2021年4月30日金曜日

都が東京五輪の観戦に小中学生ら81万人を動員する計画

 「しんぶん赤旗 日曜版」5月2日・9日合併号)に、東京都20年12月都内の各学校に対し、東京オリパラの「観戦の日程案」を送付していたというスクープ記事が載りました。

 それは「スタジアムの最寄駅の利用は禁止で、一駅離れたところで降りてみんな揃って徒歩で向かわなければいけないらしく、熱中症の危険があるとして問題視されましたが、その後の感染拡大で白紙になっていたと見られていました。
 ところがまだ生きているうえに、教師には「具体的な感染対策は何も伝えられていない」ということで、父兄は「わが子が観戦させられると知りがくぜんとしました」と語っています。
 都は「都立学校においては、学校連携観戦当日が授業日である場合は欠席扱いにすることなどは決めたのに、感染対策の方はまだに何も考えていないということです。
 日本ではワクチン接種進まず感染拡大の一途を辿り、インドでは悲惨な感染爆発に陥っているなど、とても五輪を開催できるような状況ではありません。それなのに開催中止の動きはまだないし、五輪会場に国内の観客を入れる予定も変えていないようで、小中学生が五輪至上主義に巻き込まれたのでした。LITERAが取り上げました。

 また日刊ゲンダイは、23日の首相会見に際し書面の質問を送ったところ、28日に出された首相回答で、新型コロナから子どもを守る「決意ゼロ」の姿勢が鮮明になったとして、「菅首相はコロナから子どもを守る決意ゼロ ~ 」という記事を出しました。
 併せて紹介します。
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正気か? 東京都が東京五輪の観戦に小中学生ら81万人を動員計画! 感染拡大最中に各学校に通達、観戦拒否すると「欠席扱い」
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 いよいよ五輪が日本を殺しにかかってきた。昨日28日、東京五輪の5者協議がおこなわれ、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が「へこたれない精神を日本国民が持っていることは、歴史を通して証明されています」「厳しい状況下にあってもそれを乗り越える日本人の力が五輪を可能にする」などと発言したからだ。
 これまでも安倍晋三や菅義偉をはじめとした政治家たちが科学的根拠ゼロの精神論を振りかざして五輪を強行開催しようとしてきたが、ついにIOC会長まで同じような精神論を口にして開催を正当化しようとは……。だが、ワクチン接種も進まず感染が拡大の一途を辿っている日本国内だけではなく、インドの感染爆発を見ても、とてもじゃないが五輪を開催できるような状況にないのは明々白々だ。
 にもかかわらず、5者協議では中止の判断を検討するでもなく「開催」を大前提としたまま。観客数の上限については「6月に判断することで合意」とし、またも判断を先送りにする始末だった。
 その上、メディアは大会組織委員会の橋本聖子会長が5者協議後の記者会見で「無観客という覚悟は持っている」と述べたことを大々的に報じているが、橋本会長はつづけて「状況が許せば、より多くの観客のみなさんに見ていただきたい希望も持っている」と発言。ようするに、実際にはいまだに国内の観客を入れることを諦めていないのだ。
 この状況下で開催を強行しようというだけでなく、観客を入れることに執着する──。いや、そればかりか、さらに絶句するような言語道断の計画が進んでいることまで新たに判明した。
 なんと、東京五輪の競技観戦に、都内の幼稚園児や小・中・高校生など約81万人を動員しよう、というのだ。
 じつは2019年にも、Twitter上で「都からのお達しで、都内の小中学校に通う生徒はオリンピックを盛り上げるために教員の引率でオリンピックの観戦に行くらしい」「夏休み中だけど生徒の参加は義務で、来ないと欠席扱い」「スタジアムの最寄駅の利用は禁止で、一駅離れたところで降りてみんな揃って徒歩で向かわなければいけないらしい」という投稿がなされて大きな話題に。猛暑対策も不十分ななかで熱中症の危険があるとして問題視されていた。
 しかし、ご存知のとおり、昨年3月に新型コロナによって東京五輪の開催延期が決定。感染対策の問題もあり、子どもたちを動員するなどという計画は当然ながら白紙になったに違いない……と思われていた。ところが、そうではなかった。
 この問題をスクープした「しんぶん赤旗 日曜版」5月2日・9日合併号によると、昨年末の2020年12月、東京都から都内の各学校に対し、東京オリパラの「観戦の日程案」が送付されたというのだ。

動員を通達しながら感染対策なし、「競技場への移動は電車やバスを使え」
 昨年の12月といえば、東京都では新規感染者が右肩上がりで増加、年明け早々に緊急事態宣言が発令されたように「第3波」の真っ只中にあった。だが、驚くべきことに、そんななかで東京都は子どもたちの「オリパラ観戦」を決めていた、というわけだ。
 そして、この計画をもとに学校では年間スケジュールを作成。都内のある小学校では、今年4月の入学式に配布された年間予定表の9月の欄に「パラリンピック観戦日」が書き込まれているという。この観戦計画の事実を知った母親は取材に対し、「新型コロナウイルスの感染拡大がこれだけ深刻になっているなか、わが子が観戦させられると知りがくぜんとしました」と語っている。
 だが、もっと愕然とするのは、コロナ禍にあるというのに、東京都から学校に対する通知では、感染対策についてまったく書かれてなかった、ということ。なんと「コロナ対策のコの字もなかった」(小学校教諭)といい、「具体的な感染対策は何も伝えられていない」(中学校教諭)というのである。
 いや、それどころか、この子どもたちの観戦計画は「競技場への移動は電車やバスなど公共交通機関を使え」といった指示まであり、むしろ感染拡大の危険が高まるような内容なのだ。しかも、観戦を拒否した場合は、「都立学校においては、学校連携観戦当日が授業日である場合は、欠席扱い」というから、開いた口が塞がらない。
 こうしたコロナ対策なき子どもたちの動員計画について、組織委は「観客に係る対策などはコロナ調整会議において議論された内容を踏まえて検討する」と回答しているが、これはようするに“いまだに何も考えていない”ということだ。

看護師約500人動員でも「看護師本人に報酬は払わない」とする五輪組織委にTwitterデモが
 子どもたちの安全性の確保を検討することもなく、「動員」ありきで突っ走る組織委と東京都──。この事実ひとつをとっても東京五輪を開催することがいかに危険なことかがよくわかるというものだ。
 実際、昨日の5者協議でバッハ会長は「必要な措置を講じることで日本国民に対するリスクも最小化し、安心してもらえると思っている」などと語ったが、その「必要な措置」の実態は、感染した選手らを受け入れる病院を約30カ所確保するなど、選手らに対する医療提供体制や検査体制などが強化されただけ。むしろ、そうした選手らに対する手厚い体制の構築によって、国民の医療・検査体制が逼迫する可能性が高まってさえいる。
 しかも、だ。組織委は日本看護協会に対して看護師約500人の確保を要請する文書を送っていたことが判明しているが、なんと派遣された看護師に対しては交通費と宿泊費などが支給されるだけで、「看護師本人には報酬は払わない」という。つまり、タダ働きのボランティアだというのだ。
 この看護師約500人確保要請の問題を受け、愛知県医労連などの団体はTwitterデモを展開。「#看護師の五輪派遣は困ります」というハッシュタグがトレンド入りするなど、東京五輪開催に対する反発はどんどん高まっている。国民、いや世界の人々の命と安全を完全無視して東京五輪開催を強行しようとする日本政府や組織委、IOCの暴走は、なんとしてでも止めなくてはならない。(編集部)


菅首相はコロナから子どもを守る決意ゼロ 本紙質問に回答
                          日刊ゲンダイ 2021/04/30
 3度目の緊急事態宣言の決定後に開かれた4月23日の首相会見には、抽選で当たった日刊ゲンダイ記者も参加した。例によって挙手しても当ててもらえなかったが、当日、書面の質問を送ったところ、同28日に首相から回答があった回答からは新型コロナから子どもを守る「決意ゼロ」の姿勢が鮮明になったため、解説する
                      (取材・文=生田修平/日刊ゲンダイ)
【本紙(日刊ゲンダイ)質問】
 変異株の登場で子どもの感染割合が増えています。例えば、変異株が流行の8割を占める大阪府では、第3波(昨年10月10日~今年2月28日)では、10代未満が2.7%、10代が7.3%でしたが、府で確認された変異株陽性者に限ると、それぞれ6.0%、12.9%に跳ね上がっています(14日公表の府の資料)。変異株の登場で子どもの感染割合が増えているとの認識はありますか。
 今月、大阪府豊中市の新田小学校では教職員の陽性判明後、濃厚接触者でない1人の児童の感染が確認され、濃厚接触者に限らず全児童875人を対象にPCR検査を実施したところ、12人の児童の陽性が確認されました。もし、全児童の検査をしていなければ、12人の医療的なケアも遅れ、また12人から感染が拡大していた可能性が十分あります。
 新田小学校のクラスターを教訓に、陽性者が出た学校の全員PCR検査、および、陽性者が出てない場合でも、定期的なPCR検査を行い、「予防」していく必要があると考えますが、いかがでしょうか。
 また、感染を警戒し、自主休校を余儀なくされている児童も少なくありません。対面授業とオンライン授業を選択できる環境を整え、推進していく考えはありますか。12歳未満のコロナワクチンはありません。コロナから子どもを守るのは大人の大きな責任だと思います。コロナから子どもを守る菅首相の決意を教えてください。

【首相回答】
 N501Yに変異のある変異株については、感染力が従来株よりも高いことが指摘されていますが、英国で行われた調査では、子供が大人よりも感染しやすいというエビデンスはないとされています。
【解説】首相は英国の事例を出していますが、英国は強いロックダウンと休校を行い、積極的なワクチン接種を実現しています。ドイツやスウェーデンなど子どもの感染率が高い国もあります。

〇なお、変異株に係る報告数が相対的に限られる中で、当初、10歳未満の集団でクラスターが確認されたことから、変異株の年齢別感染者割合が、特に10代未満で従来の傾向と比較して高い値(3月16日時点で15%)となっていましたが、現在は減少してきています(4月26日時点で5%)。
【解説】日刊ゲンダイは、変異株が8割を占める大阪の最新データを示していますが、スルーしています。子ども対策をしない理由になる事例や数値だけを取り出すのはいかがなものか。

〇検査については、感染が疑われる方など検査が必要と判断される方がより迅速に受けられれるようにするとともに、必要に応じてより広く検査が実施されることが重要と考えており、例えば、集団活動が行われる場などにおけるクラスター発生時の検査については、濃厚接触者に限らず、幅広い接触者を対象に検査を行っていただくようお願いしております。
【解説】日刊ゲンダイは、新田小学校の事例を挙げ、学校検査の必要性を問うています。既知の一般論を言われても困ります。

〇また、今般実施する定期的・集中な検査は、重症化しやすい方を対象に、重点的に検査を実施するものであり、重症化リスクが高い高齢者施設等を対象とし、地域の感染状況等に応じて実施を要請しております。なお、子どもについては、変異株であっても、高齢者のように重症化しやすいというエビデンスは現時点ではありません。
【解説】エビデンスが出てからでは手遅れです。熊本市の10歳未満の男性児童は27日から重症治療を受けています。また、子どもがかかれば、同居の高齢者も感染します。PCR検査の1日あたりの能力は20万件なのに、実施は8万件程度。1月に行政検査として認めたプール方式を活用するなど、やる気になれば高齢者施設に加え、学校検査もできるはずです。

〇さらに、学校においては、最大限児童生徒の健やかな学びを保障するため、感染症対策を徹底しつつ対面指導を行うとともに、状況に応じて、オンラインでの学習も活用することが重要であり、国としても必要な支援をしっかり行ってまいりたいと思います。
【解説】オンライン学習の積極的な環境整備の通達が出ているのに、進まないから質問しています。通達の内容を答えられても困ります。

〇子どもたちは「国の宝」であり、また、政府としては、国民の命と暮らしを守ることを最優先として、新型コロナ対策を最重要課題として取り組んでおります。引き続き、感染対策に全力で取り組むとともに、変異株や小児に関するものも含め、新型コロナに関する必要な知見を集積してまいります。
【解説】感染対策全般ではなく、12歳未満のワクチンがないことも踏まえ、子どもの感染問題への決意を聞いています。知見を集積し、「国の宝」に対して、具体的に何をするのかがさっぱりわかりません。「知見が固まらないと動きません」とのメッセージにしか見えません。