シリアの政府軍が東グータ地区で「化学兵器攻撃」を使用したとする米国の主張には何の根拠もありませんが、報復と称して英・仏ととも105基のミサイル攻撃を断行しました。それはOPCW(化学兵器禁止機関)が現地で調査活動を始める直前でした。
13日の東京新聞によれば、シリア反体制派の人権団体幹部は、匿名を条件に共同通信の電話取材に応じ、東グータ地区での「化学兵器攻撃」は、「アサド政権に抵抗する反体制派への支持を結集するため、でっち上げられた」として、政権側が使用したとの見方に強い疑念を表明しました。
「世に倦む日々」氏はこれを取り上げて、ベトナム戦争のトンキン湾事件がそうであったように、侵略攻撃する大国は必ずウソをつき、口実となる「事実」をでっちあげるもので、今回の米英仏のシリア攻撃も、理性を持つ者なら、ウソの口実がでっあげられている可能性を疑うべきなのだと述べています。(このブログは長文のため、一部を紹介します。詳細は記載のURLから原記事にアクセスしてご覧ください)
元米財務次官補で著名なコラムニストのPaul Craig Roberts氏は、米政府はミサイル攻撃で、塩素ガスとサリンが保管/製造されている化学兵器施設を破壊したと述べているが、そうであればそこから致死性のガスが大量に放出されるので、ドゥーマに対するシリア化学兵器攻撃攻撃とされるものより遥かに多くの命を奪っている筈なのに、そんなことは何も起きていないと述べて、「なぜ見え透いたウソを米国民に吐くのか」と批判しました。
「櫻井ジャーナル」は、英国のインディペンデント紙が、同紙の特派員が毒ガス攻撃があったとされる地域へ入って医師らを取材したところ、患者は毒ガスではなく粉塵による呼吸困難が原因で担ぎ込まれたという説明を受け、その治療の最中に「白いヘルメット」のメンバーが「ガスだ」と叫んだことからパニックが始まったと伝えたことを明らかにしました。
西側では「白いヘルメット」を平和の部隊であるかのように報じますが、「白いヘルメット」がアル・カイダ系武装集団と一心同体の関係にあることを同ブログは再三再四、指摘しています。
シリアでの「毒ガス事件」に関する日本の報道が、CIAのプロパガンダに沿ったものであるのはいうまでもありません。
(関係記事)
(4月15日)OPCWのチームが調査を始める直前に米英仏はシリアをミサイル攻撃
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シリアの「化学兵器」とイラクの「大量破壊兵器」は同じだ - 四つの動機
世に倦む日々 2018年4月16日
東京新聞が、化学兵器はでっちあげだとするシリアの反体制派の主張を記事にしている。いわば内部告発だ。共同通信が匿名で取材した情報で、タイムスタンプは英米仏の軍事攻撃の直前の13日17時33分。非常に興味深い。テレビで何度も被害の映像が流されるところの、7日に東グータ地区で起きた化学兵器使用の疑惑について、シリア政府とロシアは事実無根だと全面否定している。日本のマスコミの論調は、一部を除いてアサド政権の仕業とする見方に傾いていて、しばき隊などもアサド政権の犯行だと頭から決めつけているが、それは公平な認識とは言えない。事件について、米国も英国もアサド政権が行ったと断定しながら、その証拠を未だ示していない。軍事攻撃に踏み切った確証を正しく説明していない。証拠を握っていると口で言いながら、それを明らかにしていない。われわれがまず想起しないといけないのは、15年前のイラク戦争の真実と教訓だろう。開戦の口実として喧伝された「大量破壊兵器」は、英国の情報機関によって捏造されたウソだった。真っ赤なウソを根拠に米軍はバグダッドを空爆し、多国籍軍がイラクに侵攻した。
(中 略)
戦争を始めるとき、侵略攻撃する大国は必ずウソをつき、口実となる「事実」をでっちあげる。北爆を正当化するベトナム戦争のトンキン湾事件がそうであり、それはペンタゴンペーパーとなり、現在、シネコンで映画が公開されている。今回の米英仏のシリア攻撃も、理性を持つ者なら、ウソの口実がでっあげられている可能性を疑うべきなのだ。重要な事実は、OPCW(化学兵器禁止機関)が14日から現地で活動を始める予定になっていたことである。10日にシリアとロシア政府の要請を受け、12日に調査団の現地派遣を発表していた。
(中 略)
なぜ、米英仏は中立の機関であるOPCWの調査を嫌ったのだろう。ここがよく分からない点で、事件の謎解きの重要なポイントだと思われるが、朝日も含めて日本の報道は詳細を吟味検討しない。
14日にOPCWがシリア現地に入り、調査をしようとした矢先、トランプは軍事攻撃を決断して実行した。
(中 略)
普通に考えれば、OPCWの調査が入ると米英仏の具合が悪いから、アサド政権のシロが立証されるから、証拠が残らないよう、OPCWの調査を無意味化するべく、施設を破壊したと推測するべきだろう。怪しむべきだろう。それが、この問題に対する客観的で合理的な思考態度というものだ。(後 略)
全文は現記事にアクセスしてお読みください。
なぜ連中は見え透いたウソを、アメリカ国民につくのだろう?
マスコミに載らない海外記事 2018年4月18日
Paul Craig Roberts 2018年4月15日
アメリカ当局者と、売女マスコミは、シリアに対する違法なアメリカ・ミサイル攻撃で、塩素ガスとサリンが保管/製造されている化学兵器施設を破壊したと言っている。もしそれが本当なら、致死的な雲が放出されて、ドゥーマに対するシリア化学兵器攻撃攻撃とされるものより遥かに多くの命を奪っているはずではないか? アメリカ・ミサイル攻撃は、化学兵器による攻撃と同等で、それゆえ、アメリカと、その属国は、ワシントンが、アサドとプーチンに当てはめたがっている全く同じ範疇にあてはまるのではあるまいか?
化学兵器専門家諸氏よ、こればどういうことだ? 化学兵器は、意図して使用された場合にのみ成分を放出するが、軍事的に攻撃された場合は、爆発しないのだろうか?
シリアでは、アメリカ・ミサイルによって破壊されたことになっている化学兵器施設からの化学物質残滓の証拠は皆無だ。犠牲となった死者はいない。アメリカによる化学兵器施設攻撃によるシリア人死傷者を治療している病院の報道も皆無だ。もしそのような施設が実際に攻撃されていたら、どうしてそのようなことがあり得よう?
私がウオール・ストリート・ジャーナル編集者だった頃には、新聞社には有能なジャーナリストたちがおり そのような疑問を思いついていたはずなのだ。だが、もはやそうではない。スティーブン・レンドマンは、ニューヨーク・タイムズのプロ意識欠如を追求している。NYタイムズは、もはやニュースの情報源ではない。プロパガンダ拡声器だ。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリプス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼 の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
ドゥーマを取材した英有力紙の特派員は毒ガスでなく
粉塵による呼吸困難で患者は運び込まれたと報告
櫻井ジャーナル 2018年4月18日
ドゥーマで政府軍が化学兵器を使ったと主張している人々にとって不都合な記事がイギリスのインディペンデント紙に掲載された。同紙のロバート・フィスク特派員が攻撃があったとされる地域へ入って医師らを取材、患者は毒ガスではなく粉塵による呼吸困難が原因で担ぎ込まれたという説明 を受けている。毒ガス攻撃があったことを示す痕跡はないという。
そうした患者を治療している最中、「白いヘルメット」のメンバーが「ガスだ」と叫んだことからパニックが始まったというが、ドゥーマで政府軍が化学兵器を使って住民70名以上を殺したと宣伝しているのはその「白いヘルメット」とアル・カイダ系武装集団のジャイシュ・アル・イスラム。「白いヘルメット」がアル・カイダ系武装集団と一心同体の関係にあることを本ブログでも再三再四、指摘してきた。
ジャイシュ・アル・イスラムはCIAの影響下にあり、同じアル・カイダ系のアル・ヌスラと連携(タグの違い)、イギリスの特殊部隊SASやフランスの情報機関DGSEのメンバーが指揮していると報告されている。MSF(国境なき医師団)が隠れ蓑として使われてきたとも言われている。
カネと人を抱えている西側の有力メディアに実態を調べる能力があることはフィスクの取材でも明らか。つまり、ほかの西側メディアは取材せずアル・カイダ系集団の宣伝をそのまま垂れ流してきたわけだ。西側の政府も同じこと。ドゥーマで化学兵器が使われたという話が嘘だということは西側の政府も有力メディアも知っていたのだろう。
メディアであろうと学者であろうと、体制の中でそれなりの地位と収入を確保して安穏な生活を送ろうとすれば、言動は体制が定めた枠組みの中に留めることは必要だ。その枠組みの中で「左翼キャラ」や「右翼キャラ」を演じていれば波風は立たない。そうした中から「戦争は良くないが、化学兵器を使うのも良くない」というような発言も出てくる。化学兵器話が嘘だと口にしたり書いたりすることは枠組みからはみ出す行為なのだろう。
アメリカやイギリスはロシアがロンドンで化学兵器を使ったと証拠を示すことなく主張している。そのターゲットだとされているのはGRU(ロシア軍の情報機関)の元大佐であるセルゲイ・スクリパリとその娘のユリア。ふたりは3月4日にソールズベリーで倒れているところを発見されたとされている。
セルゲイはスペインに赴任中の1995年にイギリスの情報機関MI6に雇われ、99年に退役するまでイギリスのスパイとして働いていた。そうした事実が退役後に発覚して2004年12月に逮捕され、06年には懲役13年が言い渡されているが、10年7月にスパイ交換で釈放された。それ以来、ソールズベリーで生活している。本名を名乗ってきた。娘のユリアは2014年にロシアへ戻っている。
ユリアは4月9日に退院、当局の「保護下」にあるというが、本人の口からの説明はなく、どういう状況にあるのかは不明。ロシアに住むユリアの従姉妹ビクトリアはふたりを心配してイギリスへ行こうとしたが、ビザが下りなかった。ユリアが自分の意思で身を隠しているのかどうかも不明だ。
イギリス政府はセルゲイとユリアに対して「ノビチョク(初心者)」という有毒物質が使われたと断定したが、元ウズベキスタン駐在イギリス大使のクレイグ・マリーによると、イギリス軍の化学兵器研究機関であるポート・ダウンの科学者は使われた神経ガスがロシアで製造されたものだと特定できなかったと語っている。後にこの情報の正しさが確認されている。
ノビチョクとは1971年から93年にかけてソ連/ロシアで開発されていた神経物質の総称で、ロシアでこの名称が使われることはないと指摘する人もいる。イギリス政府がこの名称を使った理由はロシアとの関係を強調したいからだった可能性が高い。使われた化学物質はA-234という神経物質だとも言われているが、旧ソ連では2017年までにこうした物質や製造設備は処分された。それに対し、スイスの研究所は無力化ガスの3-キヌクリジニルベンジラート(BZ)が使われたと報告している。この分析が正しければ、ユリアの回復を説明しやすい。
シリアの話にしろイギリスの話にしろ、アメリカ、イギリス、フランスは証拠を示すことなく化学兵器話を口実にして全面核戦争を招きかねない行動に出ている。勿論、化学兵器は原因でなく、ロシアを核戦争で脅すことが目的なのだろう。