安倍首相の外国歴訪は12年に就任以来既に60回を超え、相手国の数も100カ国近くとなりました。この間莫大な金を各国にバラ撒きもしました。これ程外遊に精を出した首相はかつていませんでした。それで安倍応援団は安倍氏のことを「外交の安倍」と呼んでいるようなのですが、いくらなんでもそれは違うでしょう。外交こそは、本来人格と教養がベースにあるべきものだからです。
このところ安倍首相は、頼みのトランプ大統領から関税制裁を掛けられるなど敵視されているだけでなく、南北首脳会議、米朝首脳会議合意、中朝首脳会議と、日本の周りでビッグニュースが駆け巡りましたが、米国に倣ったつもりで的外れなことを主張してきた安倍首相はいつも「蚊帳の外」に置かれ、中・朝・米で発表されてから慌てて情報を収集するという体たらくです。
それに加えて、金正恩氏が朝鮮労働党の幹部に「日朝首脳会談は、米朝首脳会談の後、6月初めにも平壌で開かれるのではないか」、「日本と国交を正常化すれば2兆円余ないし5兆円の支援が受けられる」と語ったことも伝えられました。安倍官邸が国民に成果としてアピールするために、「マル秘事項」にしておきたかったネタがバラされたわけです。
要するに日本は北朝鮮からも完全に足元を見られているのであり、日朝会談の主導権も先方に握られているわけです。もしも拉致被害者に関してみるべき成果がなかったとしたら、安倍首相はどうするのでしょうか。「無為徒食のツケ」では済まされません。
日刊ゲンダイは、安倍官邸が、このところの内閣支持率の低下は 4月以降「外交の安倍」をアピールすれば回復できると考えているのは笑止だとして、「安倍外交の5年間で日本は国際社会の落ちこぼれに」なったと述べています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
外交で失地回復という笑止千万 亡国首相の八方ふさがり
ニクソン・ショック以上の大失態
日刊ゲンダイ 2018 年 3 月 30 日
(阿修羅 文字起こしより 転載)
周到に用意された台本があったかのような佐川宣寿前理財局長の証人喚問を乗り切り、自民党からは安堵の声が聞こえてくる。
二階幹事長は「政治家の関与がなかったことが明白になった」と言い、森山国対委員長も「多くの疑念が解消された」と強弁。幕引きムードをけしかける。官邸筋によれば、証人喚問のあった夜、安倍首相はゴキゲンで「総裁3選」に意欲を見せていたという。
「うまくいった、もう大丈夫だ。秋の3選を阻むものはなくなったと考えているようでした。新年度予算が成立し、予算委員会で連日、追及されることもなくなる。4月以降は日米首脳会談を皮切りに、日中韓首脳会談、日ロ首脳会談と外交日程が目白押しです。日朝首脳会談が実現する可能性もあり、“外交の安倍”をアピールすれば、森友問題も忘れ去られる。下落基調の支持率も2カ月程度で回復すると見ていたのです」(官邸関係者)
そんな矢先に飛び込んできたのが、北朝鮮の金正恩委員長が中国を訪問し、26日に北京で習近平国家主席と電撃会談したというニュースだ。両国の国営メディアが28日に報じた。寝耳に水の日本政府は、情報収集に大わらわ。報道ベースの情報しかなく、安倍も予算委で「重大な関心を持って情報収集、分析に努めている。中国側からしっかり説明を受けたい」と、何も知らされていなかったことを認めていた。
元外務省国際情報局長の孫崎享氏が言う。
「ホワイトハウスのサンダース報道官は、中国政府から正恩氏の訪中について27日に説明があったと言っている。韓国政府も『中国から事前に相談があった』と言う。日本だけがカヤの外にされていた。これは衝撃的なことです。外交的大失態、あるいは敗北と言ってもいい。通常、この手の話は、外交がきちんと機能していれば、韓国側から何らかの情報が入ってくる。安倍政権が米国だけを見て追従し、中国や韓国を敵視して、隣国との関係を築いてこなかったツケ以外の何物でもありません」
■北のカリアゲにもコケにされる
このタイミングで金正恩が中国を訪問したのは、5月にも行われる史上初の米朝首脳会談という一大イベントを前に、国際環境を整えておく狙いがあることは明らかだ。
米国のトランプ大統領は28日、「金正恩は私との会談を楽しみにしている」とツイッターで明かし、自分も会談を「楽しみにしている」と書き込んだ。
29日は韓国と北朝鮮が閣僚級会談を開き、4月27日に板門店で首脳会談を開催することで合意。11年ぶりの首脳会談である。
北朝鮮と米中韓の対話機運が加速する中、日本だけが置き去りにされている。これは、日本の頭越しに米中が接近した1972年のニクソン・ショックを上回る衝撃だ。足元の東アジアで、日本政府だけが孤立しているという異常事態。安倍が政権浮揚の頼みにしていた日米首脳会談も、4月上旬から4月18日に延期されてしまった。
また、29日の朝日新聞によると、金正恩政権は労働党幹部に「日朝首脳会談は、米朝首脳会談の後、6月初めにも平壌で開かれることがあり得る」と説明しているという。日本と国交を正常化すれば、200億ドル(約2兆1000億円)の支援を受けることができるという期待の声もあるという。完全に足元を見られているのだ。日朝でも、向こうに主導権を握られている。
北のカリアゲにコケにされ、トランプにはハシゴを外されて、茫然自失の日本政府。何が「外交の安倍」だ。この惨状で、外交で失地回復なんて、ヘソが茶を沸かすというものだ。
安倍外交の5年間で日本は国際社会の落ちこぼれに
「トランプ大統領が日本側の要望をはねつけて鉄鋼の関税適用を決めたことも、安倍政権にはショックだったはずです。ヨーロッパや、カナダなどの近隣国、韓国は適用除外になったのに、輸入比率の低い日本と中国を関税対象にした。極めて政治的なメッセージで、日本にとってはニクソン・ショック以上の衝撃です。トランプ大統領と個人的な関係を築き、日米同盟の絆は過去最強という触れ込みもデタラメだったということです。米国から突き放されたら、安倍外交の5年間で残ったものは、日本が国際社会で落ちこぼれ、孤立してしまったという事実しかない。そもそも、個人の利益のために公文書を改ざんするような国は近代国家とは言えず、国際社会でまともに相手にしてもらえるはずがない。こうなると、安倍首相の存在が国益を損ねていると言っても過言ではありません」(孫崎享氏=前出)
安倍支持者の中には、「森友は司法に委ねて、国会では外交問題や政策を議論しろ」と言うヤカラもいる。自民党もそういう声を利用して、森友疑惑の収束をはかろうとしている。
だが、公文書の改ざんは、誰が主犯かを突き止めて終わる問題ではない。文書主義は近代民主主義国家の根幹だ。公文書改ざんは、歴史を改ざんすることと同義なのである。
「公文書の信頼が揺らげば、国会審議も成り立ちません。政府が都合のいい資料ばかり出してくることを疑うことから始めなければならない。諸外国からは、外交文書だって改ざんされる可能性がある信用ならない国だと思われる。外交どころの話ではないし、今回の森友文書改ざん問題で、国の信頼が失われたのです。行政府にウソの文書を出された立法府は、与野党とも怒り狂うのが普通だし、民主主義と三権分立を取り戻すために、国会は徹底してこの問題の真相を解明しなくてはなりません。司法ではなく、立法府の仕事です」(政治評論家・本澤二郎氏)
■「もう日本の民主主義は終わり」
仏フィガロ紙の東京特派員、レジス・アルノー氏が東洋経済オンラインでこう指摘していた。
<改ざんにかかわった官僚の自殺、といった由々しき事態が起これば、その時点で国を率いている政権が崩壊することは避けられない>
<「今の政府がこの事件を乗り切ることができたとしたら、もう日本の民主主義は終わりだね」と、日本に住むベテラン外国人ロビイストは嘆く。そして政府は実際に乗り切るかもしれないのだ>
<日本の状況は、2016年と2017年のデモによって昨年朴槿恵政権を倒すことに成功した韓国とはひどく対照的だ。北東アジアの外国通信特派員はみな、韓国の民主主義が、いかに活気があるか、そして日本の民主主義がいかに意気地なしになっていたかに気がついた>
「安倍政権がやっている国家の私物化は、民衆によって倒された朴槿恵政権と何ら変わりません。森友だけでなく、加計問題やスパコン疑惑もある。霞が関の官僚も恐怖政治で締め付け、官邸のために働く組織につくり変えてしまった。だから、圧力にしろ忖度にしろ、公文書改ざんなどというあり得ないことが起きるのです。防衛省の日報問題も、厚労省のデータ捏造も構図は同じです。年金支給ミスも、国民の安心より経済合理性を重視する新自由主義の弊害でしょう。強者をますます富ませるだけのアベノミクスで国民生活と日本経済をメチャクチャにし、外交でも失敗続きの亡国首相が、なぜエラソーに居座っているのか。冷静にこの政権の5年間の悪事、醜聞を考えたら、何度総辞職していてもおかしくないほどです」(本澤二郎氏=前出)
これほどの破廉恥政権が、茶番の証人喚問ショーで疑惑を封じ込んだ気になり、批判封じに精を出しているのは、国民をナメている証拠だ。こうなったら、誰の目にも明らかな退場宣告を突きつけるしかない。さらなる支持率下落である。
日本国民は、近代民主主義国家の根幹を守れるかの瀬戸際に立たされていることを忘れてはならない。