2021年4月21日水曜日

保身のためだけの訪米 国民の利益は何一つなし

 米国は4月以降1週間の間に少なくとも3度、ウクライナに軍需物資を空輸し、イギリスやトルコもそれに倣っているということです。イギリス5黒海(ロシアのクリミア軍港に接する)へ駆逐艦とフリゲート艦を派遣することを計画するなど、ウクライナを舞台に米国(のグループ)とロシアが戦火を交える可能性は高まっています。


 トランプ前大統領は、中国に経済的なダメージを与えようと関税引き上げなど様々な対中制裁方針を打ち出し、中国との経済的対立を決定的にしました。
 バイデン政権はその路線を引き継ぐとともに、突然、6年以内に台湾有事が勃発すると言い出して台湾を巡る軍事的緊張を高めました。6年後くらいに中国の経済力が米国を追い抜くと予想されるのに対して、米国にはそうなる前に中国を軍事的に叩いておきたいという狙いがあると言われています。
 そんな中で行われた日米首脳会談の共同声明で、1972年の日中共同声明以来、半世紀の間 日本が封じてきた「台湾問題」を公然と謳いました。

 中国外務省の報道官は日米首脳会談前の16日の記者会見で日中関係が「重要な岐路にある」と警告し、日米首脳会談後の17日深夜に出した談話で「中国内政に乱暴に干渉した」と猛反発しました
 中国共産党機関紙 環球時報(電子版)は18日までに、台湾問題を明記した日米共同声明を受け「中国を封じ込める米国の戦略に日本が加わり、中日関係は改善の勢いを失った」「これまで日中が歩み寄り、関係を少しずつ正しい軌道に戻してきたが日本が突然路線を変えた」、「日米同盟がアジア太平洋地域の平和を脅かす軸になっている」とする社説を掲げまし
 半世紀前に合意した「一つの中国」を、日米共同声明の中で一方的に否定されたのですから中国が激怒するのは当然のことです。
 問題は菅政権が何処までの覚悟を持ってその声明を出したかです。
 日刊ゲンダイが「 ~ 凄まじい代償 保身のためだけの訪米 国民の利益は何一つなし」と「日米首脳会談“台湾問題”中国激怒で打撃を受けかねない14社」の二つの記事を出しました。
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「一番乗り」に凄まじい代償 保身のためだけの訪米 国民の利益は何一つなし
                        日刊ゲンダイ 2021年4月19日
                        (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
 わざわざ2泊4日で行く意味があったのだろうか。
 バイデン大統領と対面で会談する最初の首脳になるために訪米した菅首相が18日、政府専用機で帰国。今週中に国会で訪米の成果について報告するというが、一体どんな「成果」があったというのか。
 共同声明で52年ぶりに台湾に言及したことは今後、大きな火種になる。頼みにしていた今夏の五輪開催への支援も得られず、米中対立の危険な網に巻き込まれに行っただけだ。
 もちろん、昨今の中国の動きは度し難い。香港弾圧、新疆ウイグル自治区などでの人権侵害、南シナ海での傍若無人、威圧的な領海侵入――。だが、日本が米国一辺倒の姿勢を鮮明にするほど、安全保障上のリスクを抱えることもまた事実だ。

 法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。
「低支持率にあえぐ菅首相にとって、日米首脳会談は政権浮揚の切り札だった。一時は与党内から『日米首脳会談で支持率を上げて解散・総選挙』という話が出ていたくらいで、米国の後ろ盾をアピールすることが最大の目的でした。そういう政治的思惑が見透かされているから、足元を見られ、バイデン大統領との対面首脳会談に一番乗りという“栄誉”をエサにルビコン川を渡らされたのが今回の日米首脳会談でした。半世紀にわたって避け続けてきた台湾問題で踏み絵を突きつけられ、中国への対決姿勢を鮮明にした。米国の戦略に乗せられ、対中戦略の前線に日本がハッキリと立たされたのです。ボンクラ首相の保身のために、国民は凄まじい代償を支払わされることになります」

夕食会も「桜を見る会」も中止
 実際、ホワイトハウスは極めて事務的な最低限の対応に終始していた。日本側が強く要望していた大統領との夕食会は見送られ、1対1の初会談は短時間のランチ会に格下げ。ハンバーガーが供されたサシ会談も約20分間で終了した。通訳の時間を考えれば正味10分程度だ。
 菅は「いろいろ人生経験とかの話をして、ハンバーガーにも全く手をつけないで終わってしまった。それくらい熱中した」と説明し、「一挙に打ち解けた」「似ているからうまく付き合っていける」と胸を張っていたが、共同記者会見で見せた菅のオドオドした表情からは、打ち解けた様子はまったく伝わってこなかった。
 長身のバイデンと並んでカメラに収まる際のバランスを取るためか、用意された踏み台に登った菅は、下を向いてひたすら原稿を読み上げるだけ。さらには、英ロイターの記者から「公衆衛生の専門家が日本は五輪を開催する準備ができていないと指摘している中で開催するのは無責任ではないか?」と質問されると、なんと答えずに無視。お得意の「問題ない」「ご指摘は当たらない」すらなく、共同通信の記者を指名して、次の質疑に移ってしまった。
 日本国内では、人事権を振りかざし、記者の質問は「問題ない」「当たらない」で切り捨て、忖度メディアに提灯記事を書かせて乗り切れたかもしれないが、国際社会には通用しない。ホワイトハウスの人事には手を突っ込めないし、記者の質問に答えられなければリーダー失格の烙印を押されるだけだ。
 バイデンは会談が終わると、さっさと地元デラウェア州の自宅に帰り、就任後初のゴルフを楽しんだ。菅とは夕食会もゴルフもする気はないということだ。安倍前首相に対する当てつけなのか知らないが、当初はワシントンで両首脳による“桜を見る会”も予定されていたという。それも中止された

米国主導の対中政策で危うい領域に足を踏み入れた
「日本が米国の一番の隷従国であることを国際社会にアピールするだけの訪米でした。問題は、菅首相が無能を露呈して恥をかきに行っただけならまだいいが、米国に押し切られて対中政策で危うい領域に足を踏み入れたことです。国家観がない、外交経験もないと言われてきた菅首相が中国への敵意をむき出しにしてみせたのは、どこまでの覚悟があってのことなのか。今回の日米共同声明は国際秩序に反する中国の動きに反対することを確認し、『台湾海峡の平和と安定の重要性』も盛り込まれましたが、中国は当然、反発していて、日本に対する報復措置も考えられる。製造業を中心に中国と密接な関係にある日本経済への影響は計り知れません。軍事的にも、いざ台湾有事となれば台湾海峡に自衛隊を出して米軍の援護をするという単純な話で済まなくなった。地政学的に、日本が米中対立の最前線となって、攻撃を受ける可能性は格段に高まりました。日米首脳がお互いに『ジョー』『ヨシ』と呼び合う親密さの演出と引き換えに、国土と国民が大きなリスクにさらされる。経済的にも軍事的にも外交面でも、失う国益は大きすぎます」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)
 犬をしつける際、最初に覚えさせる重要コマンド(指令)が「マテ」と「ヨシ」だ。「ヨシ、ヨシ」と声をかけられ、バイデンにすがるような目を向ける菅の姿は、忠実なポチとしては合格点かもしれないが、あまりに情けない。米国に忠誠を示し、重い十字架を背負わされて帰ってきた。国民は、本当にそんなリーダーでいいのか。
 新型コロナのワクチン確保のパフォーマンスで、米ファイザー社のCEOと会談するもくろみも見事に外れた。日本の首相が出張って直接交渉を申し入れたのに断られたのだ。
「長くても秋までの短命政権で本格交渉の相手ではないとみられているのではないか。何の戦略もない場当たり外交だから軽く扱われ、保身のための対米追従だけが強化された印象です」(五野井郁夫氏=前出)

コロナ対策より訪米が大事か
 結局、ワシントン滞在中の菅がニューヨークのファイザーCEOと電話で会談だから、まるで漫画である。まさか、国際電話代をケチったわけではあるまいが、電話だけなら訪米前にもできたはずだ。バイデンとも、リモート会談で十分な内容だった。むしろ、日本にとってマイナスしかない会談なら、行かない方がよかったくらいだ。
「国民には不要不急の外出自粛を求めているのに、コロナ第4波の拡大を放置して外遊する。本来なら医療従事者に回すべきワクチンも、同行スタッフや記者団への2回接種を優先したことからも、国民のことは後回しで私利私欲しかないことが分かります。訪米前に安倍前首相と会って指南を受けたそうですから、米国に追従していれば政権は安泰と言い含められたのかもしれませんが、国民の利益は何一つない。日本国内でのコロナ感染拡大を理由に訪米を延期し、米国の中国包囲網にコミットしないことをにおわせる政治判断もあり得たのに、“飛んで火に入る”で米中衝突に自ら巻き込まれに行った。安倍前政権では集団的自衛権の行使を容認し、安保法を改正、米国産の武器弾薬を爆買いして軍拡を進めて、米艦防護の訓練も積み重ねてきました。そうやって構築されたシステムが、いよいよ実戦で試される時が近づいているのではないか。安倍政権での集団的自衛権行使は中東有事を想定したものでしたが、それが今は台湾海峡や南西諸島が主戦場になっているという現実に戦慄せざるを得ません。台湾有事は、日本国内の米軍基地が攻撃される“日本有事”に直結します」(五十嵐仁氏=前出)

 この差し迫った脅威を大メディアはなぜ伝えないのか。日米首脳会談の「成功」演出に協力している場合ではないはずだ。単細胞の亡国外交は危うい。本気で国益を考えるのなら、外交的戦略も何もない菅を一刻も早く引きずり降ろすしかない。メディアが無批判に政権を礼賛していたら、必ず過ちを繰り返すことになる。


日米首脳会談“台湾問題”中国激怒で打撃を受けかねない14社
                          日刊ゲンダイ 2021/04/20
 日米首脳会談の共同声明が“台湾問題”に触れたことで、さっそく中国政府が猛反発している。
 中国外務省は「あらゆる必要な措置を取る」と表明し、人民日報系の環球時報(電子版)は「中国を封じ込めるアメリカの戦略に日本が加わり、日中関係の改善は勢いを失った」とする社説を発表した。
 この先、中国政府が日本に報復してくる可能性は捨てきれない。懸念されているのが、日本企業への“制裁”だ。現在、中国でビジネスを展開する日本企業は約1万3000社もある。中国政府が制裁を発動したら、日本企業への打撃は計り知れない。
 中国で積極的に事業展開を進めている企業で構成される「日経中国関連株50」には、コマツ、日立建機、ピジョン、ユニ・チャーム、ファーストリテイリングといったそうそうたる企業が並んでいる。この50社はターゲットにされかねない。
 さらに、「新疆ウイグル族の強制労働に関与」と指摘された「日本企業14社」()も、大打撃を受ける恐れがある。この14社も、ファーストリテイリング、任天堂、しまむら、パナソニックなど優良企業が揃っている。14社は、強制労働への関与を否定しているが、豪州のシンクタンクが2020年に公表した、ウイグル人の強制労働に関する報告書のなかで関与が指摘されている。
「14社は欧米諸国から“人権侵害に加担する企業”と批判されるリスクがあります。ただ、中国との取引を中止するとビジネスが成り立たなくなる恐れがある。たとえば、ユニクロは、高品質で安価な中国産の綿を使ってきた。脱中国となるとビジネスモデルが崩壊する危険があります。逆に中国政府が14社を揺さぶる可能性もあります」(大手商社マン)

 経済評論家の斎藤満氏はこう言う。
米中対立が深刻化し、日本がアメリカに協力するということになれば、中国ビジネスは相当、難しくなるでしょう。不買運動が起こる可能性は高い。これまで日本は、安全保障はアメリカに依存し、ビジネスは中国頼みでやってきたが、いずれ、いいとこ取りは難しくなるかも知れない。企業は、拠点を中国からタイやベトナムに移すなど、最悪の事態も考えるべきでしょう」
 菅政権に覚悟はあるのだろうか。

※ 日立、ソニー、TDK,、東芝、京セラ、三菱電機、ミツミ電機、シャープ、良品計画、ファーストリテイリング、任天堂、ジャパンディスプレイ、しまむら、パナソニック