東日本大震災の津波で児童と教職員計84人が死亡した宮城県石巻市立大川小学校を巡り、児童23人の遺族が起こした損害賠償訴訟の控訴審で、仙台高裁は26日、一審(仙台地裁)に続き、市と県に約14億円の支払いを命じました。
一審では津波襲来直前の教職員の「判断ミス」を過失としましたが、二審はそれを変更し、石巻市教委が地域の実情に応じた対策を大川小に指導せず、学校も危機管理マニュアル改訂時に津波避難場所の明記を怠るなどの、震災前の対応の不備が過失に当たると判断しました。
震災の津波被災を巡り学校や行政、法人など組織の管理責任が問われた訴訟は15件ありますが、二審で管理責任を認め原告側が勝訴したのは2例目です。
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大川小津波訴訟
2審の仙台高裁も石巻市と県に賠償命令
毎日新聞 2018年4月26日
東日本大震災の津波で児童と教職員計84人が死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校を巡り、児童23人の遺族が市と県に約23億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、仙台高裁(小川浩裁判長)は26日、1審・仙台地裁判決(2016年10月)に続き、市と県に約14億円の支払いを命じた。津波襲来直前の教職員の「判断ミス」を過失とした1審を変更し、学校や市の震災前の対応の不備が過失に当たると判断した。
震災の津波被災を巡って学校や企業の管理責任が問われた訴訟で、事前防災について管理者の法的責任が認められたのは初めて。全国の教育現場に大きな影響を与えそうだ。
小川裁判長は、石巻市教委が地域の実情に応じた対策を大川小に指導せず、学校も危機管理マニュアル改訂時に津波避難場所の明記を怠った、と指摘した。
戦後最悪とされる学校災害を巡る司法判断は1審に続き、2審でも学校側の法的責任を認める結果となった。
地裁判決などによると、北上川河口から約4キロ、川べりから約200メートルの距離にあった大川小では11年3月11日、地震から約50分後に川をさかのぼった津波が襲来し、児童70人が死亡、4人が行方不明となった。児童らは標高約7メートルの「三角地帯」と呼ばれる交差点に向かい、移動を始めた直後だったとみられる。
地裁判決は、津波襲来の約7分前には高台避難を呼びかける市の広報車が校舎前を通り、教員らは大津波襲来を予見できたのに、より標高の高い裏山への避難を怠った-と指摘。津波襲来直前の教員らの「判断ミス」を過失と認定した。
一方、控訴審では大川小が地震前にどのような危機管理マニュアルを策定していたかなど、主に市や県の事前の防災体制が適切だったかが争点となった。
遺族側は、大川小の学区の一部が市のハザードマップで津波浸水予測区域に入っていたのに、学校側は危機管理マニュアルに具体的な避難場所を明記していなかったと指摘。「学校や市は危険を調査し、対策を取る義務を怠った『組織的過失』がある」と主張した。これに対し、市側は「過去の津波の記録や、地域住民の認識からも津波襲来を予見できなかった。震災前の対応に不備はなかった」と反論していた。
震災の津波被災を巡り学校や行政、法人など組織の管理責任が問われた訴訟は少なくとも15件ある。2審で管理責任を認め原告側が勝訴するのは、同県東松島市の野蒜(のびる)小学校の被災を巡る訴訟の仙台高裁判決(17年4月、上告中)に続いて2例目となる。【百武信幸】 .