日米首脳会談後の共同記者会見で菅首相は、東京五輪・パラについて(「人類が新型コロナに打ち勝った証し」とした従来の表現が消え)「世界の団結の象徴として開催を実現する決意を会談で伝えた」と述べましたが、共同声明で明らかなように、バイデン大統領からは「開催への決意に対する支持」はあったものの、開催自体を直接支持する発言はありませんでした。
バイデンは以前から「安全に開催できるか科学に基づき判断すべきだ」との姿勢なので、日本国内での感染状況を注視していると思われます。
米側記者から「公衆衛生の専門家が日本は準備ができていないと指摘する中、開催に突き進むのは無責任ではないか」との質問が出ましたが、菅首相は答えませんでした。図星だったので答えられなかったものと思われます。五輪の開催は「意欲」や利害の次元ではなく、科学的にその条件が整っているかで決めるべきものです。
国内における新型コロナの急速な感染の広がりは、変異株への置き換わりの影響が指摘されています。島国である日本に易々と変異株を流入させた水際作戦の失敗は、植草一秀氏が繰り返し指摘している通り、菅首相のあまりにも遅かった流入阻止対応のためでした。
各国の感染状況も予断を許しません。そんな状況下で海外から選手や役員らを数万人も日本に迎え入れる条件は到底ありません。五輪組織委員会は検査の強化をいいますが、今日に至るまでロクに強化されていない責任はすべて政府にあります。期間中に必要と見込む1万人の医療従事者の確保のめども立っていません。
このまま五輪開催に突き進めば、東京五輪・パラが感染爆発の契機になりかねません。国内の世論も海外紙の論調も「東京五輪の開催は無理」に傾いています。
しんぶん赤旗が「東京五輪『スパッとやめる』決断は今だ」とする主張を掲げました。
また共産党都議団は16日、小池都知事に対して「東京五輪を中止し 新型コロナ収束へ全力を」傾注するように申し入れました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
主張 今夏の東京五輪 「スパッとやめる」決断は今だ
しんぶん赤旗 2021年4月17日
自民党の二階俊博幹事長が今夏の東京五輪について「これ以上とても無理だということだったら、これはもうスパッとやめなきゃいけない」と発言しました。菅義偉政権の与党幹部が五輪中止の可能性に触れたのは初めてで、海外メディアも大きく伝えました。新型コロナウイルスの世界的な感染が拡大する中で、東京五輪の中止・再延期の声は国内外で広がっています。開幕(7月23日)まで100日を切りました。いつまでも手をこまねいている場合ではありません。開催の中止を決断するのは、まさに今です。
中止・再延期は内外の声
二階氏が東京五輪の中止も選択肢と表明したのは、15日のテレビ番組の収録です。「五輪でたくさん病気をまん延させると、何のための五輪か分からない」とも語りました。発言を多くのメディアが速報すると「自民党として安全、安心な大会の開催に向け、しっかり支えていくことに変わりはない」「何が何でも開催するのかと問われれば、それは違うという意味で発言した」などと説明する書面を公表しました。
五輪実施を最重要課題にしている菅政権の有力者が中止に言及したことは重大な動きです。首相は二階氏の発言後も「開催に向け感染防止に万全を尽くしたい。これは変わらない」と従来の立場を繰り返します。しかし、開催ありきの方針が大きな矛盾に陥っていることは隠しようがありません。
新規感染者は、大阪府で1000人を超える日が連続するなど悪化に歯止めがかかりません。地域を指定し感染拡大に対処する「まん延防止等重点措置」を適用する対象を10都府県に広げる事態となりました。ワクチン接種はいまだ医療従事者にも行きわたらず、高齢者も緒についたばかりです。
急速な感染の広がりは、変異株への置き換わりの影響が指摘されています。各国の感染状況も予断を許しません。海外から選手や役員ら数万人も日本に迎え入れる条件は到底ありません。
五輪組織委員会は、検査の強化をいいますが、期間中に必要と見込む1万人の医療従事者の確保のめどはたっていません。このまま開催に突き進めば、東京五輪が感染爆発の契機になりかねません。
菅政権が感染封じ込めに向けて抜本対策をとらない一方、聖火リレーの続行など既定方針通りの開催に固執していることに、国内外で批判は高まっています。
イギリス医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルは14日付論文で「科学的道徳的要請を無視して、国内の政治的経済的目的で東京五輪を開催することは世界の健康と人間の安全保障に対する日本の公約と矛盾する」と指摘しました。米紙ニューヨーク・タイムズをはじめ英、仏、独の有力紙も相次いで開催の「再考」を求める記事を掲載しています。日本の世論も72%が中止・再延期を求めています(共同通信調査、「東京」13日付)。国内外から湧き上がる声に背を向けてはなりません。
コロナ対策に力の集中を
菅政権は一刻も早く中止を決めて、国際オリンピック委員会をはじめ関係機関と話し合いに入る必要があります。今夏の五輪開催を断念し、コロナの拡大を抑え込むためにあらゆる力を集中することが政府の責任です。
五輪中止 都知事に要請 共産党都議団 コロナ収束へ全力を
しんぶん赤旗 2021年4月17日
日本共産党都議団は16日、小池百合子知事宛てに「直ちに今夏の五輪中止を決断し、コロナ収束に全力を」と申し入れました。
あぜ上三和子、藤田りょうこ、河野ゆりえの3都議が多羅尾光睦副知事に要請し、多羅尾氏は「安心・安全な大会に向け準備を進める。意見として承りました」と答えました。
申し入れでは、東京医師会長の「これ以上感染拡大すれば無観客でも東京五輪は難しい」との発言、米紙の「一大感染イベントになる」との報道、「中止・再延期」が72%という世論調査を紹介。「コロナ対策に集中してほしいというのが国民の声だ」と強調しています。
また、知事が都県境を越えないように呼びかける一方で、まん延防止重点措置期間中の5月9日に開催予定の大会テストイベントのチケットを全国的に販売し、海外からの選手の隔離期間を3日に短縮するなどとしていることについて、矛盾した対応だと批判しています。
開催都市の責任において、国、組織委員会、関係機関、IOCと早期に協議し、IOCに大会中止を決定するよう要請することを強く求めています。
「湯の町湯沢平和の輪」は、2004年6月10日に井上 ひさし氏、梅原 猛氏、大江 健三郎氏ら9人からの「『九条の会』アピール」を受けて組織された、新潟県南魚沼郡湯沢町版の「九条の会」です。