2018年4月15日日曜日

壊れる官僚たち…安倍恐怖支配(第1回~3回)

 元経産官僚の古賀茂明氏が、「壊れる官僚たち…安倍恐怖支配」を日刊ゲンダイに連載しています。
 第1回目が10日で、14日の第5回目まで連日掲載されました。
 第1回~3回を紹介します。
 
 第1回目では、このところ農水省が今治市作成の面会記録保管を公表したり、自衛隊などが「廃棄したことにした」文書が続々と出てきたのは、決裁文書を改ざんしてまで安倍政権を擁護した佐川氏の末路を見て恐怖感を覚えた官僚が、要求された資料を隠蔽するリスクをとらなくなってしまったという可能性があると述べています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 壊れる官僚たち…安倍恐怖支配 第1回
廃棄したはずの公文書が次々…背景に佐川前長官の悲惨な姿
日刊ゲンダイ 2018年4月10日
 防衛省で、なかったはずの文書が次々と見つかり、驚きのニュースとして大きく報じられた。しかし、官僚を31年やっていた私にとっては、こんなことは驚きでも何でもない。どういうことか。
「優秀なはずの官僚がなぜ?」というフレーズがよく使われる。財務省や経産省などの幹部クラスの9割近くは東大卒だが、それは彼らが優秀だということを意味しない。意味しているのは、彼らが大学に入る時に、テストの成績が良かったというだけである。
 さほど能力のない人間が東大に入るためには、過去問を解く受験勉強が必要だ。多くの官僚はその点では優秀だった。そのDNAは役所に入っても消えない。課題を与えられると、官僚は過去の資料探しから始める。それを並べて分析し、コピペしながら答えを作るのだ。
 厚労省で地下の倉庫から捏造データの原票が見つかったというが、まさに若手官僚の大事な作業は、地下の倉庫を漁って、仕事に関係しそうな資料を探し出してくることだ。過去の資料がないと、「創造力」がない彼らはお手上げとなる。命綱である資料は保存するのが彼らの常識なのだ。
 では、役所が「文書は廃棄した」というのはどういうことか。そこには2つのケースがある。将来的にも絶対に役に立たない、無意味な文書であれば、本当に廃棄される。それなら、国民にとっても大きな問題はない。
 
 しかし、もうひとつ別のケースがある。それは、「情報公開の対象となる行政文書としては存在しないことにする」というケースだ。その場合、文書は、個人メモとして、個人所有のUSBメモリーなどで保存する。この場合、国民や国会から文書を出せと言われると、「廃棄したのでありません」という答えが返ってくる。一方、上司が、「あの時の資料見つけてくれるかな」というと、必ず、誰かが、「ありました」と言って出してくるのである。
 では、今、「廃棄したことにした」文書が続々と出てきたのはなぜか。
 ひとつの原因としてあげられるのが、佐川宣寿前国税庁長官の悲惨な姿だ。決裁文書を改ざんしてまで安倍政権を擁護した佐川氏の末路を見て恐怖感を覚えた官僚が、要求された資料を隠蔽するリスクをとらなくなってしまったという可能性がある。安倍総理は、昭恵夫人だけでなく佐川氏も徹底的に守ればこうはなっていなかったかもしれないが、もう後の祭り。「廃棄文書発見」という「事件」は今後も続くと考えた方がよさそうだ。
 
 古賀茂明
1955年、長崎県生まれ。東大法卒。通産省へ。行政改革などにかかわり、改革派官僚として名を馳せる。2011年に退職、評論活動へ。「日本中枢の崩壊」(講談社)が38万部のベストセラー。近著は「国家の暴走 安倍政権の世論操作術」(角川oneテーマ21j)
 
 壊れる官僚たち…安倍恐怖支配 第2回
政権は官僚の行動原理を利用…霞が関の公文書“暗黙ルール”
日刊ゲンダイ 2018年4月11日
 公文書管理法第1条には、公文書は「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」であると書いてある。しかし、官僚たちはそう考えていない。公文書は、「官僚の利権を守るための大事な財産」だと考えられているのだ。
 霞が関における公文書に関する暗黙のルールを私なりに整理するとこんな感じだ。
 
 ①公文書は原則として公開しない。
 ②公開する場合でも、黒塗り部分を多くする。
 ③情報公開・個人情報保護審査会への諮問が必要となる審査請求がなされない限り、余計な譲歩はしない。
 ④絶対に公開できない情報は、個人的なメモ扱いとし、公文書としては存在しないことにする。
 ⑤公開が避けられない公文書には、問題のない内容だけを記す。⑥公開する場合もなるべく時間をかけて出す。
 
 例えば、私が経産省で働いていた時、ワープロソフトの「ワード」を立ち上げると、デフォルトで白紙のワード文書の上欄外に「非公開」を示す文言が表示された。公開文書とするためには、いちいちその表示を消す必要がある。これは、上記ルール①を示すものだ。また、審議会の議事録は、問題となりそうな記述を削り、開催日からかなり時間を経て公開される。これにより、ニュース価値はほとんどなくなる。これは上記ルール⑤と⑥に該当する。
 官僚が文書の公開に消極的なのはなぜか。それは、情報を出さなければ、責任を問われる可能性が低くなるからだ。特定秘密保護法を作ったのは、特に戦争や原発など、後で大きな責任を問われるような問題について、重要な情報を長期にわたって秘密にするためだ。それによって、安心して戦争を始められるし、事故の責任追及を恐れずに原発を稼働させることができる
 逆に言えば、公文書を公開するのは、将来自分たちが何かの責任を問われる可能性を高くする「危険行為」だということになる。
 
 実は、これは政治家にも共通する。首相や各省大臣など行政に関わる政治家は、自分たちが関係した行政行為に関して、後で責任を追及されないように、なるべく記録は残して欲しくないし、公開も避けて欲しい。だから、官僚たちは、政治家の意図も忖度しながら、情報を隠そうとする。
 安倍政権は、官僚たちのこうした行動原理をうまく使っている。秘書官などが、「問題を起こさないようにしてくださいね」と念を押せば、具体的な指示を出す必要はない。官僚たちは、それが官邸や大臣の意向だと思えば、それを錦の御旗として、せっせと隠蔽・改ざんに励むのである。
 
 壊れる官僚たち…安倍恐怖支配 第3回
直接的な改ざん指示はせず官邸は忖度承知でシグナル発信
日刊ゲンダイ 2018年4月12日
 霞が関の各省庁は、事務次官を頂点とする階層社会だ。その階層の中では、年功序列が非常にはっきりしていて、「1年違えば虫けら同然」という言葉がそれを表している。
 この階層社会を維持する上で、最も重要なのは人事と天下りの差配だ。人事権は、形式上は大臣にあるが、実際には事務次官がこれを行使してきた。しかし、最近は、官邸が幹部人事に介入するようになった。
 実は、これで最も困っているのは事務次官だという説がある。なぜなら、これまでは、自分が絶対権力者だったが、今は、下手をすると、自分に逆らっても、官邸と仲良くやっていれば出世できるという状況になり、次官の求心力が衰えることになりかねないからだ。他方、次官自身が、総理から信頼されているということを見せれば、今まで以上に求心力が増す。そこで、各省次官は、必死になって総理のご機嫌取りに励んでいる。
 こういう事態を見れば、現場の課長クラスまでが、総理の意向を忖度するようになる。官邸はそういう構造を知り尽くした上で、官僚たちが忖度しやすいように、自らの意向をわかりやすく示しているように見える。
 
 例えば、安倍総理が国会で「私や妻が関わっていたら、議員も辞める」という趣旨の発言をしたのは、「昭恵の件を表に出すなよ」という意思表示だったともとれる。加計学園問題で、安倍総理の「ご意向文書」の存在が問題となった時に、菅官房長官が、当初「怪文書」扱いしたのも、同じ趣旨だった可能性が高い。
 役所では、幹部の責任を追及されかねない難しい問題が生じた時、通常のルールを巧妙に逸脱しつつも、何とか責任を回避する方法を考える役人が上司に重用される。こういう時、上司は部下に対して、「君もワルだなあ」と言って褒める。これは、ある種最高の褒め言葉である。
 
 官邸の「ワル」官僚たちは、安倍政権に対して、最高の悪知恵を提供しながら、各省庁の幹部にも「ワル」になることを求める。「局長のこと、総理はすごく信頼してますよ。うまく処理してあげてください」と優しくお願いするか、「こっちに相談されても困るんだよな。自分の責任で処理してよ。総理に迷惑かけたらただじゃ済まないからね」と恫喝するかは別にして、直接的に、隠蔽や改ざんを指示することはない
 しかし、言われた官僚は、隠蔽でも改ざんでも、必死になって安倍擁護のために動くことを官邸官僚はよく知っているはずだ。