが、先般の任命については、推薦された者の取り扱いも含め、任命権者である内閣総理大臣が最終判断したものであり、一連の手続きは終了しているものと考えている。任命に至らなかった理由については、個別の人事に関することでありこれまでも、お答えを差し控えさせていただいている」と述べました。
そのうえで「欠員が生じていることについては、日本学術会議法に欠員の場合の対応も書かれており、それにのっとって対応していく必要がある」と述べました。

井上科学技術相「形態と選考プロセスが課題」
日本学術会議を所管する井上科学技術担当大臣は22日午後、学術会議の梶田会長から、学術会議がまとめた組織の在り方についての報告書を受け取りました。
このあと井上大臣は記者団に対し「報告書を踏まえて今後どうしていくか、悠長にしているわけにはいかないので、なるべく早く考えたい。今の設置形態に関わらず、さまざまな形態を考えてほしいと前から申し上げており、そこは変わらない。国民の関心という意味では、設置形態と会員の選考プロセスは、大きな課題かと思う」と述べました。
また、井上大臣は、梶田会長から報告書のほかに、任命されなかった会員の候補者6人を即時任命するよう求める声明も受け取ったとしたうえで「任命については直接、権限がないので、任命権者に伝えると梶田会長に申し上げた」と述べました。


日本学術会議 組織の在り方検討し 報告書まとめる
                     NHK NEWS WEB 2021年4月22日
会員候補6人を総理大臣が任命しなかったことに端を発して検討されている、日本学術会議の組織の在り方について、学術会議は、現在の国の機関としての組織の形態が「学術会議の役割を果たすのにふさわしい」と評価する報告書を決定しました。
日本学術会議は、会員の候補として推薦した6人を去年10月、総理大臣が任命しなかったことに端を発して、学術会議の中で組織の在り方について検討が行われ、22日報告書をまとめました。
その中では、国を代表する学術組織には財政基盤や会員の選考の独立性など5つの要件があり、現行の国の機関であれば要件をすべて満たすとして、現在の国の機関としての形態が「学術会議の役割を果たすのにふさわしい」と評価し「変更する積極的な理由を見いだすことが困難だ」としています。
選択肢の1つとしてあげられた特殊法人とする場合には、所管する大臣からの独立性の担保や、職員や経費をどのように確保するかなど「国を代表する学術組織として役割を適切に発揮するために、解決すべきさまざまな課題がある」とし、乗り越えなくてはいけない課題が多いという認識を示しています。
また、科学的な助言機能を強化する改革として、異なる委員会が連携して提言する仕組みを整えるほか、産業界やNPOなどとの意見交換も進めるとしています。さらに、会員選考の透明性を高めるため外部有識者の意見を取り入れるほか、候補者と異なる分野の研究者が選考に関わることで、会員の多様性を確保するとしています。
学術会議の梶田隆章会長は井上科学技術担当大臣を訪れて、まとまった報告書について説明を行いました。

梶田会長はオンラインで記者会見を開き、報告書をまとめたことについて「この議論の重要性から誠心誠意、検討を行って文章にまとめてきた。フラットに検討した結果だ。6人の任命については、私たちの思いが届いていないと感じているので、さらに強い調子で思いを出した」と話していました。
学術会議の組織の在り方については、自民党の作業チームも検討を行い、政府から独立した新たな組織にするなどの提言をまとめています。