2021年4月18日日曜日

外国人の人権侵害深刻化 入管法改定案審議入り

 19の日本の難民認定は47人で申請者の0・4%でした。これは、米23%、英40%、独16%、仏18%、加51%などの先進国と比べて桁外れの少なさです。難民の認定が受けられないまま滞在すれば「不法滞在」となり、それが判明すれば容赦なく収容されます。難民の他にも、たとえば日本語学校通学中に学資が切れて不法滞在となるような例もあります。

 不法滞在者などを長期に拘束する日本の入国管理収容制度「国際人権法に違反している」との意見書が去年9月、国連の作業部会(WG)から日本政府に送られました。
 前年の10月にWGに通報したのは、東日本入国管理センター(牛久市)に収容されているクルド人トルコ国籍のデニズさん(41)とイラン国籍のディマンさん(51)2人で、理由や期間を告げられないまま10年以上にわたって断続的に6カ月~3年の収容を繰り返されたのは、国際人権法が禁じる「恣意的拘禁」にあたると主張しました。
 WGの意見書は日本の出入国管理法が収容期間を定めておらず、収容の必要性や合理性も検討されていないと指摘し、日本政府に入管法の速やかな見直しを要請しました。

 日本における各地入管の収容施設の実態は酷いもので、収容者の死亡例も相次いで2010年以降で14人に上ります。女性へのセクハラも多発しています。
 17年に来日したスリランカ人女性ウィシュマさん(33)が3月6日、名古屋入管の収容施設で亡くなりました。
 日本で英語教師になることを目指して来日し、はじめは日本語学校に通っていたのですが母国からの仕送りが途絶えたために退学しました。そのため不法滞在と見做され去年の8月、名古屋入管に収容されました。その後彼女は次第に体調を悪化させ、支援者の定期的な面会時には、嘔吐に備えてバケツを抱えて車いすで現れるようになりました。3月3日の面会時にはウィシュマさんは車いすから体を起こせないほどに衰弱していましたが、治療を受けられないまま3日後に亡くなりました。収容者の死亡例のほとんどは収容中に適切な治療が受けられないためです。
 こうした人権無視の劣悪な環境下での長期の収容が、入管だけの判断で行っていい筈がありません。
 よりによってそうした状況をさらに悪化させる入管難民法改定案が16日、衆院に提出されました。しんぶん赤旗の記事を紹介します。
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外国人の人権侵害深刻化 入管法改定案審議入り 藤野氏が批判 衆院本会議
                       しんぶん赤旗 2021年4月17日
 難民認定申請中の強制送還を一部可能とし、国外退去を拒んだ際の罰則を創設するなどの入管難民法改定案が、16日の衆院本会議で審議入りしました。日本共産党の藤野保史議員は、入管行政の裁量拡大と厳罰化を進めるもので、「外国人への人権侵害をさらに深刻化し、国際基準から逆行する」と批判しました。(質問要旨下掲
 藤野氏は、在留資格を失った人を全て収容する「全件収容主義」のもと、劣悪な環境での長期収容が常態化し、死亡事件が相次いでいると指摘。一定要件を満たす人に入管施設外での生活を認める「監理措置制度」は、入管の裁量次第で、「長期収容が改善する保証はない。収容の要否等への裁判所の関与、収容期間の上限設定こそ必要だ」と強調しました。
 難民申請中は強制送還しないルールを改悪し、3回以上の申請者は強制送還可能とする問題では、日本の難民認定率(0・4%以下)の低さを指摘。「極端に狭い日本の『難民』の定義を国際水準に改め、独立の第三者機関が難民認定の審査をする制度への改革を」と求めました。
 国外退去を拒んだ場合の罰則の創設についても、親の事情で在留資格のないまま日本で生まれ育った子どもや、非人道的な弾圧から逃れて来る人など、「保護されるべき人の強制送還を増加させる」と危険性を強調しました。
 上川陽子法相は、同法案は入管行政を「いっそう適切かつ実効的なものとし、送還忌避や長期収容の課題に対応するためのもので、人権にも十分配慮した」と強弁しました。


入管法改定案 藤野議員の質問 衆院本会議
                       しんぶん赤旗 2021年4月17日
 日本共産党の藤野保史議員が16日の衆院本会議で行った入管難民法改定案に対する質問(要旨)は次の通りです。
 政府は「移民政策はとらない」との建前の一方、経済界が求める「安価な労働力」「雇用の調整弁」として外国人の受け入れを拡大する欺瞞(ぎまん)的な姿勢を取り続けてきました。このもとで、外国人の基本的人権を尊重した雇用、教育、社会保障などの支援制度は整備されず、不当な労働条件の押しつけや雇い止めなど人権侵害が横行しています。
 在留資格を失った外国人を全て収容する「全件収容主義」のもと、まともな医療すら受けられない長期収容が常態化し、死亡事件も相次いでいます。基本的人権の尊重と国際人権基準に基づく入管制度に改めるべきです
 本案は、出入国在留管理庁の裁量拡大と厳罰化を進めるものです。外国人の人権侵害をさらに深刻化し、国際基準から逆行するもので、断じて認められません
 一定の要件をみたす外国人に入管施設外での生活を認める「監理措置制度」は、入管庁が「相当と認めるとき」にしか認められず、長期収容の改善が進む保証はありません。
 監理人に対する、外国人への監督義務、政府への届け出義務、違反時の罰則は、支援団体や弁護人の立場と両立しません。収容の要否等への裁判所の関与、収容期間の上限設定などを行うべきです。
 本案は、難民認定申請中は強制送還しないルールを改悪し、3回目の申請以降は強制送還できるとします。日本の難民認定率が0・4%以下と極めて低いことこそ、複数申請の根本原因ではありませんか。
 極端に狭い日本の「難民」の定義を国際水準に改め、独立した第三者機関が難民認定の審査をするなどの抜本改革こそ必要です。
 国外退去を拒んだ場合の罰則の創設は極めて重大です。退去強制令書を受けた人の9割超が国外退去に応じています。親の事情で在留資格がないまま日本で生まれ育った子どもや、非人道的な弾圧が続いているミャンマーやクルドなどから避難し、難民申請している人など、本来保護されるべき外国人の強制送還を増加させるのではありませんか。
 国連人権理事会「特別報告者」らは3月、「国際的な人権水準に達しておらず、再検討を強く求める」との共同書簡を日本政府に提出しています。外国人との共生社会の実現に向け、入管制度の根本改革を強く求めます。


入管法改悪 廃案必ず 「送還ではなく保護を」 移住連、国会座り込み
                       しんぶん赤旗 2021年4月17日
 入管法改悪案が衆議院で審議入りした16日、衆院第2議員会館前で「難民の送還ではなく保護を」などのプラカードを手に市民が廃案を求めて座り込みました。主催は、移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)。
 「初めてこうした行動に参加した」と話す若者もおり、市民や弁護士、学者や国会議員らがリレートークでアピールしました。
 移住連の鳥井一平代表理事は、改悪案は社会にとって都合の悪い人を排除しようとするものだと強調。「絶対に廃案に追い込まないといけない。そのために頑張りましょう」と呼びかけました。
 横浜市の医師、越智祥太(さちひろ)さん(52)は、入管問題は日本に住むすべての人に関わる問題だと考え座り込みに参加。「日本に暮らす外国人はどの面から見ても弱い立場に置かれている。より良くしていくべきなのに改悪なんて許せない。廃案にするべきです」と語りました。
 日本共産党、立憲民主党、社民党の国会議員が参加。共産党の藤野保史衆院議員は「力をあわせて必ず廃案に追い込みましょう」と述べました。移住連は今後、法務委員会開催日を中心に座り込みを実施。「さらに反対の声を広げていこう」と参加を呼びかけています。
死因説明「納得できない」

スリランカ人女性遺族が会見
 名古屋出入国在留管理局で3月に死亡したスリランカ人女性のウィシュマさん=当時(33)=の遺族が16日、ウェブ中継で野党が開くヒアリングに参加し、会見しました。「入管から納得できる説明がない」と述べ、収容中の映像や診断書などを渡すよう求めました。
 支援団体によると、女性は学費が払えなくなったことで滞在許可を失い、入管に収容されていました。体調不良で点滴を求めていたものの、悪化、死亡しました
 母親は出入国在留管理庁に対し、「日本は安全で安心と思っていた。なぜ診察や薬を受けられなかったのか」と問い、指宿昭一弁護士は、女性が点滴を求めていたことの事実確認を迫りました。
 入管庁の担当者は「司法解剖で死因を調査中。点滴の件は調査を続ける」と述べました。
 女性の妹は「スリランカのような小さな国でももっと早く結果が出る。なんで日本は遅いのか」と不信感を表し、ヒアリング後の会見で「入管庁は逃げているような感じだった」と述べました。
 母親は会見で、「ウィシュマは頭がよくて、英語を教える子どもたちに愛されていた。すごくショックを受けている」と述べました。
 母親によると、安全な国として日本を選び、渡航のため借金。スリランカでも事件が報道され、安全な国という日本のイメージが損なわれているといいます。「入管には納得できない。なんで点滴くらいしてもらえなかったのか」と泣いて訴えました。