2018年4月7日土曜日

放送法撤廃の首謀者は今井尚哉首相秘書官

 安倍首相は1月末のある新年会で、Abema TV(インターネットTV局)などに出演した経験に基づいて「双方向でいろんな意見があり面白いなと思った。見ている人には地上波と全く同じだ。法体系が追い付いていない」と述べ、直後2月7日、規制改革推進会議で放送制度改革の議論スタートさせました。

 いくらインターネットTVで歓待されたからと言って、それを大々的にテレビに導入して、政権擁護の番組を乱立させようという発想は余りにも短絡的です。
 安倍首相は、民放が一時期集中的に森友問題を取り上げたことが相当不満だったようなのですが、批判されると我慢できないというのは幼児的で首相にあるまじきことです。

 この放送制度改革でも、森友問題で影の主役として注目されている今井尚哉首相秘書官が先頭に立っているということです。今週の「週刊文春」“今井ペーパー”入手 安倍政権テレビ制圧計画によると、ペーパーの1通は、放送法4条などの規制の撤廃やネット事業者などのテレビ参入促進が書かれ、もう1NHK除く放送は基本的に不要と民放不要論が記されているということで、法案提出時期“今年の臨時国会か来年の通常国会”だということです。

 ついに放送制度の改悪にまで手を付けるとは、どこまで腐敗した政権なのかと呆れますが、野党議員の質問主意書に対して3日、政府は放送法4条撤廃について政府として具体的な検討を行ったことはない」とする答弁書を閣議決定しました。
 急転直下の展開ですが、政府が一旦矛を納めた裏には、放送制度の改悪に軒並み反発したテレビ局新聞の中でも、真っ先に社説取り上げ反対した読売新聞渡辺恒雄主筆が、安倍首相に圧力を掛けたことがあると言われています。
 渡辺氏は読売テレビを傘下に抱えているので当然と言えば当然ですが、素早い動きと安倍首相を抑え込んだ力量は見事です。

 この問題はすでに「規制改革推進会議」(大田弘子議長・答申は6月頃)に掛けられているので最終決着というわけではありませんが、反映されるのは確実でしょう。
 LITERAの記事を紹介します。
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放送法撤廃の首謀者は森友のキーマン・今井尚哉首相秘書官だった!
一方、安倍首相とナベツネの間では裏取引か
LITERA 2018年4月5日
 安倍政権が今後打ち出そうとしている、政治的公平を義務づける放送法4条など放送規制の撤廃を含む放送制度改革。既報の通り、これによって安倍首相はテレビを『ニュース女子』をはじめとするフェイク&安倍政権応援番組で氾濫させようとしていることは一目瞭然だ。

 そして、この放送規制改革も「あの男」が主導していた。その人物とは、「影の総理大臣」とも呼ばれる安倍首相の懐刀・今井尚哉首相秘書官だ。

 今井首相秘書官といえば、目下、森友文書改ざんの“主犯”と見られており、安倍首相が昨年2月17日に「私や妻が関係していたら総理も国会議員も辞める」と国会答弁したことを端緒に、佐川宣寿・財務省前理財局長らに改ざんを指示するなどの工作を指揮した疑いがもたれている。しかも、文書改ざんだけではなく、問題の核心である8億円の値引きがおこなわれた土地取引にも関与していたのではないかと元官僚らが指摘。昭恵夫人や迫田英典・元理財局長、谷査恵子氏と並んで証人喚問をおこなうべきだという声が高まっている。

 そんな今井首相秘書官が、やはり放送制度改革案も先頭に立って進めている。──昨日発売の「週刊文春」(文藝春秋)も「“今井ペーパー”入手 安倍政権「テレビ制圧計画」」と題した記事で、そのことを指摘している。
 同誌によると、官邸が作成した内部文書は2通。1通目は、すでに報じられているように放送法4条などの放送に対する規制の撤廃やネット事業者などのテレビ参入促進について言及。さらにもう一通にはなんと、〈放送(NHK除く)は基本的に不要に〉と既存の民放不要論までが書かれており、法案提出時期も“今年の臨時国会か来年の通常国会”と区切られていたという。

 そして、「週刊文春」はこの計画案を主導しているのが今井首相秘書官であり、内部文書を書いたのは事務担当の佐伯耕三首相秘書官と名指ししているのだ。今井首相秘書官は、放送を所管する総務省の野田聖子大臣などから上がっている批判に対しても、「テレビに政治的中立なんてないだろ」と一蹴したという。

“放送利権の守護神”ナベツネが「日テレがテレ朝みたいになっていいのか」
 今井首相秘書官といえば、第二次安倍政権以降、菅義偉官房長官とともにマスコミへの謀略リークを次々と仕掛けてきた人物。いま、安倍応援団が仕切りに取り上げる「森友文書に出てくる『本件の特殊性』は同和絡みの土地という意味」という差別デマも、本サイトで取り上げたように、今井秘書官が発信源だったという情報が流れている。このような卑劣なメディア操作を行っている人物が、本格的にテレビを安倍プロパガンダの装置に仕立てようとしている首謀者だったのだ。

 そして、“今井秘書官の操り人形”とも言われる安倍首相も、この計画に丸乗り。朝日新聞が改ざんのスクープを報じた3月2日と同じ日の夜、安倍首相は『BSフジLIVE プライムニュース』(BSフジ)の放送10周年を祝う集いに出席し、「電波、通信の大改革を行いたい。大競争時代に入り、ネットや地上波が競合していく」と挨拶。祝辞のなかで、わざわざ電波改革に言及したのである。

 だが、そんな安倍首相=今井首相秘書官のもくろみに立ちはだかった人物がいる。それは安倍応援団の最重鎮である渡邉恒雄・読売新聞グループ本社代表取締役主筆だ。新聞や放送業界の既得権益の守護神でもあるナベツネは今回の放送規制改革第一報を聞いて激怒したという。

「ナベツネさんの怒りが決定的になったのは、3月9日。この日、安倍首相と日本テレビの大久保好男社長、粕谷賢之報道解説委員長と会食したのですが、二人はナベツネさんの意を受けて、放送改革の問題を首相に質したらしい。すると、安倍首相ははっきり放送法4条の撤廃に言及したらしいのです」(大手紙政治部記者)
 3月9日といえば、森友文書の改ざんにかかわった近畿理財局の職員が自殺していたことが大々的に報じられ、佐川国税庁長官が辞任したのと同じ日。会食は日テレが所有する東芝の迎賓館施設だった「高輪館」でおこなわれており、「首相をお招きする」という日テレのメディア倫理なき姿勢は批判に値するが、この場で4条撤廃をもち出した安倍首相の意図が森友報道の牽制にあったことはあきらかだろう。
 しかし、その報告を受けたナベツネの怒りはさらにエスカレート。会議の席上で「首相がその気なら全面対決だ」と吠えたとも伝えられている(現代ビジネス4月3日付)。

 そして、3月16日に放送事業見直し方針が明らかになると、読売新聞は翌日の朝刊1面で〈放送の質・信頼性や放送局の社会的役割の低下につながるおそれ〉と報道。2面ではさらに踏み込み、〈背景には、首相に対する批判的な報道への不満があるようだ〉〈首相は衆院選直前の昨年10月、Abema TV1時間にわたり自説を述べた経緯もある。政治的中立性の縛りを外せば、特定の党派色をむき出しにした番組が放送されかねない〉などと安倍首相を批判する論調で問題を取り上げている。
 自民党という“特定の党派色”むき出しで報道を続けている読売新聞がよく言うよ、という感じだが、この読売の紙面とは思えない論調の報道はもちろん、ナベツネの指示によるものだろう。

ナベツネ・安倍の間で「放送法改革撤回と政権批判自粛」の裏取引か
 しかも、ナベツネは紙面だけでなく、安倍首相にも直接、働きかけをしたようだ。安倍首相は3月30日にナベツネの招待で読売ジャイアンツ対阪神タイガース戦を東京ドームで観戦したが、その際に、ナベツネが安倍首相に直談判したのではないかとみられている。「週刊文春」なども報じていたが、ナベツネは「日テレがテレ朝みたいになっていいのか」と恫喝した上、「本当に放送法4条を撤廃すると言ったのか」と迫ったところ、安倍首相は「言ってませんよ」と答えたと言われている。

 ナベツネと安倍首相はこの3日後、4月2日に福山正喜・共同通信社社長や熊坂隆光・産経新聞社会長、芹川洋一・日本経済新聞社論説フェロー、北村正任・毎日新聞社名誉顧問らといっしょに再び会食をおこなっているが、この席は非常に和やかなもので、一切放送法の話題が出なかったようだ。
 こうした変化から推測するに、安倍首相はおそらく、ナベツネの圧力に屈して、現時点では放送法の撤廃を引っ込めたということだろう。
 実際、安倍首相とナベツネの東京ドーム観戦の頃から官邸の空気も一変し、政府は3日に「(放送法4条の)『削除』については、政府として具体的な検討を行っているものではない」とする答弁書を閣議決定した

 しかし、だからといって、これで万々歳ということではまったくない。というのも、ナベツネは『ニュース女子』のような政権擁護ヘイト番組の放送を阻止しようとしたわけでなく、たんに放送局の既得権益を守ることが目的にすぎないからだ。「週刊文春」ほかの情報どおり、ナベツネが「日テレがテレ朝みたいになっていいのか」と言ったのが事実なら、これは逆に「テレビに政権批判させないから、放送法撤廃を引っ込めろ」という裏取引だった可能性もある。
 しかも、ナベツネの新聞、テレビ業界への影響力を考えると、これは読売グループの日本テレビだけの話では済まないだろう。消費増税の際の軽減税率を新聞に適用してもらうために、新聞業界全体がナベツネにすがり、その結果、消費税報道で完全に歩調をそろえてしまったということがあったが、同じようなことが今度は放送業界で起きるのではないか。

 そう考えると気になるのが、安倍首相がすでに白旗を上げているとしか思えないこの状況で、NHKや民放幹部が改めて「放送法4条、政治的中立は絶対に必要」と声を上げていることだ。もしかして、これはナベツネが主導した政権批判と放送法改革撤回の裏取引のあらわれなのではないか。
 本来の放送法4条は政権批判を禁じる目的ではまったくないが、官邸や自民党、そして各局の上層部はこれから、「放送法を守るためにも政権批判を控えろ」という圧力をどんどん強めていくつもりではないのか。
 しかし、もしそんな事態が起きてしまったら、それは結局、安倍首相=今井秘書官の「政権批判を封殺するために放送法4条撤廃をもち出す」という目的がまんまと達成されたことになってしまう。杞憂であること祈りたいものだが……。(編集部)